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さし飲み

金曜日の夜は会社員にとっては天国だ。


週末は仕事から開放されるので

彼女と遊ぶ者、家族サ-ビスをする者

会社の同僚と飲みに行く者も多い。


立花は会社の先輩の送別会すら

断ってきたほど

飲み会には縁遠い男だった。


それが棚橋とサシ飲みをする。


棚橋も立花と知り合って5年で

初めての事だろう?


渋谷の個室焼き鳥屋を棚橋が予約しており

立花が遅れて店に到着して飲みが始まる。


ビ-ルの中ジョッキを持って乾杯をした。


焼き鳥の盛り合わせや枝豆が

ところ狭しと2人のテ-ブルに並ぶ。


『立花と飲むのは初めてだから

緊張するよ』と棚橋がおどけている。


『確かに棚橋との付き合いは長いけど

こうやって飲むのは初めてだな』と

立花も笑って答えた。


『何で、今日は飲みに誘ったのを

受けてくれたんだ?』

棚橋が、そう質問すると


『棚橋には感謝しているからかな?』

枝豆をつまみながら立花が説明すると


『俺に感謝?』と

言われた棚橋がビックリしている。


『たぶん、お前がチョッカイを

出してくれていなかったら』

『俺は会社での居場所が無くて

今頃は会社を辞めていたかもな?』と

説明をしだしたのだ。


『先週のナンシ-騒動も

俺を社内のみんなにアピールする為に

大騒ぎしてくれていたんだろ?』


『俺が自分から、みんなの輪になかなか

入っていかないから』


『むりして俺のことを会社内で

宣伝してくれている事が分かるから

いつも感謝しているよ』と

嬉しそうに言ってきたのである。


それは事実であった。


他人との関わりを持たない立花の事を

知らない人物は


自分勝手だとか、キモいと言ったり

機械みたいで怖いと言っていたのを

棚橋は必死にフォローしていた。


ワザと大きな声で立花との話を

フロアの他の人間に聞こえるように

大袈裟に騒ぐことで他の人にも

立花の事を情報発信していたのだ。


棚橋は意図的にしてきた事だが

立花に頼まれていた訳ではなかったので

あえて本人には説明はしていなかった。


だが立花は分かってくれていたんだ。


そう感じた時に棚橋は言葉に詰まって

涙ぐんでいる。


それは立花が自分の行動に感謝して

いてくれた事の喜びと


そんな良い奴を、これから裏切る事への

後悔への念であった。


『なんか今日の棚橋は変だな?』

辛気臭い棚橋の仕草に立花が突っ込むと


『いつもと変わらないよ』と

作り笑いを見せて平静を装う。


そこからは世間話や仕事の話をして

酒のピッチも上がっていき


『そういえば例の彼女は、金曜日だけど

今日は、ほっといて大丈夫なのか?』と

棚橋が聞いてくる。


恋人同士なら金曜日からお泊まりで

土曜日を朝から一緒に遊ぶ事も

考えられるので


彼女に怒られないか?

