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愛する事はない

「愛する事はない」と私を拒否したのに、子供が欲しいと言うなら貴方が産めば問題解決ですね。

作者: しまね

※男性妊娠表現有り。BL無し。

 8歳で婚約して12年。

 学園を18で卒業し、2年間は王太子妃教育の最終教育と結婚の準備で忙しく、ようやく結婚式となった。

 その後初夜の準備を万端にして、この度夫となったリスキア国マクシミリアン王太子を元カルロ公爵令嬢だったレティシア王太子妃は夫婦の寝室のソファで待っていた。

 待たされること1時間弱、もう疲れているので自室に帰って寝ようかと思った頃に、ようやくマクシミリアンが部屋へ訪れ、隣のソファではなく向かいのソファに腰かけて言った言葉はレティシアには想定内だった。


「レティシア、結婚はしたけど君を愛する事はないよ」


 予測通りの言葉が決定打となり、レティシアにとって夫の事はどうでもいい存在になった。全く反応せず彼の話を聞いていたが、マクシミリアンはレティシアが取り乱すことを期待していたのか、彼女の様子に眉をひそめたが、そのまま話をする。


「私は2年後、側妃を置くことにする。私は愛する者を傍に置きたいんだ」


 王家の取り決めでは、結婚して2年、子供が出来ない場合は側妃を置ける事になる。

 マクシミリアンはレティシアとは婚約破棄や離縁は考えておらず、とにかく自分の思い描く未来に向かって突き進む気らしい。公務はレティシア、癒しは側妃と。

 それがレティシアを侮辱しているとは全く思わずに、自分の幸せだけを追い求めているから始末に悪かった。


「ああ、ミレイユ・アローバ男爵令嬢でしたわね。しかし後継はどういたしますの?男爵令嬢が産んだ子供では後継者には例え王命でも出来ませんわ」

「・・・・君は悔しくないのか?」

「悔しいと思う程あなたを愛しておりません。前はいい関係を持とうと思っておりましたが、婚約中に浮気に走る男性など愛せませんわ。そんな事は私の中で些末な事となりました。それで?後継はいかがするのでしょう?」

「・・・・弟のメイナードに男児が生まれたら頼むつもりだ」

「そうですか」


 ミレイユ・アローバ男爵令嬢は、学園で知り合い、彼曰く、『真実の愛』で前世から結ばれている恋人同士なのだそうだ。ミレイユの天真爛漫なところが好きで癒されると婚約者である自分に打ち明けていた。

 きちんと婚約者にも打ち明けたんだからいいだろうと、学園期間中は人目を憚らず二人してずっと過ごしていた。婚約者を愛そうと疑似恋愛をしていたレティシアは、ミレイユとマクシミリアンの仲が決定的になった時点で、彼に見切りを付けていた。それでも後継を産む事も含めて、王太子妃として責務を全うしようと思っていたが、結果は夫からの拒否だ。レティシアは完全に彼に失望した。


「でもミレイユとの子供は何人でも欲しい。きっと僕たちは沢山愛し合うから子供も沢山出来るだろう」


 初夜に他の女との未来を語る夫などいないだろうと思いながらも、本当にこいつと閨をしないで済むのなら、面倒くさい公務でもなんでもやりますよとレティシアは強く思った。


「女性の体は繊細です。そんなすぐに何度も産めるわけないですし、妊娠・出産を繰り返してしまうと体に悪影響を与えてしまいます。ある程度避妊はしてあげて下さい。出産は大変なのですから」

「産んだことのない君に言われても・・・・」


 産んだことはないが、毎月の血の巡りでいつも痛い思いをしている。この痛みよりも何倍も強い痛みを長時間断続的に味わうというのだからどれだけ大変かは想像がつく。お前だって男性なんだから私より分からないくせに言うなとレティシアの気分は最悪になっていった。ああ、自分はこんなにも他人の言葉に、感情を揺さぶられるのかと初めて自覚した。


