それぞれの道
オリファルコン社の会議室では
明日から放映されるTV CMと
YouTubeなどネット媒体で流れる
CFのお披露目会が実施されている。
白いレ-スのようなドレスを身にまとい
羽根をつけた絵色女神が
ギリシャのビ-ナスのようになり
『全ての人に幸あれ』と微笑むモノで
前評判も上々だった。
電車の中吊り広告や駅の壁面にも
ポスターは掲示される予定で
渋谷駅では駅の上の広告板も
使用する予定なので
テレビ番組で渋谷のスクランブル交差点が
ライブ中継されると
女神が微笑む巨大ポスターが
必ず目に入る状態だ。
会議が終わり、それぞれ自分の場所へと
戻って会長室での事
『会長のお耳に入れるべきか
迷っている事なんですが』と
美人秘書さんが猪木会長に
話し掛けると
『どうぞ、おっしゃってください』と
猪木会長が言う。
『実は副社長の件で、』と秘書さんが
喋りだすと
猪木会長は仕事の手を止めて
秘書さんの方に向き直して
『それで?』と
続きの話を要求してくる。
『言いつけたように思われるので
内緒にしといて下さいね?』と
前置きをして
『この前の日曜日に新宿で
副社長と若い女性がデ-トを
している場面に遭遇してしまって』と
申し訳なさそうに話すと
『詳しく教えて下さい』
猪木会長は詳細を聞き出したのであった。
場所はお台場の関東テレビ局前の
特設イベント会場
屋外ステージが設置されて数組の
ア-ティストが日替わりで
お客さんの前でミニライブを
無料で開催していた。
今日は権太坂36も出演する事になっており
全員が勢揃いして集合していた。
ラスト前が権太坂36の出番である。
この手のライブはラストに出演する
ア-ティストが一番注目されており
会場も、そのアーティストのファンで
埋め尽くされており
お目当てのア-ティスト以外には
関心がなく
その他の出演者のライブ中は全く
盛り上がらない。
それを踏まえてキャプテンの前田明子は
『今日のライブを見てファンになって貰う
その気持ちで頑張るよ』
その掛け声で円陣を組んでいた
他のメンバーが
『オ--』っと
一斉に声を出してステージに走って行った。
会場は今日のラストの
『ライカンスロ-プ』のファンで
埋め尽くされていると思っていたが
実際は違っていた。
会場は権太坂36のファンで全席
埋め尽くされているのだ。
性格に言うと絵色女神のファンで
会場が埋め尽くされている。
来場者は大きなウチワに推しの名前を
書いてあるモノを持参しているが
ほぼ、絵色女神の名前となっていた。
生まれて初めての光景に女神が
涙ぐんでいると
キャプテンが女神をセンターまで
引っ張って来て
『みんな、女神が見たくて来て
くれたんだよ?』
『みなさんに挨拶したら?』と
予定に無い演出で
女神に挨拶を促す。
『女神ちゃん可愛い〜』や
『会いに来たよ〜』と言う歓声の中
女神がセンター前に歩いていき
『今日は、お越し頂きありがとうございます』
『メンバー全員、皆さんに喜んで貰える
パフォーマンスをしますので』
『最後まで楽しんでいってください』
そう絶叫した瞬間に曲のイントロが流れて
権太坂36のライブが始まった。
会場のファンの熱気を既に事前に
情報として掴んでいたテレビ局も
カメラ4台で権太坂のライブを
撮影し始める。
ファンの視線とコ-ルは絵色女神に
向けられているものだが
メンバー達は嬉しかった。
山田プロデューサーの言っていた
今、売れなきゃ何時売れるんだ?
今がラストチャンスの言葉を実感して
いつもよりキレキレのダンスで
全員、リミッターが切れた
パフォーマンスを演じる。
予定の3曲を終了して権太坂が
ステージを去った後も会場では
アンコールの声が鳴り止まない。
だが次のライカンスロ-プが
スタンバイをしているので
権太坂は楽屋に戻って
今日のパフォーマンスは終了した。
楽屋に戻ってからも女神は
メンバーの輪の中心だ。
『全部、女神に持っていかれたよ』
『女神とその他大勢に名前を
変えてデビューしようよ?』
そんな声が飛び交うが、全員が
笑顔である。
今まで日が当たらなかった権太坂だが
女神がいる事で注目度が上がっており
それはテレビや雑誌、ネットで権太坂が
見られている事に繋がる。
女神の次は私だ。
権太坂のメンバーは売れ始めた事を
実感したライブであった。
大勢の女神ファンの中に自分の名前の
ウチワを持っているファンを見つけた喜び
メンバー達はその数を増やしていく。
その決意を各々して現地で解散する。
充実したライブが終わった、その日
越中美桜はスポンサーの社長に呼ばれて
都心のシティホテルにいた。
丸裸にされて全身を舐め回されている間
美桜は、この契約をした事を後悔して
解約出来ないか?
