潜入、千歳烏山大作戦 3
延長戦を勝ち取った彼女は、今日が、いかに
目まぐるしい一日だったかを、
身振り手振りを交えて立花に説明しだした。
人生で初めての大金を獲得した契約書
財布の中身が、いつもピンチな彼女に
1000万円は桁が違い過ぎて
想像が出来ないそうだ。
振り込まれるのは2ケ月後なので
その時には立花の欲しい物を何でも
買ってくれる、と宣言したが
立花に確定申告の必要があって
半分以上は税金で持っていかれる事を聞き
泣きそうな顔になってしまった。
立花に好きな物を買ってあげた後は
実家に残りを送ってあげたかったそうだ。
だが立花に残った額でも、彼女が毎月
貰っている額の30回分が一気に
手元に入る説明を聞いて
たちまち元気になって
立花に何が欲しいか?を改めて確認する。
CM出演などの大型契約に驚いていた。
そこに突然の佐山サトシが権太坂36に
楽曲提供をするだけじゃなく
センターに彼女を起用するのが
楽曲提供の条件だと言っていると聞き
朝からのCM出演を含めて
全部ドッキリじゃないか?と思っていた。
だが佐山サトシ本人が登場して
これはドッキリじゃないんだ、
何が起きているんだろう?と思っていたが
佐山がGODの名前を出してきた時に
『全部、分かったんです』
『これは立花さんがしてくれた事だって』
そう話している彼女は、立花と二人ベッドに
寄りかかった状態で床に座っており
彼の肩に頭を持たれかけている。
彼女の話を黙って聞いていた立花が
『女神ちゃんの為に何かをしてあげたい
そう考えた時に』
『知り合いに頼んでみよう、って思い』
『会長とフランキーに頼んだら』
『こんなに大騒ぎになりました』と
テヘペロ顔で立花が説明をしていたが
彼女が突然
『女神ちゃんって呼ぶのを
変えて貰えませんか?』と
言ってきたのであった。
『女神ちゃんって呼ばれるのイヤだった?』
立花に、そう聞かれた彼女は
『なんか他人行儀な気がします』
『女神って呼び捨てで呼んで下さい』と
立花に頼んできたのである。
『アタシはもう、あなたのモノです』
『立花さんが、アタシをいらない』
『そう思うまで、一緒にいたいんです』
そう言われた立花は
『わかりました』
『これからは女神と呼びます』
そう、彼女に告げると、
絵色女神は笑顔を見せて
立花に抱きついてきたのであった。
『何の取り柄もないアタシに』
『シンデレラみたいな夢を見させてくれた事を、本当に感謝しています』
『いつも何か御礼や、お返しをしないと、
いけないと思っているのですが』
『何も出来ていなくて、すいません』
そう言ってきた彼女に
『女神、覚えておいて』
『好きな人に何かをしてあげたい』
『その行為に対価や御礼を求めない事が、
愛情なんだよ』
『だから俺は、女神に何かを求めない』
立花は諭すように彼女に語りかけてきた。
抱きしめられたまま、そう言われた彼女が
『ベッドに上がりたいです』と
立花にお願いをする。
一緒に立ち上がり、立花のベッドより
一回り大きなセミダブルベッドに2人は寝て
互いに見つめ合う形で向き合う。
『立花さんに聞きたい事があります』
向き合ったまま立花の首の後ろに
両手を回した彼女が
『なんでキスはしてくれるのに』
『エッチは、お誕生日までダメなんですか?』と質問をしてくる。
それを聞いた立花は、誕生日まで考える時間をくれ、と頼んでいたのであり
彼女の誕生日にエッチをすると宣言したつもりはなかった。
だが、この雰囲気で、そこを説明するのも
変だと考えて、そこには触れず
『キスは外国じゃ挨拶みたいなもんだろ?』と、彼女が以前言っていた
ロシア人が北海道でハグしている発言を
引き合いに出して説明すると
むくれた顔になり
『恋人同士のキスがしたいです』と言って
