女神降臨
Chapter2〝女神降臨〟
権太坂36の絵色女神が自分のアパートに来る事になった。
いつもと変わらない日常なら、ゲ-ムをそこそこプレイをしたら風呂に入って寝る。
そんな毎日のルーティンが崩れた。
だがワクワクしている自分もいる。
彼女を初めて見たのは1ケ月前だった。
ネットゲ-ムを始める前の食事をしている時に、たまたま点けていたテレビでアイドルグループが踊りながら歌っていた。
ぼんやりと眺めながら
『こんなグループが流行っているんだ』
誰に聞かせる訳でもない独り言を呟く。
唐揚げ弁当を食べ終わり、ルーティンのネットゲ-ムに取りかかろう
そう思っていた時、テレビを見ていた自分に電気が走った。
激しく動く少女、1フレ-ズを歌い終わる前に2秒ほどで別のメンバーに画面が変わったが
その前に一瞬アップになった彼女に衝撃を受けていた。
その後、テレビ画面に釘付け状態で、再び彼女は映らないのか?
そんな期待をしながら番組を見続けるが、顔がハッキリ確認出来るシ-ンは現れず、やがて曲は終わる。
見間違いだったのか?
自問自答していたが、すぐにスマホで今まで映っていたグループを検索し始める。
『権太坂36だったよな?』
出てくる画像は人気メンバーや全員が写っている小さな画像しか出てこない。
元々女性にもアイドルにも関心が少ないので、羅列される顔の区別がつかない。
可愛い子は出てくるがメンバー内で人気上位と思われる子ばかり出てきて、一瞬だけ映った彼女ほどの衝撃は発生しない自分がいる。
5分ほど探して諦めかけた時に
〝時期センター候補のニューフェイス〟と書かれた記事が目に入った。
記事を確認すると3人ほどの子が顔を寄せて笑顔を振りまいている。
いた
4ケ月前に新加入したメンバーの中に彼女がいた。
少し表情が硬いが、他の新加入のメンバーと一線を画している。
絵色女神、北海道出身の17歳、7536人から選ばれた権太坂36の5期生
そこからは絵色女神の名前でググって彼女の情報を見つけていた。
ちょうど見ていた歌番組のシングルから選抜20人に抜擢されて、一部では時期センター候補と呼ばれ始めている、そんな記事も自然と目に入ってくる。
今まではCDなど買わずにサブスクで済ましていたが、生まれて初めてCDを買ってみた。
曲が欲しいのではなくジャケ写が欲しいだけで、部屋に飾りたかっただけだ。
だが、アマゾンで見た時より届いたジャケ写の彼女は小さかった。
『小さい』
そう呟き権太坂36全員が写っている写真集をアマゾンでポチった。
翌日届いた封筒を急いで開ける
『いない』
彼女が加入する前の写真集だった。
そんな事を繰り返して沼に入り始めた時に今日の出来事が起きたのである。
夢ではないか?
そんな事を何度も思ったが夢では無かった。
彼女と電話を切って5分、もう駅に向かい始めているだろう?
自分のアパートは駅から遠いので彼女の到着時間を逆算したら、そろそろ出ないとマズイかな?
そう思って簡単な身支度をしてアパートを出る。
男の急ぎ足で駅まで15分、不動産屋の募集で書いてあった、駅から徒歩12分はウソっばちだ。
そんな事を考えながら歩いているとビ-ナスから〝東横線の渋谷駅に着きました〟とLINEが入る。
〝こっちも家を出ました〟と返信すると
〝GODさんって、どんな感じなんですか?〟と
ビ-ナスから質問が入った。
見た目
ファッションスタイル
髪型
性格
どれを答えるのが正解なんだ?
返答に困っていると
『会った時の、お楽しみですか?』と、
ハ-ドルが上がる発言が続き、家に帰りたくなってきた。
ビ-ナスと会った時に彼女が自分を、どう思うのか?なんて事を考える余裕もなく
彼女に求められるまま家庭訪問が決定していたのでムリもない。
『普通の男です』
そう返信するのが、いっぱいいっぱいだった。
すると、すぐに
『普通で良かった』と彼女からレスがくる。
五月雨式に
『東横線に乗りました』
『元町、中華街行き方面で良かったんですよね?』の問いかけに
『合ってます』と返信
彼女を待たせる訳には行かないと歩速を少し急ぐ
やがて自由が丘駅が見えてきた。
彼女にとってはテレビ番組に出る為の踏み台
明日になれば俺の存在なんて、その他大勢になるんだ。
緊張してきた自分に言い聞かせるように何回も、繰り返し唱える。
俺は彼女の事を知っているが、向こうはコチラの事を知らないので
待ち合わせ場所に着いても、俺を探せなくて困るだろう。
『身長170cm、短髪の黒髪、SEGAソニックがプリントしているTシャツにGパンです』
今の自分の容姿を彼女に伝えると
『そこまで教えて貰ったら、100人の中からでも見つけられますね』
そんな彼女の返信を見て微笑んでいる。
するとすぐに
『自由が丘に着きました』と彼女から到着報告がきた。
『正面口の改札前にいます』
自由が丘駅には大井町線もある、彼女が間違えないように伝えると
『了解です』とスタンプで返してきたら。
通い慣れたと思われるビジネスマンや遊び帰りと思われる若い人が次々と改札を出てくる。
少しずつ人が少なくなってきて、誰も改札を通らなくなった。
迷子か?
違う改札口に向かったか?
心配になってLINEを打とうとした時に、駅の奥からキャスターの付いたピンクの旅行カバンを転がす女の子の姿が見えた。
彼女の言葉では無いが
100人の中から見つけ出せる、神々しいオ-ラすら見える気がする女神様
初めてビ-ナスと会った瞬間だった。