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師匠と弟子

2人でおしゃべりをしている内に、

時間はあっという間に『権太坂ランニング中』の放送時間になった。


関東地方のテレビ局で1番マイナ-な放送局であるテレビ関東で深夜に放送されている番組は


本来なら通販番組の時間帯をレコード会社が買い取った枠で


権太坂のファン以外は見ないだろう、と言う番組だが唯一のレギュラー番組であり


インターネット放送ではなく地上波放送の部分が他のアイドルとは一線を引いている部分で大事な番組であった。


放送が始まると

『女神ちゃんの出番は、前半?後半?どっちなの?』と立花が質問するが


『アタシも放送が今日だって聞いたのも、つい最近なんで』

『全然、知らされていないんです』と

少し困ったように答える。


2人が見守る中、番組が始まりオ-プニングでメンバー全員が次々と映される。


最後の方に絵色女神が別の子と顔をくっつけて笑顔で手を振っているシ-ンが流れた。


『今のが美桜ちゃんです』と

現役メンバーの解説が入る。


クチには出さなかったが

『女神ちゃんの方が100倍可愛いじゃん』と

立花は思っていた。


名前をギリギリ知っている、お笑い芸人が司会進行をしてメンバーを軽くいじり、すぐにCMになった。


横にいる絵色女神をチラッと見たが、全く緊張している様子はない。


レコード会社が番組スポンサーなので、CMは全て権太坂36、もしくは談合坂36のCDや DVDの宣伝だが

『これ次の新曲です』

『振り付けが大変だったんです』と

解説が入って、CM中でも気を抜くヒマはない。


CMが開けて、拍手で番組が再開すると司会の芸人が

『今ちまたで、流行っているゲ-ムが、あると聞きましたが』と、話をふると


『5期生の絵色女神です』と

少し緊張した表情で絵色女神が映し出されたのである。


『女神ちゃんアップだよ』

嬉しくて立花が彼女に話しかけるが、彼女は真剣な眼差しで番組に釘付けだ。


自分はどう映っているか?

上手く喋れているか?

進行を邪魔していないか?


