幕間 『処理機関――演算命令を燃やす新たな動力』 処理機関概要より抜粋
本作は『電界駆動 ブレード ― データの少女は仮想世界で夢を見るか?』を一部固有名詞の変更と話数の並びを変更、改訂を行なったものです。
少しでも読みやすくなってれば幸いです。
「人は肉体に縛られている。それならば、新しい身体を手に入れればいい」
―― ビリー・オズニアック
コード・ベースは仮想現実ににおいて、生み出された独自の動力源である。
仮想現実世界の空間処理への干渉を実現するコード・ベースを内包するコード・ユニットはまさにインター・ヴァーチュアに最適化された動力機関であり、いずれもビリー・オズニアックによって発明された。
現在では、Cognitive Processing Reactor、一般的には処理機関と呼ばれ広く普及するに至ってる。
オズニアックが処理機関を発明した背景にはコード・フレームワークの開発が大きく関わっている。
むしろ、処理機関とはコード・フレーム開発によって副次的に発明された技術とされる。
オズニアックの手記には、処理機関誕生の理由は仮想現実空間を自由に旅するための稼働・制御を最適化するため、仮装現実独自の動力を目指すことで生じたと残されている。
インター・ヴァーチュアという新たな世界。
これを観測し、踏破するためには、最適化された新しい身体が必要という思想をオズニアックは打ち出した。
その思想から生み出したその技術こそ身体拡張プログラム、仮想現実の人型ロボットであるコード・フレームワークだ。
しかし、なぜオズニアックはコード・フレームワークを人型ロボットにしたのか?
技術的な理由もあるとされるが、それ以上に、オズニアックの趣味というのが通説だ。
オズは、幼少期からロボットという存在に異様なまでの憧れを持っていたとされる。
「機械の身体を持つことが、人類の進化の形なのではないか?」
この言葉はオズニアックの講演で多く登場するフレーズである。
オズニアックは仮想世界において、人々が最も快適に自己を認識し、制御するためには人間の形をしていることが必要だと考えていたと説明している。
一方で、オズニアックはただ単純に現実世界では不可能な、人の形をして自由に空間を飛び、動く存在の実現を夢みたという説も存在する。
ちなみに、筆者は後者の説を支持している。
確かなことはオズニアックが、コード・フレームワークを自由な身体として設計した。
そして、その根底には、「人間が最も本能的に理解しやすい動作環境を作る」 という目的があったようだ。
さらに、コード・フレームワークを発明した直後に、長距離を移動する手段としての発明をオズニアックは行ってる。
デジタル空間船である。
彼のもう一つの創造物、デジタル空間船もコード・フレームワークに似たオズニアックの哲学的な思想が随所に取り込まれ、現時点でも踏襲されている。
コード・フレームワークが「デジタルの身体」ならば、デジタル空間船は仮想世界の移動拠点として開発された。
その名前の語源はかつて飛行機普及前、大陸間移動の手段となった大洋航路船であり、豪華客船であったオーシャンライナーから取られている。
現在でもテラバイト級以上の大型艦がオーシャンライナーと呼称されるのはそのためだ。
このように処理機関を用いた乗り物は、ビリー・オズニアックという天才が残した記録からも発明者本人の思想や遊び心にあふれたものであることが窺える。
しかしながら、この技術が兵器としての側面を持ち、黎明期の企業列強間による開拓と軍拡の主力として先鋭化し、ブラックアアウト事件ではその兵器としての優秀性を証明した。
特にコード・フレームワークは身体拡張プログラムではなく、人型戦闘兵器として認知されるに至っている。
そして現在では、そのような兵器―― つまりはジェット戦闘機がかつての米国での銃器のように民間に流通しているという状況であることは説明するまでもない。
だが、その需要と普及が処理機関分野における多様化と発展に繋がっていることもまた事実である。
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『処理機関――演算命令を燃やす新たな動力』 処理機関概要より抜粋。
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