「だいたい、周りは結構子沢山だ。子供なんて次から次へとあっという間に生まれるさ」

そうだな、子供は10人くらいは欲しいな。


 声を出して笑いながら言うその言葉で、レティシアの中の何かが切れた。

 マクシミリアンはミレイユの事も自分に都合のいい女性なだけで、思いやる事もしない。

『自分を甘やかしてくれるミレイユ』に側にいて欲しいだけだ。どこまで人を馬鹿にすれば気がすむのか。

 王太子妃教育の成果か、どんな状況でも顔に出ることはない。しかし、脳内ではかなり怒り狂っていた。

 女性が毎月、どんなに痛みを堪えているか知らないから、知ろうともしないから、お前は能天気にそんなことが云えるんだ。無神経なマクシミリアンの言葉に本当に憤慨したが表情に表せない分、それが余計にストレスになっていた。


 しかし、結婚してから1ヶ月経ったある日、国王陛下から夫婦そろって呼び出しを受けた。

 どうやら、閨での事は知られてしまったらしく、結婚してから一回も夫婦の寝室に入っていない事に陛下から叱責を受けてしまった。


「閨を共にしない、後継を作らないというのであればメイナードを王太子に、お前を公爵へ降爵させる」


 マクシミリアンは焦った。生まれてからずっと国王になる為に勉強をしてきた。

 しかも女性を2人娶れるのは国王か後継の王太子のみ。公爵になってしまったら、ミレイユは完全に愛人としてしか居場所がない。

 カルロ家の後ろ盾の為、レティシアとの離婚はたとえ公爵となってもする気はない。


 その夜、レティシアは夫婦の寝室に誘われたが、まずは話がしたいと応接間でマクシミリアンと二人だけで話し合いを持った。


「貴方は私を愛する事はないとおっしゃいました。私はそれで結構ですので、このまま白い結婚でいましょう」

「いや、私が間違っていた。子供が欲しいんだ。

 早く寝室にいこう」


 そう云って、レティシアの手首を掴んだ。掴まれた瞬間、レティシアはあまりの気持ち悪さに鳥肌が立った。


 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い


 初夜に私を拒否しておきながら、陛下から言われたからと私と閨を共にすると? 出来ると?

 しかもレティシアは、マクシミリアンが避妊薬を密かに王宮医に要求し、断られると権力を振りかざして薬を差し出させたのを知っている。既成事実は作るが、子供は作らないという事だ。


 許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない


 きっとマクシミリアンは、初夜で私に云った事も、こんな男と閨を共にする事も、避妊薬を飲まされる事も、それによって私が苦しい思いや屈辱的な思いをした事もする事も、なにも考えていない。本当になんて自分本位で、他人を蔑ろにする事に無神経な男なのだろう。

 手首から気持ち悪さが這い上がり、心拍数も上がり、全身冷や汗が出てきた。

 こんな状態で閨を共にしなくてはならないと思うと怒りさえ覚え、レティシアは目の前が真っ赤に染まり、めまいも頭痛もしてきた。腹から込み上げてくる怒りと闘いながら、自分の手首を掴んだマクシミリアンの手の上に、自分の手をそっと添えた。

 そして多少困ったように微笑みながら、口を開いた。


「殿下、あまりにも急すぎますわ。私たちは会話だって婚約途中からまともに行えておりません。まずは毎日お茶を共にするところから始めましょう」

「しかし」

「殿下も、叫び声や物を壊す音を周りに聞かれながらするのは嫌でしょう」

 醜聞にも関わってきますものね。


 存外、無理矢理子作りをするなら、抵抗するぞと脅したら渋々ながら頷いた。

 それから毎日お茶の時間を共にするようになった。もっとも話す事などないので、公務の報告時間となったが。

 いつもお茶はレティシアお薦めの茶葉で、彼女付きのメイドが丁寧に入れ、茶菓子もまた、公爵家からレティシアについてきたシェフが丹精込めて作ったもので美味だった。

 マクシミリアンはお茶と茶菓子を楽しみにレティシアとのお茶の時間を過ごした。

 しかし、ある日を境に時々下っ腹の痛みが続く事があった。一週間程度で、腹の底からグズグズとまたはチクチクとした痛みで、特に痛みを感じた二日目が特に下腹が重く、酷く痛んだ。

