第4の女
CM撮影を終了した女神はトイレに入り
立花にLINEを打とうとするが
何て書いたら良いのか分からず
頭を悩ませている。
怒らせた原因が分かっていれば
その事について謝れば良いのだが
それが思いつかない。
見当違いの謝罪文は怒りを倍増させて
更に連絡困難になってしまう。
キスをされた事を書こうと
一瞬頭をよぎったが、それはダメだ。
ちゃんと報告しないと、いけないが
今ではない。
タイミングを見計らって説明をする事は
自分の中で決めた。
なら、どう打つ?
『女神ちゃん大丈夫?』
トイレに立てこもった女神を心配して
マネージャーさんがトイレに入って
声をかけている。
『すいません、大丈夫です』
10分間個室に入っていた女神が答える。
もう出ないと、いけない。
言い訳も何もない。
シンプルな一文を書いて立花にLINEを
した女神は次の仕事に向かった。
トラブル処理に群馬県で作業している
立花と藤波係長は頭を抱えている。
工場に着いて2時間、作業をするが
機械は故障していない、エラーも無い。
立花が一瞬ひらめいた。
持参したカバンを開き、何かを
探し始める。
『あった』
そう言ってLANケ-ブルを手に取り
工場内のノ-トPCを借りて
複合機の側に行って
配線していたケ-ブルを抜いて
自分が用意したケ-ブルに差し替えて
機械を稼働させてみた。
『動いた』
藤波係長が歓喜の声を上げる。
工場内の人も集まっており
みんな喜んでいた。
『ケ-ブルが断線していた事って事?』
藤波係長に聞かれた立花は
『おそらく、そうだと思います』
立花が、そう答えたが
『ここは1ケ月前に新規設置したばかり
じゃないか?』
『それで断線するの?』
新品の部品が、すぐに切れる事が
信じられない藤波係長が呟いた。
『でも、実際にケ-ブルを入れ替えたら
動きだしましたから』
『それが原因だと思うのが、1番可能性が
大きいと思いますよ』
そう立花が説明する。
『だとすると、困ったな』と
立花が渋い顔をした。
ここの担当だった立花だから分かる
対処が難しい問題だ。
工場のような場所はLANケ-ブルは
表には出ていない。
隠蔽配管
家庭用のコンセントの用に電気の
コ-ドが床に転がっていると
引っかかってしまったり、上に乗ると
断線の恐れがあるので
床の中に埋設したボックスの中に
ケ-ブルを通しておいて
コ-ドを隠してしまう方法である。
普通に使っている時にはコ-ドが
無いので見た目も作業時も邪魔にならず
利用者に喜ばれるが問題もある。
『床を剥がして配管を出さなきゃダメ?』
藤波係長が立花に質問をする。
『出来れば、それはしたくないです』と
立花が答えるが
最悪はその方法も考えないと
いけない事を暗に言っている。
仮にケ-ブルを替えるとなっても
電機店に売っているような
家庭用の3mサイズでは届かない。
30mの長さは最低でも必要だ。
すぐにネットで近所の部品屋を探して
電話をして在庫を確認したら
コ-ドは6芯で30mはあった。
爪は自分で交換出来る。
初めて行く店なので、交通手段が
わからないのでタクシーを呼んで
立花が買いに向かった。
1時間後、ビショビショになった立花が
帰って来た。
『そんなに雨はひどいの?』
台風の影響で全身ビショ濡れの立花が
『さっきより雨風が強くなってます』
『早く片付けて帰りましょう?』と
笑顔で返す。
早速、今使っていたLANケ-ブルの端に
新しいケ-ブルを縛って引っ張る。
埋設しているボックスの中でケ-ブルを
何処かに固定していたら終わりだ。
ゆっくりと複合機側のLANケ-ブルを
引っ張っていくと
やがて全部のケ-ブルを引き出す事に
成功した。
古いケ-ブルを見て故障の原因が
判明した。
ネズミが原因であった。
埋設ケ-ブル内が床の下でネズミの通り道に
なっていたのだ。
ネズミは電線をかじって自分の歯を
研磨すると言う。
立花も藤波係長も自社が原因じゃなく
胸を撫で下ろしている。
LANケ-ブルの爪を付け替えたら
作業は終了だ。
そして作業は終了した。
時間はもう18時になっている。
『急いで帰らないとね?』
藤波係長が工場の人に頼んで
タクシーを呼んで貰う事にする。
タクシーを待つ立花と藤波係長が
窓に叩きつける雨を見て台風が
直撃している事を感じていた。
10分ほど待つがタクシーは来ない。
『雨の影響かしら』
藤波係長が独り言のように呟いている。
結局タクシーが工場に到着したのは
30分後だった。
ワイパーが意味をなさない中
タクシーが駅に着いたのは
19時過ぎである。
雨に濡れながらダッシュで駅に入った
藤波係長と立花は
信じられないモノを目の当たりにした。
『架線障害で電車が止まっている?』
駅員の説明では1時間後に運転再開予定
との事だ。
雨風が強くて駅からは出られない。
藤波係長は会社に電話をして
工場のレスキューが成功した事と
電車が止まっていて帰りが
遅くなる事を会社に説明をしている。
ここは大人しく電車が動くのを待つか?
立花はそう決めてベンチに座って
一眠りする事にした?
どのくらい寝たのだろう?
『立花、起きて?』
藤波係長に揺り起こされて目覚めると
『立花、マズい事になったよ』と
係長が困った顔をして説明を始める。
電車の電線を塞いでいた樹木が
更に一ヶ所増えたとの事で
今日の電車は全て運休が決まった。
『東京に帰れない』
緊急事態での出張だったので
背広のままだし着替えなど準備してない。
タクシー乗り場に向かうが一台も
停まっていない。
さっき利用したタクシー会社に電話を
して配車を頼むが
台風の影響でドライバーの安全を確保
出来ないので休業にしたとの事だ。
どおりで、さっきまで電車を待っていた
多くの人々がいない訳だ。
さっきの人達は何処に行った?
電車は動かない
今日は帰れない
ホテルに向かったんだ。
藤波係長と立花は暴風雨の中
ホテルを何軒も回ったが
スタートが遅かったようで
何処も満室だった。
ビショ濡れになりながら回った
ボロボロのビジネスホテル
そこで2部屋は取れないが1室だけ
空いておりベッドはダブルサイズなので
2人は泊まれるとの事だ。
台風が激しい中、野宿は出来ないし
やっと見つけた宿だ。
藤波係長に確認すると頷いたので
宿泊を頼む事にした。
『夕食、朝食はありません』
『大浴場は壊れているから部屋の
風呂を使ってください』
そこまで言った後、ホテルの受付は
立花の耳元に近づき
『避妊具は置いてませんから
近くのコンビニで買って下さい』と
囁いてきた。
『何、言っているんですか?』と
立花は驚いたが
雨で濡れたブラウスで黒のブラが
透けている
メガネをかけた女教師風の藤波係長は
その手の趣味の人にとっては
たまらないだろう。
『何だって?』
受付から離れていた藤波係長が
立花と受付の会話の内容を
聞きたがっているが
『避妊具はコンビニで買え』と
言われたとは言えない。
『食事はコンビニで買って下さい、との
事でした』
そう立花が説明すると
『そうだな、泊まる前提じゃないから
何も準備が無いな』
『荷物を置いたら、コンビニに行こう?』
藤波係長が提案してきた。
想定外の女性上司との同部屋での
一泊宿泊。
立花の事が気になっていた藤波係長は
『ラッキー』と
心の中でガッツポーズをしていた。