目を閉じて、突然立花にキスをしてきたのである。
中学生のキスが軽く唇が触れ合うモノなら
彼女がしたのは唇を押し付け、こすり付けるような大人のモノだった。
ゆっくりと立花から離れる彼女を
見つめている立花が
『恋人同士のキスは出来た?』と聞くと
『出来ました』と彼女が答える。
延長タイムは、とっくに終了しているが、
今はそれを言い出す雰囲気ではない。
『いつもアタシがお願いしたり』
『何かをしてもらうばかりなので』
『立花さんがアタシに何かを、
お願いしてください』と言ってきたが
言われても特段何かを頼みたいという
欲求が立花には無かったので
『さっきも言ったけど、何かを期待して
女神にしている訳じゃないから』
『大丈夫だよ、お願いは無いから』と立花が
答えると
絵色女神はムクれて
ご機嫌が斜めになっていった。
『ドラマやアニメだとひざ枕をしたいとか』
『男の子が色っぽいリクエストを女の子に
してくるじゃないですか?』
『アタシが相手じゃ、
そういう気持ちにならないんですか?』
そう言って、すねたようになる。
ベッドの上で横になり、彼女と
向き合っていた立花は笑みを浮かべて
『今は女神が横にいてくれるだけで
幸せなんだよ』
『だから、怒らないで』と
頭を撫でて、彼女をたしなめた。
『立花さんは今だって、アタシの変化に
全然気付いていません』と言って
彼女は機嫌を直そうとはしない。
そう言われた立花は絵色女神の頭の先から
足元まで見渡すが、変化を見つけられない。
赤いチェック柄のパジャマ上下で
風呂上がりの濡れた髪を後ろで一本に
縛っている髪型なので
『髪形かな?』と
自信なさげに立花が質問すると
『ほら、やっぱり分かっていない』と
おかんむりとなった。
女の子の変化に気付かないのは、
流石にマズいと思ったのか?
立花は彼女のご機嫌を取るように
『答えをおしえて?』と彼女に聞くと
『手を貸してください』と言って
立花の手を取って、
自分の胸を触らせたのである。
『ムニュ』
条件反射で立花も軽く揉んでしまったが
すぐに変化がわかった。
『女神ちゃん、ブラは?』
立花が、そう質問すると
『着けていません』と言って
立花の手を持って
自分の胸に押し付けたままにしている。
『すぐに分かってくれるかな?と
思っていたのに』と彼女は言ってきたが
外見では、まず分からないだろう?
抱きつかれた時に、彼女が密着した時の
柔らかさで多少違和感を立花は感じていた。
さっき抱きついてきた時の感触が
ブラをしている時のピシッとした
感じではなくフワッとした感触だったのは
事実だが
まさかノ-ブラだとは思わなかった。
『何で、ブラを着けていないの?』
立花に、そう聞かれた彼女は
『今日は、立花さんがその気になってくれるかな?と思って』
『パンツも履いていません』と
彼女が更なるタネ明かしをしたのだ。
赤いチェック柄のパジャマの下は
何も着けていないノ-ブラノ-パンだと
告白をしてきたのだ。
『それはダメだろ?』と
立花が注意をするが
『何でダメなんですか?』と
彼女は食い下がる。
『この前、胸を触った時に暴走しちゃったじゃないか』と言って
前回の胸タッチでスィッチが入ってしまった時を思い出し
彼女の手を振り払い、胸から手を離した。
すると
『何で、暴走しちゃダメなんですか?』と
彼女は悲しそうな表情をして聞いてきた。
『アタシの人生で、この先』
『立花さん以上に影響を与える人は』
『現れないと思っていて、
すごく不安なんです』と語ってきた。
『何が不安なの?』
彼女の頭を撫でながら、安心させるようにして立花が質問すると
『アタシの前から立花さんが居なくなったら、って考えたら怖くなったんです』と
心境を話し始めたのである。
『新曲のセンターに選ばれた話の時に』
