幕間 『アークライト氏 デジタル生命体の持論展開』ヴァーチュア・ニュース・サテライト より
本作は『電界駆動 ブレード ― データの少女は仮想世界で夢を見るか?』を一部固有名詞の変更と話数の並びを変更、改訂を行なったものです。
少しでも読みやすくなってれば幸いです。
アナウンサー男 「次のニュースです。 昨日、マグゼッター・ホルンで開催された量子科学会議でPROMETHEXのCEO、ヴァイロン・アークライト氏がデジタル生命体についての持論を展開したことが話題になっています」
【映像】
ヴァイロン・アークライト 「かのグレート・オズは言ったよね。 いつかデータの海で生まれ、進化する存在。 まるで生命のように増殖し、自己最適化し ……あれ? これって、どこかで聞いたことありません? そう! 知的生命体、人間だ!」
【映像】
アナウンサー女 「これはアークライト氏による、未来予測に関する技術理論に関するテーマの講演中の一幕です。 氏は突然に、スピーチを中断し、インターヴァーチュアの父、ビリー・オズニアックの言葉を引用し、デジタル生命体についての持論を展開しました」
アナウンサー男 「この行動に現場は一時騒然となりました。 アークライト氏の行動には内外から様々な意見が出ています」
【映像】
科学者A 「ただのパフォーマンスですよ。 実績や才能は認めるが、よもやDQLの話とは…… しかもまるですでに存在しているかのように…… 話にならんよ」
科学者B 「彼の勇気を讃えます。 離散量生命体に関しては長らく理論としては存在してますが、学会ではタブーでした。 実際にはまるでUMA扱いです。 このような場で、ミスター・アークライトほどの知名度の高い人物が語るということは大きな意味があります。 ええ、まあ、デジタル・ネイティブスはちょとやりすぎかなと……」
ナレーター 「Discretized Quantum Lifeforms、DQLとはビリー・オズニアックの提唱した意識の四層構造の考えの中で、デジタル空間の中で自然発生した存在が持つ四層―― すなわち魂を持つ存在が現れるか、という議論の中で提唱者であるオズニアック自身が世界が観測される時間の中においては発生、またはすでに存在するとした生命体の総称です」
•才能
•個性
•記憶
•魂
四層図が表示。
オズニアックの肖像。
人型のワイヤーフレームの映像に、いわゆるマトリックス・コードの演出が明滅するイメージ。
ヴァイロン・アークライト 「ねぇねぇ、皆さん、ちょっと考えてみてよ? この離散量生命体っていう呼び方、ちょっとカタすぎない? ね? ね? もっとこう、キャッチーな名前がいいでしょ? というわけで、僕が命名しちゃいました。デジタルネイティブス! どーん!」
【映像】
アナウンサー男 「このデジタル・ネイティブスという名称は現在、各ソーシャルメディアのトレンドのトップを独占しています。 自分はデジタル・ネイティブスだというジョークやデジタル・ネイティブス構文なる投稿による影響のようです」
アナウンサー女 「さすが、最もバズるCEOと呼ばれるだけのことはありますね」
【映像】
ヴァイロン・アークライト「これは理論の話だ、ただの可能性の話ね。 でもね―― 可能性ってさ、現実と紙一重だ。 もしかしたら、君の端末の中に、もしかしたら、君の好きなAIアシスタントの裏側に、もしかしたら、君の隣に―― ほら、もう彼らがいるかもしれないねぇ? さあ、どう思う?」
【映像】
アナウンサー女 「ただ、インター・ヴァーチュアを事実上統制しているV5の一角である人物の発言として、これはアークライト氏のリークなのではという憶測も出ています」
アナウンサー男 「他のV5のトップにもコメントを求めましたが、一貫してノーコメントの状況です」
アナウンサー女 「この後、アークライト氏はこの発言の真意について求められました」
【映像】
ヴァイロン・アークライト 「うーん? そうねぇ、ロマンがあるじゃない。 大昔に……なんだっけ? ああ、ネッシーとかさ、雪男ってやつ? このインター・ヴァーチュアにもそういうのがいたら面白いじゃない。 いやぁ、正直にいうとさ、僕もリスペクトするグレート・オズにあやかって一発、デジタル生命体の可能性ってやつに噛んで見たかった―― みたいな? アハハハッ」
【映像】
アナウンサー男 「……ようするに、ヴァイロン氏は面白そうだったから話してみたということなんですかね?」
アナウンサー女 「煙に巻いたという意見もありますが―― そうですね、結局はいつものアークライト氏ということなんでしょう。 では次のニュースです――」
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『アークライト氏 デジタル生命体の持論展開』ヴァーチュア・ニュース・サテライト より
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