トップアイドル誕生 3
コンサートのリハーサルでサニーミュージックの本社ビルに着いた絵色女神は、すぐにマネージャーに呼ばれて別室へと連れていかれた。
スト-カ-事件の時に来た部屋とは別の部屋に通されると36グループのプロデュ-サ-の山田恵一が既に座って待っている。
『おはようございます』
山田に一礼をした絵色女神に
『挨拶は良いから、早く座って』と
彼は打ち合わせをすぐに始めようとしていた。
会議室のような部屋に折り畳み式の机と、椅子がある場所で
プロデュ-サ-が上手で、下手に絵色女神とマネージャーが座り、向かい合う形で打ち合わせが始まる。
『早速だけど、女神に上場企業のオリファルコン株式会社からオファーが入った』
『オリファルコンの専属イメージガ-ルと、全国放映のCMの依頼』
『それとオリファルコンが発行している雑誌の年間契約だ』
矢継ぎ早にプロデュ-サ-が説明をしたが、絵色女神は事態を飲み込めていない。
『女神ちゃん、すごいじゃない』
『超大型契約よ』
マネージャーさんは立ち上がって大喜びをしているが、彼女は状況が全く理解出来ておらず
『はぁ?』と答えて、まるで他人事だ。
『金曜日の番組を見て、女神にオファーをしてくれたそうだ』
『あと、権太坂ランニング中の番組スポンサーにもなってくれて先方さんからの指名で』
『番組内で女神がゲ-ムを紹介するコ-ナ-も始まる事になった』と
続けざまに説明を続ける。
『女神ちゃん、良かったわね』
マネージャーさんが彼女の手を握って飛び跳ねているが
彼女の反応は驚くほど薄い。
『オリファルコンを知らないのか?』
プロデュ-サ-に聞かれた彼女は
『すいません、わかりません』と、素直に答える。
そこで山田プロデュ-サ-が説明を始めた。
日本の会社で有名な会社は東京証券取引所に登録している企業が多い。
登録している会社は資本金や財務力や売り上げ額で3段階に区別されているが
オリファルコン株式会社は最高位ランクの企業であった。
『何で、そのオリファルコンさんがアタシにオファーをしてきたんですか?』
まだ理解していない絵色女神が質問すると
『お前が番組の中で対戦した、何とかハンターの会社じゃないか?』と
オリファルコンがエクシブハンターの開発元だと説明をしてくれる。
『広告代理店からの話だと、番組を見たオリファルコンの会長が、女神を気に入って採用を決めたらしいぞ』と笑いながら説明をした。
オリファルコンが自分にオファーをした理由を聞いて、やっと喜びが沸いてきたようで
『本当にCM出演ですか?』と
プロデュ-サ-に確認すると
『それだけじゃないよ』
『イメージガ-ルと雑誌の1年間契約』
『番組のレギュラーコ-ナ-』
『その契約を全部、お前指名で来たんだよ』
そう説明されて
『ヤッタ〜』
『嬉し過ぎ〜』と歓喜の声で大喜びをする。
『CMも関東ローカルじゃなく、全国放送を1年間の契約だぞ』
『滅多に来ない、大型案件だよ』
プロデュ-サ-が彼女の喜びを増やすように、囃し立てると
『全国って事は、北海道でも放送されるんですよね?』と絵色女神が確認すると
『当たり前だろ、北海道から沖縄まで』
『テレビから、お前のCMが流れるんだよ』と
ドヤ顔で説明をしてくる。
自分が音楽番組に出演する時に親に報告をしてきていたが、そんな出演連絡をしなくても
テレビをつけたら自分のCMが流れる日を想像すら、してこなかった。
権太坂でCM出演しているメンバーがいなかったので、自分に話が来るのは
夢のまた夢だと思いこんでいたのだ。
『今日、印鑑は持って来たよな?』
山田プロデュ-サ-に聞かれた彼女は
『はい』と答え、持参した印鑑を机の上に出した。
マネージャーさんに言われるまま、印鑑を持参したが理由は聞いていない
『印鑑は何に使うんですか?』
山田プロデュ-サ-に、そう質問すると
『契約書に決まっているだろ』と
笑いながら何枚もの紙を机に並べる。
『初めてのCM出演だから、分からないか?』
プロデュ-サ-が、そう言って説明をしてくれた。
オリファルコン社と契約している期間は同業他社と契約行為は出来ず、ゲ-ムに関してはその会社以外のCMには出演出来ない。
それ以外も会社のイメージダウンになる行為や活動は厳禁で、違反した場合は違約金が発生する。
広告代理店が準備した出演契約書に自署で名前を書いて印鑑を押す事で契約が成立する。
CMに出演するタレントは、みんな契約を交わしているので特別な事ではない。
絵色女神は、その話を聞いて立花との関係がバレた時にイメージダウンとなって違約金の対象になる事を危惧した。
大丈夫かな?
そんな不安から、考える時間が欲しくなり
『いつまでに決めれは良いんですか?』と
プロデュ-サ-に質問すると
『何を言っているんだ?』
『今すぐサインするに決まっているだろ』と、一蹴されてしまう。
『タレントでCM出演を受けて、断る奴なんて聞いた事ないよ』
『権太坂の先輩連中は何年も活動しているけど、CMに出たくても出れないんだぞ』
『それを、今すぐ決めないで、どうするんだ』
そう凄まれて何も喋れなくなってしまった。
その雰囲気を感じたマネージャーが
『山田さん、言葉が強すぎです』
『初めての事で、女神ちゃんは戸惑っているだけじゃないですか』
と注意をしてくる。
実際に話の規模が大き過ぎていてキャパオーバーを起こしていたのも事実であった。
『最後の紙には出演料も書いてあるけど、数ケ月後には女神の銀行口座に1000万円が入る』
『ウチの会社も取り分を貰って、女神の分としてその金額が取り分だ』と説明を受ける。
1000万円?
毎月貰っている金額の何倍だろ?
実家に仕送りをしたら、どれだけ喜ばれるだろう。
何より、今回のキッカケを作ってくれた立花に何かを買ってあげられる。
何も出来ない自分を温かい目で見守っていてくれた立花に、これで恩返しが出来る。
違約金の発生の事が頭から消えてしまうほどの大金の話を聞いて
『お願いします』
そう言って彼女は、サインを書く場所の説明を受け始めたのであった。




