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令嬢は長男と話す。


紅玉宮までの道のり、会話はない。

わたくしはジョシュアが恐ろしくて顔を見れないし、ジョシュアもわたくしが憎いのか顔を見なかった。

ハルモニアは居心地が悪そうに何度も座りなおしている。


(恨みを少しでも軽くしようと思ったのに、このまま何もしないんじゃ前と何も変わらないわ。)


わたくしはぎゅっと拳を握りしめ、ひきつる喉から無理やり声を出す。


「さ、先ほどは、ありがとうございました・・・。」


そういうとジョシュアは少し目を開いてこちらを見る。

沈黙が落ちる。

ハルモニアはそわそわと上目遣いでこちらの様子をうかがっている。


「あぁ。いえ、兄弟ですから当然のことをしたまでです。」


彼はそういうと口元だけに冷たい笑みを浮かべる。

その表情をみてわたくしは凍り付く。


前回の人生で、後継者争いをしていた最中に何度も見たことがある。

時にはパーティで、時にはハルモニアの身近のものを殺すとき、そしてわたくしを殺したとき。


(また嫌なこと思い出してしまった。)


わたくしは気持ちを紛らわすために馬車の窓から外を見る。


「わたくしたちは、半分とはいえ血がつながっています。これからはどうぞ弟ともども仲良くしましょう。」


わたくしは殺されたくない。ハルモニアがこの男の魔の手に陥ることもあってはならない。

そのために友好的であると歩み寄る姿勢、ハルモニアはあなたと血がつながっているとアピールをした。


そんなわたくしの思惑を感じ取っているのかは定かではないが、ジョシュアはハルモニアにわたくしには向けない優しい笑顔を向ける。


「当然です。キキ公爵家の血を継ぐ者は僕たちしかいない。父上亡き今、お互い助け合って生きていきましょう。」


そうだよね、ハルモニア、と彼はハルモニアの手を取る。


「はい、これから兄さんが成人して公爵となった暁には、姉さんともども支えていきます。」


ハルモニアがそういうとジョシュアは手を放し、満足そうに手を組みうなずく。


(なんだか、わたくしだけ疎外されてるわよね、明らかに。)


二人の間だけ暖かな雰囲気で包まれている。

反対にわたくしとジョシュアの間にはブリザードが吹き荒れている。

温度差で風邪をひいてしまいそうだ。


人生で一番長くて苦しい10分を耐え、紅玉宮に到着した。

出来た優秀な弟ハルモニアがわたくしの手を取り馬車からエスコートする。


ジョシュアはそのまま馬車にのって本邸に変えるのかと思ったが、なぜか馬車を降りてきた。


「ハルモニアの姉上は僕がお部屋までエスコートするよ。だから君は早く休みなさい。」


「え?」


ジョシュアの言葉にわたくしは思わず顔をまじまじと見てしまう。


(一体どういうことなの。この男と二人になるなんて生きた心地がしない!)


わたくしは戸惑うハルモニアに向かって、行かないでと念を込めて小さく首を振る。


「でも、姉さんは俺と同じ宮殿だし俺が送った方が・・・。」


(そう!その意気よハルモニア!)


「リリエンタ嬢には僕から話があるんだ。だから大丈夫。」


「そ、そうですか・・・。」


ジョシュアの否を言わせない笑顔にハルモニアは気圧され、納得するとおやすみなさいと先に紅玉宮に入っていった。

いつの間にか人払いされた紅玉宮の入口でこの男と二人きりになってしまった。

冷や汗が背筋に流れる。


「さて、リリエンタ嬢、行きましょうか。」


ジョシュアはそういうとわたくしの手をとりゆっくり歩を進めた。

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