聖女の被る帽子は大いなる封印のために
なろうラジオ大賞用小説第十四弾!
私の生まれた世界には聖女がいる。
でもその聖女の正体は誰も知らない。
なぜならその聖女は、誰かに利用されかねないほどの力を持つらしいから。
だけど、どういうワケか。
その聖女は、貴族令嬢である私の前に突然現れ。
聖女曰く、代々聖女が受け継ぐ帽子を私に託され……私は次期聖女となった。
「この帽子は絶対肌身離さず持ってなさい」
私に帽子を被せながら彼女は言う。
「でないと、力が暴走して大変な事になるわ」
まさか、この帽子は聖女にとってそれほど重要な物なの?
「あーよかった。私の力が無くなる前に後継者を見つけれて」
そして彼女は最後にそう言うと。
伸びをして、すぐにその場を去った。
※
あの時、聖女から何も教わらなかったけど。
あの後、私は聖女の力にまつわる全てを聖女の力で以て夢で見て……あの帽子を肌身離さず持つ事の重要性をこれでもかと知った。
なんて事だ。
あの帽子を手放せば、その時この世界は――。
※
「お姉様、その帽子いい加減ちょうだい?」
ある日。
私は最大の危機に見舞われた。
私の物をなんでも欲しがる異母妹が。
今までいろんな物を取ってった異母妹が、今まで渡すのを断固拒否してた聖女の帽子を再び要求したのだ。
「だから、これは絶対ダメ!」
私は帽子を抱き締め守る。
すると異母妹にデレデレで私に冷たい父が「いい加減にしなさい!」私を平手で殴り怒鳴った。
「今まで子供だったから許していたが、お前はもういい歳だろう!? それ以前にお前は姉なんだから妹に優しくしなさい!」
そして父は。
私から強引に帽子を奪った。
「ッ!? お、お父様!? か、返してくださいそれは――」
だけど、その言葉は最後まで紡げない。
なぜならば、私から帽子が離れた五秒後に。
帽子が一瞬にして膨張し。
超古代に、この大宇宙を支配していたと言われる円盤型魔獣『ラ=ティール』の生き残りと化したからだ。
※
私が夢で見た光景。
それは、初代聖女様がこの惑星に降臨したラ=ティールを、惑星連合軍の協力を得て封印し、ラ=ティールを帽子と化した光景。
初代聖女様が、その封印を維持し続けるため……聖霊力が続く限り、その帽子を所有し続ける宿命を負った光景。
そしてそれ故に。
歴代の聖女様が……聖霊力が尽きる前に、そしてラ=ティールの恐ろしさを知らない存在に力の正体を知られ利用される前に、帽子の後継者を見つけ出さんとする孤独な旅路の光景だった。
なのにその封印は。
私の強欲な家族のせいで……ついに解かれた。