 王宮の医師に診てもらうも、疲れからくるものだろうと胃腸薬と痛み止めを渡されただけだった。たしかにその薬はよく効いて、痛みは一時的に抑えられたが、痛みは一月(ひとつき)に一度で一週間、毎月来るようになった。痛みが気になり、閨の事は考えられなくなったが、毎日のレティシアとのお茶の時間はきちんと行っていた。


「どうもこの頃体調が芳しくない。最近気が付いたのだが、痛みが来る一週間前くらいから倦怠感と頭痛や苛立ちが凄くて公務も遅れがちだ。なんとかならないものか。その・・・尿に血も交じっている時があるのに王宮医の腕が悪いのかまったく改善されない」

「まあ、大変ですわね。そうだわ、そういった体調不良に効く魔法が東の国にあって、兄がその魔法を習得しておりますの。一度お兄様に頼んでみますわね。それと我が家お抱えの医師も連れてくるようにお願いしておきます」

「おお、そうか。それは助かる」


 翌日、レティシアの兄である公爵家嫡男のアーサーとカルロ家の医師が王宮に訪れて、マクシミリアンに診察と魔法を施術していった。その施術は下腹部がほんわりと暖かくなり、マクシミリアンはその気持ちよさに眠ってしまった。

 起きたのは翌日だったが、あんなに不調だった体が軽く、体調が良くなっていて喜んだ。

 月に一度の痛みも倦怠感も無くなり、マクシミリアンはアーサーに感謝していた。

 体調が良くなると今度は閨の事を思い出し、レティシアに迫る事が多くなった。それを素気無く断り続けていたが、しつこくなってきた時分にレティシアはミレイユを自分付きのメイドとして雇う事にした。

 淑女教育と称して、自分のメイドとして働かないか打診したところ、学園を卒業してから思う様にマクシミリアンと会えないことに苛立ちを覚えていたのだろう、二つ返事で王宮にすぐに来た。

 そして、マクシミリアンの意識をミレイユに向けさせた事で、レティシアに迫ることが無くなった。

 王宮内は監視が多い為、マクシミリアンとミレイユは二人きりになる事はない。周りがさせないだろう。それゆえ閨を共にする事もない。


 暫く経った頃、マクシミリアンは胃がムカムカし、匂いにも敏感になったのか食事の匂いが漂ってくると気持ち悪くなって吐くようになり、体調を崩し始めた。

 王宮医は陛下に、マクシミリアンの公務を控え、暫く休養するよう進言した。

 マクシミリアンが休養に入ると、レティシアの公務の仕事も増えたので文官を多く採用し、効率よく回す様に仕事内容を変革・改善した事で、殿下の分まで問題なく処理が出来、尚且つ早く終わるようになった。

 ミレイユには淑女教育を厳しく行い、ご褒美と称してマクシミリアンに逢えるようにしたところ、かなり順当に淑女として所作など行えるようになり、知識や教養も学んだ為か自分の今までの行動を顧みるようになった。そして自責の念を抱えるようになり、謝罪とこれからの事を話す時間をレティシアにお願いした。

 レティシアは快くお茶へとミレイユを誘った。


「レティシア様、この度は私に淑女教育を施してくださってありがとうございます。

 いかに過去の自分の行動が、貴族女性から逸脱していたかを理解致しました。今までの不躾な態度誠に申し訳ありませんでした」

「謝罪は受け入れます。許すか否かと問われれば許す事は出来ません。貴女が殿下と懇意にならなければ、今のような険悪な夫婦仲にならなかったもの」

「はい、許して頂こうなどとは思っておりません。それ程の事をしたと思っております。今後はレティシア様付きのメイドを辞して修道院へ行こうと考えておりますが、その前に私に出来る事でレティシア様へお詫びが出来るならとこの度時間を頂きました」