自分自身の事だが一挙手一投足を見逃さないようにしているようだ。


ゲ-ムの説明や遊び方を彼女が説明しており、確かに大活躍と言っても過言ではない。


番組がどんどん進んで行った時、絵色女神の顔が一瞬曇ったように見えた。


『どうかした?』

立花が彼女に聞くと


『今噛んじゃったんです』と

彼女が悔しそうに呟く。


『全然、気にならなかったよ』

立花は、そう彼女に言ったが、彼女自身は納得していないようだった。


『じゃあ、ココからエクシブハンター芸人のおぽんこぽん君にも入って貰います』と言って

司会が見た事もない

売れていない芸人を番組に招き入れて、番組は進行していく。


『じゃあ、ココで5期生の女神ちゃんと2期生の佳奈ちゃんで』

『対決戦をやって貰いましょう?』

司会者が、そう説明すると画面が半分になり


右半分に絵色女神とゲ-ム画面、左半分には2期生の子の顔とゲ-ム画面に切替わり


女の子同士のエクシブハンター対決が始まった。


だが、始まってすぐに棍棒を持った絵色女神が、先輩のキャラクターをボコボコにして決着がついてしまう。


『女神ちゃん上手過ぎ』

エクシブハンター芸人がゲ-ム解説をしながら感嘆していると


すぐに負けた先輩が

『女神、うますぎだよ』

『レベルいくつなの?』と聞いてきたので


『レベル40くらいです』と

絵色女神が答える。


『え〜、それじゃ勝てる訳ないよ』と

先輩メンバーがポ-ズでその場で暴れて、番組が盛り上がっている。


立花がチラッと彼女を見ると、嬉しそうな顔はしておらず


先輩のリアクションを、頷きながら見ていた。


司会者が

『おぽんが戦っても勝てないんじゃない?』と

バラエティに、よくある


その場の勢いで予定外の戦いが組まれる流れとなり

『おぽんはレベルは、どのくらいなの?』と聞かれて


『俺はレベル120ですから、勝負にならないですよ』と

余裕を持って受け答えている。


『女神、こんな奴に負けるなよ』と

司会者が、けしかけて


スタジオにいる他の権太坂メンバーも

『女神、頑張って〜』とか

『女神、やっつけろ〜』と

声援をかけて番組としては盛り上がってきた。


テレビ画面が左右に分割されて、ゲ-ムスタート


お笑いの仕事が無くエクシブハンターだけを、やって来たと思われる芸人は、やはり上手く


絵色女神のキャラクターは追い詰められてしまって、絶体絶命


スタジオも

『女神逃げて〜』や

『頑張れ、女神』の声援で盛り上がる。


『エクシブハンターじゃ負ける訳には、いかないんですよ』

そう言って芸人が、トドメを刺そうとした時


絵色女神のキャラクターが、芸人のキャラクターの横を通り過ぎ、間一髪セ-フ


『よく逃げた、女神』と番組も盛り上がり、

立花も真剣に画面に見入っている。


逃げた絵色女神のキャラクターは走って、岩の前に到着


持っていた刀で岩を叩くと星が現れて絵色女神のキャラクターを包んだ。


『何これ?』

初めて見る光景にエクシブハンター芸人が驚いており


『女神のキャラ、光に包まれている』

権太坂メンバーが、そう呟いたように


絵色女神のキャラクターは光の妖精のようになって、芸人のキャラクターの前に戻って


『動けない』

『何だ、これ?』と騒いでいる芸人のキャラクターを彼女が倒して


勝者 絵色女神と画面に大きなテロップが出て彼女の勝利で終わった。


だが

『ちょっと待って、あんな技は見た事ない』と

芸人が騒ぎだして


画面上に『審議』の文字が大きくテロップで出てくる。


司会者が

『おぽん、女神の光ったのって見た事ないの?』と聞くと


『俺、エクシブハンターの公式ガイドブックを2冊持っていますけど見た事も聞いた事もないです』と大騒ぎしていた。


『何なの、アレ?』

『あんなの卑怯だよ〜』と

芸人は、ここが一番の自分の見せ場だ、的に騒いでいる。


ここで司会者が

『女神、おぽんが見た事無いって、うるさいんだけど』

『この技って、女神が作った技なの?』

そう聞かれた彼女が

『教えて貰いました』と笑顔で答えた。


『誰に教えてもらったの?』

司会者に続けて聞かれた彼女は

『GODさんです』と答えると


エクシブハンター芸人が、すぐに

『GODさんって、あのGODさん?』と

彼女に確認する。


『はい、あのGODさんです』と

絵色女神が返答すると


『え〜〜〜?』と

芸人が大きなリアクションで驚き、更に大騒ぎをしてみせた。


『ちょっと、そこだけで盛り上がらないでコッチにも教えて頂戴』

『GODさんって誰なの?』と

司会者が聞くと


『エクシブハンターのランキング世界一位の伝説プレイヤ-です』と発表してスタジオが


『え〜〜〜?』と声を出して騒然となる。


『でも、それなら納得だ』

『GODさんしか知らない技って実在するんだ』と

エクシブハンター芸人が驚いている。


絵色女神がチラッと、立花を見るとクチを開けたまま固まっていた。


『立花さん、どうしました?』と彼女が聞くと


『俺のこと、喋っちゃたったの?』と

声を震わせて彼女に確認すると


『喋っちゃダメでしたか?』と

不安そうに聞いてくる。


モブとして人生を終わらせる為に、ひっそりとゲ-ムを楽しんでいたので


立花としては華やかなゲ-ム業界の表舞台を避けてきた。


だが絵色女神に他言無用とクチ止めをしていなかったのは自分だ。


彼女を責める訳にはいかないし、元々責める気など無かった。


『大丈夫だよ、でも』

『俺の本名は喋ってないよね?』と

立花が不安そうに聞くと


『もちろん立花さんの名前は出してません』と

彼女が胸を張って答えてくる。


するとテレビ画面から

『じゃあ女神ちゃんは、GODさんの弟子になったの?』と、芸人の驚いた声が飛び込んでくる。


どうやら、直接会わずにリモートで技を伝授してもらって、そのまま弟子となったと説明したようだ。


『俺もGODさんの弟子になりたい』と

騒いでいるエクシブハンター芸人をスタジオのメンバーは見て笑っていた時に


画面がスタジオから、超高層ビルの全景に切り替わる。


番組ではエクシブハンターの開発、配信元である『オリファルコン株式会社』に訪問して取材をしていた。


『アタシ、これ知らないです』と

彼女が呟く。


番組の収録が終わった後にスタッフが、急遽開発会社に取材したようだ。


番組スタッフが持参した、絵色女神の技を開発スタッフに見て貰うと

『初めて見る技ですね』と笑いながら解説している。


『GODさんに教えてもらったと、権太坂のメンバーが言っているのですが本当でしょうか?』と

スタッフが開発元に鑑定依頼をしており、疑っているような映像だ。


『本当も何も、ここに本人がいるんだよ』と、

立花の腕に自分の手を絡めて甘えたような格好をする彼女


番組では開発スタッフが

『私も初めて見た技ですけど、たぶん本当でしょうね』

『私もGODさんには数回しか会った事がないんですけど』

『ウチの会長と親しげに話しをされていたので』

『まだ会長とGODさんしか知らない技が、あるんじゃないですか?』と説明した瞬間


画面に『本当』と大きなテロップが出て、番組はエンディングロ-ルが流れ始める。


『立花さん、今の人を知っているんですか?』と絵色女神が聞くと


『うん、開発の木村さんだよ』

『あんまり余計な事を言わないで欲しいんだけど』と珍しく不機嫌な立花だ。


やがて番組は権太坂のメンバー全景が手を振って終了した。


『どうでした?』

『アタシ、上手に出来ていましたか?』

彼女は立花に感想を求めている。


『ゲ-ムの説明も良かったし』

『対戦モ-ドで勝利も素晴らしかったです』

『本当に100点じゃないかな?』と

立花が言うと


『ヤッタ〜』と

彼女は両手を上げて大喜びをしていた。


『1日で、あそこまで上達したって知ったら』

『みんなビックリするんじゃない』と

両手離しで褒めると


『立花さんにムリを言って、押し掛けて教わったから』

『絶対に頑張らなくっちゃ、いけないと思って張り切ってみました』と説明する。


『可愛い弟子として認めましょう』と、絵色女神の髪の毛を撫でて、頑張りを讃えると


照れたような表情になり、下を向きながら

『いい子、いい子されちゃった』と、呟いたのであった。


立花は明日は休みだが、絵色女神は昼から収録があるので、そろそろ寝る事にする2人。


この番組がキッカケで運命が大きく変わっていく事になるのだが、この時は、まだ知らず


のんきに明日の朝ご飯の話をしている立花と絵色女神であった。




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