立花さんの彼女
冷えたカレーモントレ-を電子レンジで温め直して少し遅くなった晩御飯を食べる2人
『美味しいですね』
大好きなピザを食べている彼女はご機嫌だ。
以前までは食事の時はテ-ブルに向かい合って座っていたが、今は並んで座っている。
コタツサイズの机なので2人が並んで座るには狭いので、立花が隣の面に移ろうとすると
『何で移動するんですか?』と
絵色女神が怒りだした。
『いや、狭くて腕がぶつかると思って』
立花が、そう説明すると
自分の身体を立花に預けて寄りかかる彼女。
『重いんですけど』
立花がピザをクチに運びながらクレームを言うと
『我慢してください』と彼女が笑顔で答える。
立花が汚れた手を拭こうとすると、スッと紙ナプキンを彼女が差し出した。
『ありがとう』
少しビックリした立花が礼を言うと
『何でも言ってくださいね』と
彼女が笑顔で答える。
『そんなに気を使わなくて良いよ』
立花はそう言うが
『でも色々したくなっちゃうんです』と
ルンルン気分で彼女が答えてきた。
『そんなにはしゃぐと、テレビが始まる前に疲れて寝ちゃうよ』と
冗談混じりに立花が言うと
『そうなんですよ』
『今日の番組でアタシがメインのコ-ナ-があって』
『それを立花さん家で一緒に見れる』
『めっちゃ嬉しいんです』
興奮気味に話す彼女に、
合いの手で
『お洋服も買ったし』と言うと
『そうだった』
『まだ全部着てないんだった』と
困りつつ笑顔で答えている。
時計を見た立花が
『食器の整理も残っているから』
『時間を決めて、テキパキ片付けちゃおう?』と声をかけて、急いで食事を終了させた。
2人で分担して行動をしたので、予定より早く片付けが終わり、23時くらいには食器の整理も終わっている。
『じゃあ、これから今日買った、お洋服を着てみますから』
『どの服が1番似合っているか?おしえてくださいね?』と彼女が言いだしたので
着替えが始まると思い、立花が立ちあがろうとすると
『今、外に出ようとしてませんでしたか?』と
彼女が怒り口調で確認してくる。
『いや、これから着替えでしょ?』と
立花が聞くと
『もう、さっき、見てるじゃないですか』
『恥ずかしいから、着替える時だけ横を向いていてくれたら』
『わざわざ外に出なくても良いですから』と
彼女に注意をされ、部屋で待つ事となった。
それからは現役アイドルのファッションショーが開幕となる。
着る服、着る服、どれも彼女の為に作られたのでは?と思えるほど似合っており
ひいき目無しで全てが、可愛いく見えて美少女が着ると服に負けることなく似合っていた。
『どれが1番似合っていました?』
パジャマ姿の絵色女神が目を潤ませて聞いてくる
ファンの男が見たら卒倒しそうなシチュエーションを至近距離で味わっている立花は
『今着ている青のパジャマが一番好きです』と答えると
彼女は両方の手を頬に添えて
『なら、泊まる時は毎回このパジャマを着ます』と笑顔で答えた。
この時点で次回も泊まる気が満々だが、今日一日の激しい出来事の後では、それほど気にならない立花であった。
テレビ放映までは、あと2時間
リアルタイムで見たいので、それまでは話をして過ごすこととなり
絵色女神が嬉しそうに語りだしたのであった。
『アタシって長女だから、子供の頃は、いつも我慢してきたんです』
『お姉ちゃんなんだから我慢しなさい』
『何をするにも、後回しにされてきたんですけど』
『権太坂に入れて、立花さんに会えて、ここ最近は嬉しい事の連続です』
『それに今日は立花さんの話も聞けたし、食器も買って貰ったし』
『お洋服も、たくさん買って貰えた』
『あっ、そうだ』
『カレーモントレ-も食べれた』
立花が苦笑する。
『生まれて来て今日が1番幸せな日かもしれない』
そう言って
並んで座っていた立花の肩に自分の頭を乗せた。
『本当の事を言うと、芸能界を辞めて一般人になる事も考えた事がありました』
『こんな可愛い人が何で売れないの?』
『ズルい大人の情報も、たくさん聞いたし』
『コネや特技が無いと前に出て行くのも厳しいと、アタシなんてムリじゃん』
『北海道に帰りたい、って泣いた日も、あるんですよ』
そう言っている絵色女神に
『それは今も変わらないの?』と
立花が聞くと
『今は違います』と彼女が答える。
『番組でもコ-ナ-を任せて貰えて』
『ドラマのオ-ディションも、受けれるかもしれないし』
『やっと努力が実を結び始めたんです』と語っている彼女の目は輝いていた。
『なら次は権太坂でセンターを取っちゃえば良いじゃん?』と言うと
『まだパ-トも歌わせて貰っていませんから、そっちは、まだまだ先です』と
彼女がクチを尖らせる。
『まずは権太坂36と言うグル-プに絵色女神って子がいるって認識して貰う事が1番なんです』
と彼女が力説すると
『有名になったら、もうココにも来れなくなるかもしれないね?』と
立花が寂しそうに呟く。
すると彼女が
『大丈夫です、そこは何とかします』
『今のアタシはココに来て立花さんにパワーを貰って仕事に生かすのも大事なんです』
『バレないように変装も上手にして来ますから』と自身あり気に言うが
今日は変装もせずに、絵色女神100%で来た事を彼女は既に忘れており立花は心配している。
彼女がアイドルとして売れて有名になっては欲しいのだが、
有名になって会うのが困難になるのはイヤだと思うと複雑な心境な立花だった。
『ご飯を作る約束も一回も果たせていないし』
『アタシが売れるか?まだ分からないですから』と彼女は笑う。
『先生、一回目の料理は何ですか?』
立花がおどけて聞くと
『一回目はハンバーグです』
『絵色家では誰かの誕生日に作ってきたメニューです』と
彼女がドヤ顔で言ってくる。
『先生、フライパンもひき肉もありません』と
立花が手を挙げて発言すると
ビックリした顔になった彼女が
『どうしましょう?』と
立花に聞いて来たので
『料理に来てくれるのに都合の良い日は、次は何曜日なの?』
『その日にフライパンと材料も一緒に買いに行っちゃおう』
立花がそう聞くと
『ちょっと待ってくださいね』と言って、スマホでスケジュールを確認している。
『水曜日なら大丈夫なんですけど』
『立花さんは、どうですか?』と聞かれて
確か蝶野とご飯に行くのが火曜日だったな?
