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令嬢は次男とお茶をする。


泣き止んだわたくしとハルモニアは紅玉宮に帰った。

わたくしは自室に戻り、今後の行動をどうするか考える。


「前回の人生では、ジュリアスと葬儀で二人きりで話すことはなかった。そもそも人生で話すこと自体したことはなかったわね。」


人のこと言えないけど、どうしてジュリアスは葬儀を抜け出してガゼボに来たのかしら。

しかもわたくしに話しかけてきて。


色々わからないことは多いが、一つだけわかったことがある。

ハルモニアのためにも、ジュリアスを刺激せず、ある程度かかわりを持った方が良いのかもしれない。

ある程度あの3人について情報を得る必要もある。

3人全員とかかわる必要はないが、一人とかかわるのは良いかもしれない。


「ジュリアスと仲良くなるのが良いかもしれないわ。」


わたくしはジュリアスとの関係構築のためにジュリアスへ茶会の誘いの手紙を書く。


「これを水晶宮まで届けて。」


メイドは私から手紙を受け取ると、宛先に驚いたように目を開くが、それも一瞬で隠し部屋を去った。






「姉様、お招きありがとう。まさか茶会に誘ってくれるなんて思わなかったよ。」


手紙をだして数日後、ジュリアスは紅玉宮を訪れた。

紅玉宮の美しい薔薇園にセットされたイスにジュリアスを案内し、お茶を楽しむ。


「わたくしたち、今まで顔を合わせて話したこともなかったでしょう。少し自由になったことですし、これを期に仲良くなれればと思って。」


「そうだね。」


そういうとジュリアスは笑顔でうなずき、庭園を眺め、真っ赤なバラがそこかしこに咲く庭園に目を細める。


「実はね、姉様は俺たちの顔を見たことなかったかもしれないけど、俺たちは姉様の顔を見たことがあるんだよ。」


ジュリアスの言葉にわたくしは驚き顔を見る。

そんなわたくしにふふっと愛らしい笑みをこぼすと続ける。


「幼いころにね、父様や他の人の暴力から逃げるために3人でこの広くて迷路のような庭園に逃げ込んだことがあるんだ。」


思い出しているのか、遠くを見るジュリアス。


「その時に、庭園にあるガゼボで弟と遊ぶ姉様を見たんだ。大きな笑い声を上げて弟に飛びついていたんだ。」


ジュリアスは目線をわたくしに戻し、両手を机の上で組み、小首を傾げる。


「可愛い女の子が随分とやんちゃをしているんだなって思ったんだ。あとで姉様だって知った。」


「そうなの・・・。」


わたくしが知らない間に姿を見られていたとは思わなかった。

この国の習わしで異母兄弟は別々の離宮で育てられる。

大きくなるまで兄弟の姿は見ることはできない。

わたくしはうつむく。


「ハルモニアはずるいね。」


「え?」


弟の名前がジュリアスの口からでたため、思わず顔を上げ顔を見る。


「姉様の愛を幼い頃から一身に受けている。恨めしいなぁ。」


冗談めかした口調であるが、ジュリアスの目は笑っていなかった。

わたくしの背筋が凍る。


「殺したくなっちゃうよ。姉様。俺のことも愛してくれなきゃ。」


わたくしはうまく動かない口を無理やり動かし、口元に笑みを浮かべる。


「これから、これからいつでも、仲良くできるわ。ジュリアス。」


わたくしがそう言うと、それもそうだね、とジュリアスはわたくしの手を握りその日は口を開かなかった。



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