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令嬢は次男に会う。


父と母の土葬をする中、わたくしはその場を離れ外れにあるガゼボで休む。


土葬後の行動をどうするか考えたかったのもあるが、ジョシュアがこちらをにらみつけてきていたため、前回首を切られたときのことを思い出し、たまらず逃げてきたのだ。


葬儀の間、ハルモニアには目立たないために顔をベールで隠すよう伝えておいたから、顔を見ることはないだろう。

ハルモニアは女性のものをつけるなんてと憤慨していたが、わたくしのあまりの剣幕にしぶしぶつけてくれた。



前回、葬儀後にわたくしはハルモニアを連れ、3人に挨拶をし、ハルモニアが公爵位につくと宣戦布告をしたのだ。


今世では挨拶だけして早々に帰宅しよう。


ハルモニアがあの3人の毒牙にかからないように目立たないようにする必要があるし、公爵位を継ぐといってしまえば後継者争いという誰が味方かわからず公爵家関係の多くの人が死ぬことになる。


前回の人生で、ジョシュアはわたくしのことをハルモニアを使って公爵位を得ようとしたといっていたが、わたくしはそんなこと考えたこともない。

ハルモニアに継がせるために厳しく接し、手を汚すことをしたが、それもすべてわたくしたちが生きるため。

わたくしが公爵になる、なんてことは1つも頭によぎらなかった。

ただ死ぬ直前は、ハルモニアがあの3人の手中に収まってしまったため、わたくし自身が公爵になりハルモニアを助ける必要があると思ってはいたが。


「とにかく前回のようなことは絶対に起こさない。」


「何が?」


横から問いかけられハッと口に手を当てる。

思わず口から出てしまっていた。


恐る恐るわたくしは声が聞こえた横を見る。


プラチナブロンドの巻き毛に朝焼け色の瞳と私と同じ夜空色の瞳のオッドアイ。

喪服である黒に身を包んだ愛らしい少女のような顔をした見知った男がいた。


「ジュリアス・ミラエル・キキ・・・。」


キキ公爵家次男であり、暗殺を得意とするわたくしの異母弟である。

年は今は18歳だったと思う。


「俺のこと知っているんだね、姉様。嬉しいなあ。」


ジュリアスはそういうと愛らしい笑顔でわたくしの顔を覗き込む。

わたくしは此奴が苦手だ。

目は笑っていないのに顔は笑っている。

狂気的な男。

かわいらしい顔をしているが、れっきとした人殺しである。

前回ではハルモニアに狂気的に執着し、彼がどこで何をしていたのか終始監視をし、わたくしの行動までも監視していた男。


「あたりまえでしょう。あなたはわたくしの弟だもの。」

わたくしは瞳の奥にある深淵を見ないよう、顔をそらす。

そうするとジュリアスは膝に置いていたわたくしの手に手を重ね、耳元に顔を近づける。


「じゃあ、なんで俺のこと父上から助けてくれなかったの?俺のこと知らんふりして、同腹の弟ばかり見て。姉様なら弟を助けなきゃ。」


その言葉にわたくしはドキリとする。




公爵家の特徴である黒髪と、夜空色もしくは特別な黄昏色の瞳をほとんど受け継いでいない、片方の瞳だけ夜空色で中途半端であるジュリアスが父からひどい虐待を受けているところに遭遇したことがある。


ハルモニアと本邸でかくれんぼをしており、ハルモニアを探しているときに見てしまったのだ。

あの時、ジュリアスはうつぶせで倒れており、顔も見えなかったが、きっとわたくしが通った気配に気づいていたのだろう。

初めて人から大量の血が出ているところを見た。

初めて父の狂気的な姿を見て、わたくしは恐ろしくなりその場から逃げ出したのだ。


「・・・あなたにはお兄さんがいるでしょう。」


私が苦し紛れにそういうとジュリアスはきょとんとし、ふぅんとつぶやくと私から離れる。


「兄様は俺を唯一助けてくれた人だからね。感謝しているし大切だ。でも、俺、母様が死んでいるから、女性からの家族愛が欲しくてさ。だから兄様だけではなく、姉様からも助けてもらいたかったんだ。」


ジュリアスはそういうとわたくしの肩に頭をのせる。


「邪魔者はいなくなった。ハルモニアはいるけど、これからは姉弟仲良くできるね。」


彼はそう言うと私の頬に口付けた。




ジュリアスが去った後もわたくしは震えて動くことができなかった。

幼いころのあの行動が、ジュリアスの恨みを買っていたのだ。


今後の行動を考えなければ。

わたくしの身だけではなく、ハルモニアの命までもが危ないかもしれない。

私はゆっくり立ち上がるとガゼボから出た。




「姉さん、どこ行ってたんだよ!」


土葬が終わった父と母の墓場に戻るとベールをかぶったハルモニアが走ってくる。

ハルモニアを見て先ほどまで感じていたプレッシャーから解放され、わたくしは思わず地べたに座ってしまう。

公爵家の令嬢としてあるまじき姿である。


「ハル・・・。」


「ど、どうしたんだよ姉さん!」


ハルモニアはわたくしの傍までより腰をかがめる。

そんな彼にがばりと抱き着き泣き始めたわたくしにハルモニアは戸惑う。


「あなたのことはっ、絶対にっ・・・姉さんが守るわ!」


「ハア?」


頭上からあきれた声が聞こえる。


「何があったのかわからないけど。身を守るべきは姉さんな気もするような。」


ハルモニアがなんて言ったのか、その言葉は頭には入らなかったが、わたくしが泣き止むまでその場で慰めてくれた。



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