『仲の良かった美桜ちゃんも』
『アタシに一瞬、冷たくなったんです』
『先輩達も何で、あの子なの?って声が聞こえてきたんです』
『急に大きな仕事が、沢山決まって』
『ビックリしたけど嬉しかった』
『立花さんがアタシの為にしてくれた』
『でも、そこで気付いたんです』
『番組のコ-ナ-で活躍出来たのも』
『ネットニュースに出れたのも』
『CMも新曲も、立花さんがいなかったら?』
『アタシじゃなくても良かったんじゃないかな?』
『立花さんがアタシの恋人だから、してくれた事なのかな?』
『でも何回もエッチ出来るタイミングはあったのに立花さんはしてくれなかった』
『誕生日まで待っても、してくれないんじゃないか?』
『男の人はエッチな事の為に犯罪までするのに、立花さんはアタシに見向きもしてくれない』
『立花さんは、アタシから離れたいからエッチをしたくないんじゃないか?』
『アタシは恋人じゃない』
そう言った後に泣き出してしまったのである。
それは彼女が今日一日、緊張の連続で
プレッシャーに押し潰されそうだった感情が
爆発してしまっての光景だった。
泣きじゃくっている彼女に
『女神は大きな勘違いをしてるよ』と
優しく語りかけた。
その声に反応した彼女は泣き顔を上げ
立花の瞳を見つめる。
『俺は次に付き合う人は結婚する相手にしたい、って話をしたのは覚えている?』
立花にそう聞かれた彼女は、小さく頷く。
『俺はオリファルコンの猪木会長に』
『会社に入ったら10億円を払うって言われた時も断ってきたんだ』
初めて聞く立花の話と、その金額に驚いて彼女が泣き止んだ。
『他人と関わらずに、ひっそりと』
『自由に生きていきたいと思っていたから』
『でも今回初めて猪木会長にお願いをした』
『絵色女神を使ってください、って』
『猪木会長も俺と女神が付き合っている事を知っているよ』
彼女は、その話も初めて聞いた。
『佐山さんも知っているよ俺達の事』
そう言われて彼女も思い出した
『立花さんによろしく』と言われた事を。
『ここまで知り合いにオ-プンにして』
『絵色女神は俺の1番大事な人って』
『知り合いは全員知っているよ』
『もう一度思い出して』
『俺は次に付き合う人と結婚したいって言った』
『悔いが残らないくらいなアイドルになって、俺の奥さんになるのと』
『全くアイドルで売れなくて、俺と結婚するのとドッチが良い?』と
立花に質問をされているが、どちらも
立花の奥さんになっている話に
彼女は感動しており
答える事が出来なかった。
『別れる女の為に終電車に乗って』
『千歳烏山まで、わざわざ来ないよ』
立花にそこまで説明をされて
彼女が、また暴走してしまった事を
自分で猛省をしている。
『心配しなくても俺はメチャエッチだから』
立花にそう言われた彼女は嬉しくなり
パジャマのボタンを外すそうとして
『じゃあ今』と言ったところで
立花に慌てて止められた。
時間は深夜3時、ここから一戦を交えたら
2人とも寝不足で次の日の仕事を迎える。
『CM撮影を寝不足で不細工な顔で撮るか?』と聞かれた彼女は首を大きく振って否定をした。
『俺の奥さんになる気ならトップアイドルになって貰わないと』立花がそう笑いながら言うと
『頑張ってトップアイドルになります』と
力強く宣言してくる。
『俺も明日、仕事だから』
『そろそろ帰るよ』と立花が告げると
彼女も安心をしたのか
『今日はアタシのワガママで来てもらって』
『本当にすいませんでした』と頭を下げて
立花を見送る事にした。
彼女のマンションを出てタクシーに
乗り込んだ立花は
家に帰ったら、どのくらい寝られるか?より
裸パジャマを思い出して興奮しており
彼女に断っておきながら
おかわりを頼もうか?
真剣に悩んでいた。