「そうねぇ。修道院へ行っても、殿下に貴女への執着があるなら彼本人に戻される可能性が高いのよ。だからカルロ家遠縁の子爵家へ嫁いでもらっても?」

「分かりました」

「ああ、誤解しないでね。酷いところへ嫁がそうとかは思ってないの。

 その子爵家次男は私たちより2歳上くらいで性格も良い人だそうよ。彼は彼のお兄様と一緒に協力しながら領地経営しているの。子爵家は王都から遠いし、そこなら貴女も穏やかに暮らせると思うのよ。

 殿下と別れた貴女にとって結婚出来るだけいい話でしょう」


 殿下とミレイユが恋仲だという話は、ほとんどの貴族が知っているくらいの醜聞だった。そのミレイユが殿下と別れた後どうなるか。

 彼女に目を付けた貴族が彼女を娶り、殿下と恋仲だった事を社交界で利用するか、または醜聞まみれの貴族女性は結婚出来ない事も多い。騙されて娼館で『王太子殿下のお手付きだった娘』として働かされる可能性もある。

 カルロ家の目の届かないところで利用されるよりは、手元に置いて監視させる方がカルロ家にとっても王家にとってもいいのだ。子爵家次男もカルロ家の系統なので、どこよりも系統教育がきちんと行われていて結束が強い。今回の話も理解し、受けてくれた。


「レティシア様のご温情、心より感謝申し上げます」

「3ヶ月後に辞めるよう調整しましょう。それまで殿下に気取られないように、いつも通り過ごしてちょうだい」

「承知致しました」


 それから3ヶ月が経ち、漸くマクシミリアンも少しずつだが公務を行えるようになってきた。

 まだ体調は不安定だが、食欲はあるし問題ないと本人からの申し出だった。


「食欲はすごくあるんだが、動く事が出来ないので腹が出て来てしまったが・・・」

 これから無理をしない範囲で公務を行えば、体重も元に戻るだろうと考えていたマクシミリアンだった。

 実はマクシミリアンには分からないようにしていたが、ほとんどの業務はレティシアだけでも問題なく廻せるようになっていて、彼がいてもいなくても良い状態に連携が取れてしまっていた。

 だが文官達は上手くそれを隠して彼に仕事をしてもらっていた。


 ミレイユはその後、ひっそりと王宮を去った。






「ミレイユに暫く会っていないが、元気にしているか?」


 体調が良くなったり悪くなったりしていて自分の事で手一杯のマクシミリアンが、見舞いに来ていたレティシアに聞いて来た。側には定期的に診察に来ているアーサーとカルロ家医師もいた。


「ええ、無事婚姻が認められて、正式に嫁いだそうです」

「は?君はそこまで私達を認めてくれていたのか?」

「認める認めないは、私の中で、もうどうでもいい事になっているのですよ」

「何を言っているんだ? ミレイユの部屋はどこだ?私から向かおう」

「ミレイユは王宮にはおりません。子爵家へ嫁いだので」


 その言葉にマクシミリアンが一瞬訳がわからないという顔をしていたが、意味を理解したのか驚愕した顔から怒りの形相になった。


「どういう事だ」

「淑女教育の成果か、過去の自分を恥じていて可哀想なくらいでした。本人は修道院へ行くと言っておりましたが、若い時間をそんな所で過ごすなんて気の毒で・・・彼女を娶ってくれるという家があったのでカルロ家から紹介しました。彼女本人も承諾したのですよ」

「お前・・・!お前が!!!!」

「ああ殿下、興奮してはいけません。お腹の中の子に障ります」

「は? 子?」


 レティシアは漸く彼に打ち明けられると、とても良い笑顔をマクシミリアンに向けていた。


「殿下が子供が欲しいとおっしゃったのよ。ですから、カルロ家の秘伝の方法で私の卵と殿下の精を体外で成長させて、それを体が整った殿下に入れたのです」


 今は7ヶ月ほどです。安定期に入った時は、こちらもホッとしました。

 にこにこと今まで見た事もない笑顔を振りまきながら、レティシアは呆然としているマクシミリアンに説明する。


「我がカルロ家は医術や魔術に特化しているのはご存知でしょう?