切り出す事を考えていた。
CMはまだ撮影していない。
今ならキャンセル出来るのでは?
そう考えていた。
社長が満足した後に言ってみよう
そう考えて社長の注文に忠実に答え
動物のような恥ずかしいポ-ズで
社長を受け入れている。
全身汗まみれの社長は欲望の限りを
尽くした後にも美桜にキスをしながら
恐ろしい事を耳元で囁いた。
『一生、お前を離さないぞ』
それを聞いた美桜は
『契約は半年ですよ』と言って
ベッドから飛び起きた。
『こんな可愛い美桜を手放すなんて
絶対にイヤだ』
『一生、俺の側にいろ』と
美桜の腕を引っ張り、再びベッドの中に
引きずり込み美桜の中に入ってきた。
『待って、イヤだ』
『付けてよ』
美桜の悲鳴に近い声を無視して
社長は腰を振りまくった。
『ダメ〜』
美桜の声を無視して社長は終えた。
『ひどいよ』
『もう会わない』
泣きながら美桜は全裸で泣いていた。
私はバカだ。
地元の彼氏を裏切って愛人契約を
する必要などなかった。
泣いている美桜の頭を撫でる社長に
『触るな』と
美桜が悪態をついて、突っぱねる。
『美桜、そんな悲しい事を
言わないでおくれよ』
社長がそう言うが
『うるさい』と
美桜は怒りまくって言葉を受け付けない。
『今日で契約は終わりにして下さい』
美桜はハッキリと社長に宣言した。
さっきまでとは別人のように
平謝りする社長は
『 CM契約は既に調印済みだから
キャンセルは出来ないんだよ』
『今、美桜がキャンセルすると
広告代理店を含めて2億円を美桜が
払わないといけなくなるんだ』
社長が説明して、以前不倫問題で
CM降板したタレントが
数億円の違約金を払った、と言う
記事を見た事を思い出した。
『だって中に出すなんて聞いてない』と
ソッチ方面にクレ-ムを言うと
『この薬を飲めば大丈夫』
『そういう薬だから』と言って
ウィンクした。
言われるまま薬を飲んだ美桜に
社長は持参したカバンから何かを取り出し
美桜のいるベッドに投げた。
それは現金100万円の札束だった。
『今日の事は本当にごめん』
『お詫びだから、受け取っておいて』
そう言って美桜にカバンにしまうように
言うのである。
こんな大金を目の前にしたのは
初めてだった。
社長にされた酷い事を忘れて
100万円の札束に釘付けである。
更に社長は
『美桜ちゃんに新しい CMをプレゼント
するよ』と
信じられない事を言ってきたのだ。
『ゴルフ友達の社長が新しい CMの
タレントを探していたから』
『美桜ちゃんに決めて貰うように
頼んであげるよ』
CMが更に増えたら女神に近づける。
今日のライブ会場で女神のウチワの数に
圧倒されていた。
『美桜ちゃん、機嫌を直してよ?』
社長に、そう言われた美桜は
『次にひどい事をしたら
本当にキャンセルですよ』と言って
社長を許すことにした。
それを聞いた社長は
『もう俺はみおから
一生離れられないよ』と言って
裸の彼女に抱きついている。
美桜は、この時に気付いていなかった
三脚に固定されたビデオカメラの存在を
美桜より早くホテルに入った社長が
カ-テンに隠す形でビデオを設置していた。
あらかじめ今日はひどい事を
するつもりで社長は考えていて
全て準備していた。
つけ加えれば前回のホテルも
契約内容の会話を録音している。
後で裁判になった時に有利にする為だ。
全てをビデオで録画されている事を知らず
胸を揉まれている美桜だったのである。