『俺も水曜日なら大丈夫です』と
立花が答え、彼女が違和感を感じた。
『立花さん、月曜日は厳しいんですか?』
そう聞かれて
『月曜日は週の始まりだから、仕事が溜まっていて残業になっちゃうな』
立花がサラッと、そう答えると
『じゃあ火曜日は、どうですか?』と
質問を続ける。
『火曜日が後輩とご飯に行く約束が入っているんだ』
立花の説明に彼女が反応した。
その話は聞いていない。
立花は自分で知り合いが少ないから毎日、仕事が終わったら家に帰ると言っていた。
『後輩さんはいくつなんですか?』
絵色女神の質問は続く
『あいつ、いくつなんだろう?』
『たぶん24.25だと思う』
『女性に年齢って聞けないじゃん?』
そう言った立花の言葉に
『女の人とご飯に行くんですか?』と
彼女が凄い勢いで立花に迫ってくる。
その勢いにビックリした立花が
『女の人って言ったって会社の後輩だよ』と
弁解するが、彼女の取り調べは続く。
『その話って、いつ決まったんですか?』
『いつも、その人とご飯に行くんですか?』
『何処で何を食べるんですか?』と
マシンガンのように質問が続いた。
そこで立花が彼女が冷静になるように
昨日の仕事を手伝った礼で、普段は喋った事も、あまりなく関係性は希薄だと説明するが彼女は納得しない。
『心配してくれるのは嬉しいけど』
『本当に昨日まで、その他大勢だったんだよ』
『お礼をしたいって、断ってもしつこいから、しょうがなくだから』と
彼女に説明するがプンプンしたままだ。
『絶対に、その人立花さんの事を好きなんですよ』
『そのうち、お手紙とか、お花を贈ったりしますから』
その言葉に
『確かに、今朝俺の机に花を飾っていたな』と
ポツリと立花が呟いた言葉に
『ほら、やっぱり』と
絵色女神が大騒ぎする。
『女神ちゃん、平気だってさ』
『こんな、陰気なキャラクターを誰も相手にしないから』と
立花が笑うと
『立花さんは自分を過小評価しています』と
彼女が反論する。
『エクシブハンターの世界一位なんですよ』
『それに権太坂のメンバーの美桜ちゃんに、立花さんの写真を見せたら』
『かっこいいって言ってましたし』
それを聞いて、ちょっと嬉しい立花だが
『ちょっと待って』
『美桜ちゃんに俺の写真を見せちゃダメなんじゃない?』と立花が聞くが
『美桜ちゃんは、味方なんで大丈夫です』と
彼女は説明したが立花は腑に落ちない。
『それより、ご飯を食べに行く後輩の写真は無いんですか?』と彼女の尋問は終わる気配はない。
『立花さんは、アタシが他の男の人とご飯を食べに行くって聞いたら、どう思います』と聞かれて
男性アイドルと絵色女神がレストランで食べに行くのを想像して
『確かにイヤかも』と答える。
『アタシもイヤなんです』と
一歩も引かない姿勢を崩さない。
そこで立花は考えた
『女神ちゃんの会社にも男性スタッフって居ない?』
そう聞かれた彼女は
『いますけど』と答えたので
『その人と打ち合わせしながら、ランチした事ない?』と
立花が聞くと
彼女は過去の記憶を思いだすように考えて
『何回かあります』と言った後、
少し落ち着きを取り戻したようになった。
『コミニケーション能力が低い俺は、会社の人と接するのも下手で後輩と飲みに行った事がないんだ』
『あくまで会社の仲間が、お礼にご飯を一回奢りたい、って言ってるだけ』
『会社での人間付き合いも社会人にとって必要なんだよ』
そう言われて頭では分かっているが、心で理解してない彼女は複雑な表情だ。
『約束するよ』
『その後輩と、ご飯を食べに行くのは、これが最後にするから』
そう言われて、やっと納得したのか
再び立花の肩に自分の頭を乗せて
『一回だけですからね』と承諾をする。
姫の御乱心が収まって、テレビの放映時間も近づいている。
お茶とお菓子を準備して絵色女神の晴れ姿を心待ちにする2人だった。




