副社長就任
エクシブハンター世界大会のニュースで
世界一斉のダウンロードが発生して
サ-バ-ダウンした翌日
オリファルコン本社では休日返上で
土曜日の午後に会議が行われていた。
猪木会長を筆頭に開発チ-ムも集まり
世界大会の開催に向けて
最終打ち合わせをしている。
『木曜日、金曜日だけで
500万ダウンロードを超えています』
『アイテム購入の課金も20億円を
突破してますので』
『最終的には世界大会開催までには
50億円は軽く達成出来ると思います』
担当部長の説明に頷く猪木会長
記者会見を含めて世界大会の経費は
15億円だったので
大会の運営はプラスと言って
間違いないだろう。
プレイ中の画面でのバグの修正確認も
終了していた。
会議の参加者はこの内容で会議を
終了しようとしていた。
『副社長から何かありますか?』
猪木会長に、そう聞かれた立花は
『副社長じゃないって』と前置きを
しながら喋り出す。
『お金がかかる話なんですけど
良いですか?』と猪木会長に
お伺いをすると
『どうぞ?』と了解を貰う。
『ダウンロード出来る国のYouTubeで
母国語でCMを流します』
『携帯ゲ-ムをする層の人達は
YouTubeを見ている人が多いと思います』
『記者会見のニュースが落ち着くと
ダウンロード数は落ち着くと思うので』
『認知度を浸透させるために世界大会の
開催中はしばらくCMを流したいです』
『開催前と開催中の波状攻撃で
エクシブハンターの世界大会を
強く印象付けたいのですが?』と
立花が発言する。
それを聞いた猪木会長は坂口さんを
チラッと見ると
『画像は絵色さんの素材を使えば
ナレ-ションの人だけ』
『その国の方に頼めば、すぐに対応できると
思います』
それを聞いた猪木会長は
『それでは、すぐに準備して下さい』と
言って指示を出した。
『まだ、ありそうですね?』と
立花を見ながら会長が微笑むと
『実現可能か?分からないのですが
何点かあります』と話し始めたのである。
通訳アプリの性能は、この数年で
格段に向上した。
日本製のソフトであるエクシブハンターが
世界中でヒットしているのは
プレイしている人が違和感を感じず
自国のゲ-ムだと思うほど
自国の言語で画面内の説明が翻訳されて
いるからである。
そのシステムはログインした時に
国名を選択する事でプレイヤ-の国籍を
判断して、その言語で
そのままプレイする事ができるからだ。
立花の提案はログインした選手が
自国での自分の順位が分かるシステムと
世界での順位を知れるシステムを作り
プレイせずに観客としてログインした人が
自国の選手でファンになった人を
登録出来て、常に観戦出来る
システムを追加するものだった。
観客が応援している選手の活躍を見て
応援する際に投げ銭システムでサポート
できるようにする。
選手は、その資金でアイテムを購入して
武装強化して上位を目指せる。
応援した選手が成長して戦っていき
自国内でのランキングと
世界でのランキングが分かれば
ゲ-ムをしない観覧者もオ-ナ-気分で
エクシブハンターの世界観を共有出来て
参戦したつもりで楽しめるのでは?
と言うものだった。
オリンピックなどでルールが分からない
競技であっても
自国の選手が出ていると、つい見てしまう
愛国心を狙ったものである。
YouTubeで事前に周知徹底していれば
今までゲ-ムに興味のなかった人も
気になり好奇心で見てくれるのでは?
その観覧者も、いつかプレイヤ-に
なってくれたら裾野が広がる。
『世界大会が終わってもエクシブハンターを
継続してプレイしてくれる可能性が
大きくなると思うのです』
これには会議に参加していた
オリファルコンの社員からも
『確かに盛り上がる』
『推しを応援したくなるよ』と
絶賛の声が多く聞けた。
その他にも立花のアイデアは発表されて
その全てが採用する事が決まった。
『副社長のアイデアはすごいですね』
『なんでウチの社員にならないんです』
と言う社員達の声を聞いて
猪木会長は微笑んでいる。
絵色女神のCM起用が強引過ぎたと
社員から反発が出ることを
猪木会長は心配していたが
結果、起用は大成功となり
女神の起用に立花が絡んでいる事を
薄々感じている社員も
今日の立花の提案力を知ったら
文句を言う人間は出ないだろう。
世界大会の発案者である立花に
今日の会議の参加を促していたのは
猪木会長だった。
『言い出しっぺですから、仕上げには
付き合って下さいよ』
『立花さんのお休みの土曜日に本社で
会議をしますから参加して下さい』
言い出しっぺか?