 秘伝というのは、心と体の性が別々になって生まれてしまった方用に開発された医術と魔術なのです。医術と魔術を同時並行で施術するのですが、先に毎日魔法薬を服用する事が必要で、しかも飲用と食用に分かれているので殿下にはお茶とお茶菓子でお体を調整させて頂きました」

「男性体で子供を産めるように体を整える場合は、産める状態には出来ますが、体内で卵を作れる状態には今は出来ません。これは現在、研究を進めております。ですが、卵と精の体外受精は成功しているので、不妊治療に用いております。

 今回殿下の受胎は、その技術を使用した訳です」


 アーサーがレティシアの後を引き継ぎ説明するが、マクシミリアンは何を言われているのか頭が全く回らない。

 自分の腹に子供? レティシアと私の? いや産むのは女のレティシアであって私ではないだろう。

 閨だって断られていて・・・・。 避妊薬を使用しようと思ってたから子供が出来るわけは・・・。

 ぐるぐると頭の中で色々な思いが交錯されていて収拾がつかない。


「公務の件ですが、私は変化(へんげ)の魔法も使えます。殿下にも変化出来ますので今では私一人で公務も行なっておりますので、安心して産んでくださいね」


 カルロ家は建国当時からの高位貴族で、国に貢献し、陰からも支えて来た一族である。

 ()()()()()()忠臣だった為、表舞台に出るような事もあまりせず、一途に国の在り方だけを考えて行動してきた。しかし、王家からの熱烈な要望も有り、レティシアを嫁がせる事となったが。

 その系統は、至る所に散りばめられており、王宮や宮廷内にも従事している者は多い。王宮医もそうだ。

 レティシアがマクシミリアンの分の公務を行うというので、文官も全員が系統になっているし、夫婦の周りのメイドや執事、護衛も影も全て系統にすり替わっている。これで国王へ王太子夫婦の状況も上手く知らせる事が出来るようになった。

 夫婦の周りは強固な護りで守られている。

 例え、マクシミリアンが出産しても産褥期に入っても問題はない。

「閨」や子供を「産む」のは遠慮するが、マクシミリアンとの子供が必要なのは確かなのだ。


 未だ呆然として話せないマクシミリアンにレティシアは言う。


「殿下は子供が欲しいとおっしゃってましたものね。

 それと子供なんて次から次へとあっという間に生まれるのでしょう?

 私も子供は沢山欲しいので、公務は私が、産むのは殿下という事で、お互いがんばりましょう」


 ねぇ、どんな気持ちですか?

 自分の心地良い場所だけを作ろうと他人の犠牲など考えもしない貴方の真似をしただけですよ。

 私が産まなくてもいいのであれば、貴方との子供は何人でも欲しいのです。

 後継は必要ですしね。貴方と私との子供だったらすごく可愛いと思うの。

 貴方と同じ、金の髪に金の瞳でもいいし、私のように茶色の髪に緑の瞳でも素敵な子になるわ。


 ねぇ殿下。


「『愛する事はない』と閨を貴方が拒否したのに、子供が欲しいというのなら、貴方が産めば問題解決ですね」


 素敵な家族になれるわ。きっと。


 ああ、でも今は混乱しているでしょう。

 落ち着くまで少し心を抑える魔法を使いましょうね。

 心穏やかに出産準備が出来ますわ。




 ************************************************


 リスキア国マクシミリアン王の統治は15年程。

 短い統治ではあったが、長く続くだろうと思われた問題を早急に解決し、また、時代を先取りした様々な功績を残した。特に女性の権利問題を多く採り上げ、男性と女性を区別はするが差別はしない政治手腕は多くの女性国民の支持を受け、それは周りの国にも影響を及ぼし、波及していった。

 ゆえに、その統治は争い事のない、穏やかで活気ある時代になった。

 また、レティシア王妃を一途に愛し、二人の間には双子二組を含め10人の子宝に恵まれた。

 まさに栄華と繁栄の時代になり、長子ヘンドリックが成人した翌年に惜しまれながら自ら退位したが、次代の王や孫の代以降もその恩恵を受け続けた。


 多くの文献には賢王マクシミリアンと王妃レティシアの統治と愛が記され、後世に残る事となった。







多産DVから逃れられたミレイユ嬢。

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