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中編 良さそうに見える年金制度の「罠」

筆者:

 さて、この項目では企業に所属している正社員と、

 非正規雇用でも加入が義務付けられる範囲が広がっている厚生年金は「増税」という事を見ていこうと思います。


 正直言うとかなりテクニカルな話になってくるので、


「とにかく今岸田増税メガネ政権が厚生年金に加入させようとしていること、年金受給5年繰り下げ実質増税だ」ということを抑えて後編に進んでいただいても構いません。



質問者:

 数字の話を語られているとあんまり評価伸びていませんものね……。


 でも、厚生年金って払っている額に比べて圧倒的に貰える額が多いことになっていません?


 筆者さんの認識違いなんじゃないですか?



筆者:

 一般的にはそう言われていますね。


 マネーコンサルタント頼藤 太希氏の2023年9月29日の記事によりますと


 国民年金においては

 20歳〜60歳で合計792万9600円の保険料を支払い

 65歳からの30年間で合計2385万円の老齢基礎年金をもらえる。


 厚生年金 月給30万円とすると

 20歳〜60歳で合計1317万6000円の保険料を支払う

 65歳から30年間で合計4752万7920円の老齢年金をもらえる。

 

 と言う試算があります。



質問者:

 ほらぁ、筆者さんの間違いじゃないですかぁ。厚生年金は3400万円と圧倒的黒字ですよ。



筆者:

 これはしかし「洗脳」に近いものがあります。


 まず1点目の見逃されている点は厚生年金は労使折半であるということです。

 これは本来給料としてもらえる分を企業が半分負担、労働者が半分負担支払しているという構図があります。

(国民年金は個人事業主なども払うが、厚生年金は企業に加入が必須のため)


 つまり、実質的に国民側が支払っている(負担)金額は上の試算の2倍である2635万円ということなのです。

 この1300万円分は給料の手取りでもらえていてもおかしくない金額だったわけですからね。



質問者:

 な、なるほど……。



筆者:

 さらに上の試算だと年金受給は30年ですが、実際は平均寿命は85歳なので給付される年数は65歳から考えて20年ぐらいが妥当でしょう。


 20年給付ですと2635万円支払い3136万円給付とギリ黒字程度。

 80歳で亡くなると2376万円給付で労使折半分込みでは赤字になるのです。



質問者:

 なるほど、厚生年金労使折半を考えると最低でも85歳まで生きなくてはいけないわけですか……。



筆者:

 更にこれは「給付分」という事と言うのを見逃してはいけません。


 給付額が増えれば社会保険料、介護保険料、所得税、住民税も増えるために手取りはさらに減少するために上の試算より手元としてみた場合さらにもらえないことになるのです。

 

 支払う方に関しては生活保護など特別な優遇措置以外では考慮されることは無いですので(厚生年金だと特に厳しい)、本当に「年金で元を取ることが難しい」という事がお分かりいただけると思います。



質問者:

 そういえば前編では働いた分は年金が減らされる額が増えるとか……。



筆者:

 更に今後も「5年ごとの見直し」によって減ることを考えると厚生年金を実質的に回収することは90歳かそれ以上になりそうです。


 つまりそれより前に亡くなった方に関しては「増税をされた」と言っても過言ではないわけです。


 基本的には企業に所属していない個人事業主の方が同じだけ稼いで、厚生年金分貯金か投資をしておいた方が断然お得という事です。



質問者:

 平均寿命より5歳以上生きるのは結構大変ですよね……。



◇年金支給年齢引き上げも「増税」



筆者:

 次に年金支給年齢が5歳引き上げられることについても「増税」であることについても見ていこうと思います。



質問者:

 でも繰り下げれば、その分貰える金額も増えるということのようですから良いことでは無いのですか?



筆者:

 それも先ほどの厚生年金と同じく「洗脳」に近い「罠」だと考えています。


 確かに国民年金の保険料納付期間の40年から45年への5年間延長は、

 納付保険料は5年間で計約100万円増える一方で、

 1年間の給付額は約10万円増えるという試算があります。


 ただこれに関しても先ほどと同じように支給額が増えることに伴う保険料・住民税が増額することが考慮されていません。

 毎年増える金額は元の年金額にもよりますが、10万円より少ないと思った方が良いのです。


 現在も任意の選択による繰り下げ制度は現在もあるのですが、

 日本経済新聞の2018年の繰り下げ制度が始まった時点による試算によると、


 5年繰り下げで年金210万円(手取り191万円)の人が5年繰り下げると年金300万と(手取り255万)になるとあります。


 191×5÷(255-191)=14.9年 

 5歳繰り下げた時点から15年は生きないと手取りでプラスにならないのです。


 65歳でもらえるのを5年繰り下げて70歳から受給。そこから約15年ですから現状の制度が継続する前提でも85歳まで生きなければいけないのです。


 ちなみに、日本経済新聞によるとこれは元の支給額が多ければ多いほど回収するのに時間がかかるそうです。


 皆さんのご父母やご祖父母の方々が年金を受給される際には、よほどの健康に自信が無い限りは繰り下げるのは今後を考えると「危険」と言えるでしょうね。


 それを強制的にやろうとしているのですからこれも84歳未満で亡くなった方に対する「増税」と言えるのです。



質問者:

 本当に健康に気を付けなければ元を取るのが難しいという制度なのですね……。



筆者:

 前編で見た在職老齢年金やマクロ経済スライドの強化も総合してみると、

 90歳以降でないと繰り下げによる元は取れないと思います。

 皆さんが想像している以上に厳しい政策案だと思います。


 ただこういった分析をしている方と言うのはメジャーな経済評論家では少ないです。

 年金一つとっても皆さん給付される額も違いますし、複数の要素である税金や社会保障、働く際の引かれると言った制度が介在しているためですね。


 このために制度の全容が非常に分かりにくくなっていることが(政府にとっては)功を奏して、非常に残念ですがこの5項目の案は通過していってしまう事でしょうね。



質問者:

 確かに、構造的にすぐに理解できないと、反対の声が少なく政府の言いなり通りになってしまう感じはありますよね。


 消費税のインボイス制度は民間の消費税の押し付け合い、実質増税という事はなかなか浸透せずに反対の声も少なかったのも大きいですよね……。



筆者:

 消費税のインボイス制度については50万の電子署名とはいえ声を封殺されたことも大きかったですけどね。


 いずれにせよ年金で「元を取る」という事はかなり困難であることがお分かりいただけたと思います。


 また、数年おきに起きる“年金財政検討”によって更に厳しい状況になることが予想されますしね。


 では次にこの社会保障・年金政策が続いていった場合の「日本の末路」について見ていこうと思います。

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