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令嬢は夕食会に誘われる。


お茶会をしてから、ジュリアスは定期的に紅玉宮を訪れるようになった。

ジュリアスが訪れる際はなるべくハルモニアを自室から出さないようにしていたが、

彼がハルモニアがいないことに興味を抱くような気配はなく、

むしろわたくしと二人でいれることに喜んでいるようであった。


それもこれも、彼が母を殺し、信用できる人がジョシュアとジェラードしかいなかったことに起因しているのか、

特に身内の女性からの愛に飢えているように感じた。


前回の人生でも社交界ではジュリアスが女性と様々な浮名を流していると有名であり、女性からの暖かな愛に飢えているのは確実だ。

しかし、最後はハルモニアの純粋な心、打算も何もない不純物のない愛に触れ、血のつながりのある弟を家族としてではない愛情を抱き付きまとうのだ。


現段階でハルモニアに興味を抱いていなくても、先のことはわからない。

とりあえず、今は興味の矛先をわたくしに向けるのが最適解だと思う。



「姉様、明日の夜は時間ある?」


「あるけれど・・・。何かあったの?」


いつも通り紅玉宮を訪れたジュリアスは、少々緊張した面持ちで問いかけてきた。


「本邸で兄弟全員で夕食をとらないかって兄様が。」


ジュリアスはそういうといつもの通りソファに座っているわたくしの膝に顔をのせると見上げる。


あのジョシュアが兄弟での夕食会を望んでいるの?

にわかには信じがたい。

父と母の葬儀の際もわたくしのことをずっとにらんできていた。

恨んでいるのは間違いないのに。


「兄様とジェラードと仲良く話す姉様はあまり見たくないな・・・。」


彼はそういうとわたくしの腰に手を回しお腹に顔を埋める。

そんな彼の頭をなでるとわからないように息を吐きだした。




夕食会にハルモニアを参加させるか悩む。

ここで逆らい参加しないという選択をとってしまうと反感を買う可能性もある。

しかし下手に参加させ、興味を持ってしまったら・・・。


「参加するしかないわよね。ジョシュアはきっと上座に座るだろうし、ハルモニアはわたくしの影に隠せば。」


あの冷たい目でまた射抜かれると思うと恐ろしいが、ここは腹をくくるしかない。

わたくしとハルモニアが3人から逃げて無事に生き抜くのはきっと夕食会よりもいばらの道だ。

それに、ここでジョシュアからの恨みを軽くするよう印象を変えれば、何か変わるかもしれない。


私が考え込んでいると戸を叩く音がする。


「姉さん、俺、ハルモニアだけど入っていい?」


「ハルモニア!入っていいわよ。」


扉が開かれると、きれいな桃色の髪が現れる。

わたくしのくすんだ中途半端な桃色のようなプラチナブロンドのようなものとは違う。

可愛いハルモニア。

ハルモニアはわたくしの隣に座ると口を開く。


「明日、夕食会があるんでしょ?ジュリアス兄さんに聞いた。」


彼の口から出た言葉に背筋が凍る。

ジュリアスが来ているときはハルモニアは部屋にいるはず。


「・・・ジュリアスと話したの?ジュリアスが来ているときは部屋から出てはいけないといったでしょう。」


「俺は出てないよ!兄さんがいつも俺の部屋に来るんだ。」


この広い紅玉宮で、ジュリアスが訪れるわたくしの部屋とハルモニアの部屋は離れている。

死に戻ってからはハルモニアの部屋をわかりにくい場所に移動させたというのに!

どうして場所がばれているの・・・。


「ジュリアス兄さん、いつも姉さんとお茶した後、俺のところにきて姉さんのことたくさん聞いてくるんだ。何が好きかとかいろいろ。」


ハルモニアはそういうとわたくしの肩をつかむ。


「姉さん、あの兄さんちょっと怖いよ。おかしいよ。姉さん、もうジュリアス兄さんとかかわらない方が良いよ。危険だよ。」


「どうしたの急に・・・。」


ハルモニアの言葉に驚く。

確かにハルモニアにとっては危険で関わらない方が良い相手だ。

しかし、わたくしにとっては命の危険があるだけでどちらかといえば身を守るために味方にした方が良い相手だ。

それに、愛らしい顔と私より背は高いが男性にしては線の細い中性的で子犬のようなジュリアスに絆されている。

彼もわたくしにとって血のつながりのある弟だ。

愛に飢えている弟。

同情しているのもあるけれど。


「姉さん、あの兄さんは姉さんのこと姉さんだと思っているようには思えないよ。目が怖いよ。気を付けて。」


ハルモニアは顔をゆがめわたくしに訴えかける。


「ジュリアスは母を幼い時になくしている、かわいそうな弟なの。今はわたくしのことを母か何かだと勘違いしているだけで、そのうち興味がなくなるわ。」


わたくしはハルモニアの頭をなでる。


「そういうことじゃなくて!・・・ハア、姉さんは本当に鈍感だな。」


そういうと、子ども扱いしないで!と頭にある手を払いのけ、部屋を出ていった。

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