見届ける義務はあるよな?
会長に誘われて参加する事を決めてから
アイデアを温めていた。
元々約束していた会議だったので
立花も最終会議に参加をしたが
会議が終わったのを見て、そそくさと
帰り支度を始める。
その姿を見た猪木会長が
『この後、飲みに行きませんか?』と
立花を誘うが
昨夜の棚橋との深酒もあって
『昨日は友人と、飲んでいて
酒は遠慮したいです』と断ると
『でしたら、お茶にしましょう?』と
誘いの手を変えてきた。
絵色女神の事でお世話になっていた事もあり
無下に断る事も出来ない。
『でしたら、お茶で』と言って
猪木会長との、お茶会が決まった。
オリファルコン本社の会長室で
応接室に2人で座り
コ-ヒ-を飲みながら
まったりとしている。
『今日は女神さんはどちらですか?』と
立花に尋ねると
『新曲のレコーディングとテレビの
収録が3本入っているって
言ってましたよ』と
他人事のように立花が説明をする。
『立花さんの希望通りに売れっ子に
なったじゃないですか?』と
猪木会長が笑いながら言うが
立花は納得していない表情だ。
『忙しくなってきたみたいですけど
何を基準に売れたって言うんですかね?』
立花が哲学的な質問を会長にする。
『難しい質問ですね』
『でも、ある程度自分の中で設定した
目標に達したら』
『売れたと言っても
良いんじゃないですかね?』
『でも、CD売り上げ1位とかド-ム公演は
達成していないとすると』
『確かに、まだ売れたとは完全に
言えないのかもしれません』
自問自答した猪木会長も
答えは見つけられてないようだ。
すると立花は
『会長は、オリファルコンが
いつ売れたと実感しました?』と
今度は会長自身に質問をする。
質問された会長はコ-ヒ-を飲みながら
考えこみ
『売れたと言う表現が適切か、
分かりませんが』
『エクシブハンターのダウンロード数が
国内1位になった時』
『人生で、あの時ほど嬉しかった事は
ないですね』と言いながら目を細めた。
『自社の株式を東京証券取引所に
上場した時より嬉しかったんですか?』と
立花が企業家の夢である上場との
回答ではなかった事が意外だったので
質問すると
『確かに上場も嬉しかったですけど
あくまで、それは結果でした』
『初めて世の中に作品が認められた』
『自分が信じてきた道が
間違っていなかったと証明された事』
『ダウンロード数の国内1位を獲得した時に
それを実感しました』
会長は、その時を思い出したようで
熱く語っていたのであった。
更に会長の熱弁は止まらず
『現在は国内シェア1位ですが
あと3年以内には世界シェア1位を
奪取したいと思っています』と
野望を語る。
その話を聞いた立花は
『フ-』と深いため息をついたので
猪木会長が
『喋り過ぎましたか?』と
自分が原因だと思って立花に尋ねると
『違います』と
慌てて弁解をした。
『会長しかり、女神もですが
みんな目標と言うか夢が
あるじゃないですか?』
『俺には何にも夢が無いんです』と
寂しそうに呟いたのである。
『今の会社は好きですが、絶対に
入りたい会社だった訳じゃないし』
『仕事にやりがいは感じていますが
生活の為に働いている感じもします』
それを聞いた会長は
『でしたら、本気でオルファルコンの入社を
考えてくれないですか?』
そう提案してきたのであった。
『オリファルコンの入社ですか』
そう言って考えこむ立花
つい先日まではスカウトの話が出た瞬間に
立花は断っていたが
今日は拒否をしない立花に
猪木会長も手ごたえを感じたのか
『エクシブハンターの世界大会が
終わってからで結構です』
『副社長への就任の返事を
聞かせてください』
猪木会長の誘いに対して立花は
『考えさせてください』と
答えを保留したのであった。