心配をして聞いていたのだ。


『今日も、明日も向こうは仕事だから

会う予定は元々ないから平気だよ』と

立花が説明をする。


『土曜日も仕事って彼女の仕事は

美容師とか?アパレルなのか?』と

棚橋が質問すると


『まぁ、そんなところかな』と

笑って誤魔化した。


『そもそも、どこで知り合ったんだよ

あんな可愛い子と?』と

棚橋の事情聴取は続いていくが


『まぁ、そのうち話すよ』と言って

立花は、はぐらかす。


『俺は会わせて、貰えないのか?』

『立花の事を今後も、お願いしますって

会ってお願いしたいんだけどな?』と

棚橋が本心から、そう言うが


『気持ちは嬉しいけど』

『俺も次は、いつ会えるか決まっていない

感じだから』

『タイミングが合えば、みたいな?』

『まぁ、期待しないで待っていてくれ』と

言って立花が笑った。


その話を聞いて棚橋の顔つきが曇り

『彼女なのに、いつ会えるか分からないって』

『お前その子に騙されていないか?』と

心配そうに聞いてきたので


立花は笑いながら

『もしかして騙されているかもな?』と

答えたのである。


『お前、金とか貢いでいないよな?』

立花の言葉を聞いて更に心配になった

棚橋が確認すると


『ごめん冗談だよ』

『彼女は、そんな子じゃないから』と

言って説明するが


『本当に大丈夫なのか?』と

棚橋は不安そうな顔をする。


『立花が最近、明るくなったのは

その子の影響なのは分かるんだが』


『もし、別れたら』と言って

そこまで言って黙ってしまった。


最近の立花は明るく社交的になり

棚橋が何もしなくても会社の輪に入っており


みんなとコミニケーションが取れている。


出来れば昔の立花には戻って欲しくない。


棚橋の方を見た立花は

『心配してくれて、ありがとうな』

『でも、俺は彼女と結婚するつもりだから

安心して欲しいんだよ』と

立花が言った事で

棚橋が更に不安になった。


モテなかった男に突然、可愛い彼女が出来て

結婚をチラつかせて金をせびり


結局は騙されて逃げられる話は

よく聞く話だからだ。


いまだ棚橋の顔が納得してない事を

雰囲気で察した立花は


『彼女が遊び人で、俺が結婚詐欺に

騙されていると思っているのか?』


『彼女に貢ぐ金が俺には無いから』と

言って立花は笑い飛ばした。


棚橋は慶子に飲み会に行く前に指示を

受けていた。


立花の彼女の個人情報である

氏名、住所、年齢、職業、付き合いの深さ

別れる可能性、等を


酒のチカラを使って聞き出してこい、と。


だが、そんな指示とは関係なく

立花の友人として彼の事を心配して

真実を知りたがっていたのである。


『付き合って日が浅いのに結婚の話が

出ているって時点でヤバいだろ?』と

棚橋が言うと


『結婚の話は成り行きで俺がしたら

向こうがその気になって』


『既に奥さん気取りなんだ』と

少し照れて説明するが


棚橋は納得せずに

『具体的にいつ結婚予定で』

『向こうの両親には会ったりしたのか?』と

結婚の意思が正式なモノか問いただす。


『特に決まっていないし』

『両親には会っていない』と

立花が困った顔で答えると


『ほら、見ろ』

『話がおかしいじゃないか』

『彼女は親に会わせたくない理由とか

何か秘密があるんだよ』と

立花に真剣に言うと


個室なのに左右をキョロキョロと見て

周りに誰もいない事を再確認した立花が

棚橋の耳元に近づき


『彼女、まだ17歳なんだよ』と

親に会えない理由を白状をしたのであった。


『はぁ?』


棚橋がビックリして聞き返してきた。


『だから言いたくなかったんだよ』と

立花がバツの悪そうな顔をする。


『お前だって、17歳って犯罪だろ?』

棚橋が笑いながら言うと


『だから手を出していない』

『いや、ちょっとはしたかな?』

『でも、最後まではしてない』と

しどろもどろになって立花が説明する。


『だって彼女は17歳で結婚する気だよな?』

『それなのに、いつ会えるか分からない?』

棚橋がいつもの、棚橋に戻って質問を

している。


『17歳でも、遊び人は多いから』

『それこそ立花が遊ばれているかもな?』と

少しイジワルな口調で聞くと


立花が少し心配そうな顔になる。

昨夜、裸で女神と抱き合っていたときに

震えていた彼女は演技だったのか?


いやいや、女神に限ってそんな事はない。


『アイツは大丈夫だよ』

立花は自分自信を納得させるように言うと


ビ-ルを飲み過ぎたのでトイレにも

行きたくなり

『ちょっとトイレに行ってくる』と言って

逃げるようにトイレに向かった。


心配ではあるが立花が、あそこまで

自信を持って言うなら

大丈夫だろう


棚橋が、1人でそう納得していた時に


棚橋の携帯に

『今、クスリを入れなさい』と

慶子からLINEが入って棚橋は

一瞬忘れていた


慶子の奴隷になっていた事を思いだす。


目を閉じて考えた後に慶子を渡された

クスリを立花の飲み物に入れた。


そして、数分後

トイレから戻ってきた立花は

再び棚橋と話し始める。


最初は将来の自分の夢だった筈だが

いつしか棚橋は自分が会社を

辞める時の事を語りだしたのである。


会社を辞めてラ-メン屋を開く夢がある。

だから、近いうちに会社を辞める。


今の立花なら、自分がいなくなっても

会社の連中と上手にやっていけるだろう。


だから思い残す事はない。


立花も、その話を棚橋がし始めた時は

10年後や20年後くらいの

将来の夢的くらいのイメージで

聞いていたのだが


棚橋のクチぶりでは今月中に

辞表を出して退職しそうな雰囲気で

喋っていたので


『それって、すぐにじゃないよな?』と

棚橋に聞くと


『じつわ、俺は』と棚橋が言い出した時に


『お疲れ様です』

『ここだったんですね』と言いながら

襖が開いて

武藤慶子が2人で飲んでいる個室に

入ってきたのかあった。



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