転生特典は失効しました~そのとき、王太后になにが起こったか
何事もタイミングというものがあります
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王太后殿下が亡くなられました。
誰からも愛される方でした。
わたしは専属メイドとして目を掛けていただき、言葉では言い表せないほどお世話になりました。感謝してもしきれません。
わたしは王宮務めとは言え、実家はしがない男爵家。本来なら王太后殿下の側仕えになれるような身分ではありません。
王太后殿下の特別のお声掛かりでメイドとしてお側に仕えることを許されました。
王太后殿下もわたしと同じ男爵家出身ということで親しみを覚えていただけたのでしょう。
そう、王太后殿下も本来なら王妃となれる身分ではいらっしゃいませんでした。
先王陛下と王太后殿下は学生時代、陛下がまだ王太子であられた頃に出会われました。
学園で先王陛下に見初められての異例の婚姻は当時大層話題になったそうです。
当然、周囲の方々は反対なされました。
王太子と言えば次期国王。
王の配偶者には家格も品格も、そして教養も求められます。
一国の舵取りをする国王陛下の隣に立ち、時にはその代理も務める。どこの誰かも分からぬ方に務まるものではありません。
歴史の浅い男爵家の娘では国王陛下の後ろ盾にもなりえません。
それまでの王室の常識から言えば、男爵令嬢と王太子との婚姻は到底認められるものではありませんでした。
それがどうして許されたのかについてはわたしのような者には分かりません。
噂はいくつかあります。
王太子との深い愛情に国王陛下が心打たれた。希少な癒しの魔法を使えたのでその才覚によって特例を認めた。当時複数の上位貴族の子息が男爵令嬢に懸想し、奪い合いの争いが起きかねなかったため、最も地位の高い王太子の妻とすることで貴族たちが割れることを防いだ。
どれが本当かは分かりません。
先王陛下が王太后殿下を深く愛されていたことは周知の事実です。玉座を引かれた後も仲睦まじく過ごされておいででした。
王太后殿下が癒やしの魔法の才能をお持ちだったことも確かです。
お年を召されてからは使えなくなったそうですが、王妃であられた頃はその魔法で多くの国民を癒やしていたそうです。奉仕活動として定期的に無料で身分関係なく治療を施されていたのを覚えている者もいます。
また、学生時代に複数の有力貴族子息たちから想いを寄せられたのも確かなようです。
先年亡くなられた先の宰相閣下、今は隠居されている先代騎士団長、先々代科学院長官、先代公爵たちが生涯未婚で通したのは王太后殿下への想いを捨て切れなかったからとの噂です。
上位の貴族でありながら生涯未婚というのはとても珍しいことです。各家とも養子をとって問題なく存続していますが、普通ならそれはどうしても子供に恵まれなかったときの措置です。
健康上なんの問題もないのならば、妻を娶り、後継を育てるのは貴族の義務だというのに、彼らは婚姻すらしなかったのですから、噂は真実だったのでしょう。
王太后殿下は聡明で誰からも愛され、博識で、奇抜な発想で国の発展に大いに貢献されました。
多くの国民がその訃報に涙したのは、心から王太后殿下の死を悼んだからです。
王太后殿下の葬儀には王都中の人々が集まりました。
敬愛すべきお方の死は、本当に哀しいことです。
1つだけ。
ただ1つだけ解せないのは、臨終間際の殿下のお言葉です。
亡くなる直前、それまで半ば眠り、魘されておいでだった王太后殿下は突如眼を見開かれ、
「ああ、どうして、どうして今になって……。
何故、王太子ルートなの?!
私の推しはリアム様だったのに」
そう叫ばれると、苦悶の表情を浮かべられて息を引き取られました。
聡明で穏やかなだった生前の王太后殿下からは考えられないほどに、酷い叫び声で、恐ろしい死に顔でした。
死を前にされて恐ろしい幻覚でも見られたのでは、という話ですが、一体どんな幻覚を見ればあのようなお顔になるというのでしょうか。
それに、リアム様、先代騎士団長の名を口にされたことで様々な憶測が飛び交うことになりました。
先王陛下は最愛の奥様を亡くされた哀しみとは別の意味合いで暗いお顔となり、あれ以来一言も発されないとか。
ただ、先代騎士団長に長い手紙を書かれていたそうです。その手紙には決闘に関する文言があったという話です。
故王太后殿下の喪が明けたなら、きっと恐ろしいことが起こるでしょう。
それを思うと、わたしは夜も眠れぬ想いです。
死の間際になって、思い出さなくていいこと思い出しちゃったんでしょうね
「前世」とか




