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女神様の決心 3

人目をはばかる事なく強く立花に抱きつく絵色女神は


胸に顔をうずめたまま動かない。


突然の彼女の行動にビックリしている立花が

『女神ちゃん、どうしたの?』

そう聞いた時に


パッと、自分の身体を立花から離して

『再会のハグです』と頬を赤らめて説明した。


『再会のハグ?』

それにしちゃ激しくないか?

そう思った立花が不思議そうに聞くと


『北海道では外国人の人がよくしています』と

彼女が説明するが、立花は腑に落ちていない表情だ。


『ロシア人の人がよく、していました』


彼女の説明は、まだ続いていたが

そうすると棚橋が付ける彼女の偽名は

ナンシ-からナタ-シャに変わるのだろうか?


ハグにも驚いたが今日の絵色女神は一段と可愛いくて、少し離れた距離にいる立花がみとれている。


その目線に気付いた彼女が自分の背中や足元に視線を持っていき

『何か変ですか?』と気にしだした。


『いや、やっぱり可愛いね』

そう冷静に告げると


両手を頬に当てた彼女が声を出さずに歓喜する。


その時、立花が気付いた。


『女神ちゃん変装は?』

今の彼女はセミロングの髪をなびかせて、マスクもメガネもかけておらず帽子も被っていない。


生の絵色女神である。


最近流行っている腹筋丸出しTシャツにフレアのミニスカート。


普通の女性が、そのファッションで歩いても注目を浴びるだろうに


生の絵色女神が変装していない状態だ。


通勤通学でごった返す駅前の改札前で1番目立っている。


『可愛いアタシを見て欲しいから、今日は変装ナシで来ました』と

自信ありげに報告をしてきた。


『女神ちゃん、マズいって』

『もしファンの人に見つかって、ツイッターとかにアップされたら』

『もう2度と会えなくなるよ?』


そう言われた彼女は急に不安になる。


スト-カ-騒動の時に見た、事務所の大人が本気を出したら、どういった行動を取るか。


これが恋愛関係だったら?

確かに立花に2度と会えなくなる可能性が大だ。


『どうしよう?』

急に心配になった彼女に

『すぐ近くにユニクロがあるから、そこに行こうか?』

『マスクは持っている?』

そう立花が聞くと

『ここに入っています』と言って、ハンドバックからマスクを取り出す。


『あれ?』

確か今日は家電を買った後に彼女が出演したテレビを一緒に見て、そのまま泊まる、って言ってなかったか?


彼女はハンドバックだけの姿で、このまま映画を見て帰るデ-トのような、いでたちだ。


『女神ちゃん他の荷物は?』

立花がそう質問すると


『これだけです』と

彼女は真顔で答えてきた。


『今日って、泊まるって言ってなかった?』

『いつもの旅行カバンは?』

そう立花に言われて彼女は気付いた。


『何も持って来ていない』


顔面蒼白になった彼女は焦った。


下着や着ていくファッションばかりに気になってしまい身の回りの物を一切持って来ていなかったのだ。


『マンションまで取りに戻ります』

ピンチになった彼女がそう宣言したが


『行って帰って来たら、お店が閉まっちゃうから』

『全部、こっちで買っちゃおう』と立花が言うが


彼女は手持ちが少ないので買えるか?

不安気な表情だった。


そこは立花も事情を察しており

『俺がプレゼントするから安心して』と言うが


『でも、申し訳ないです』と彼女が躊躇すると


『ご飯を作ってくれる事への、お礼だよ』と告げる。


『ご飯は最初からの約束だから』

『お礼が2個になっちゃいます』と

申し訳なさそうに言ってきたので


『来月、誕生日でしょ?』

『少し早いけど誕生日のプレゼントで服を買うってのは、どう?』と立花が尋ねると


『嬉しい、アタシの誕生日を知っていてくれたんですか』と、少し涙ぐんだような表情になる。


ファンだから知っていました、とも言えず


『さっきウィキペディアで見たんだ』と

誤魔化した。


『とりあえず歩こうか?』

立花が先導する形で駅から離れて、ユニクロを目指す。


『とりあえず、今の刺激的な服を何とかしないとね?』と言って


ヘソ丸出しTシャツの変更を要求すると

『このファッションってダメでした?』と

彼女が心配そうに聞いてきた。


『ダメじゃないけど、かなり目立つでしょ?』

すれ違う男共がギラギラした目つきで、彼女のウエストラインを見ていたのだ。


『すいません、気合いを入れ過ぎてしまって』

立花に言われて落ち込んでいる彼女


立花も言った後に、言わなきゃ良かったか?と

後悔している。


気持ちが落ちている感じで、立花の一歩後ろを歩く彼女に


立花が歩みを遅くして、彼女にそっと近づき耳元で囁いた。

『女神ちゃんの肌はちょっとでも、他の男には見せたくないんだよ』


それを聞いた彼女はキュンとなり


『2人の時なら見たいんですか?』と

立花の耳元で囁き返した。


急に逆襲を受けた立花はドキっとして

『はい』と

緊張して答えると


『後で、ゆっくり見せてあげます』と

彼女が微笑みながら答えてきたのだった。


倒れそうな位に嬉しいのだが、それを隠すように

『服だけじゃなくパジャマも選ばないと』と

話しかけると

『そんなに沢山だと悪いです』と遠慮をしたので


『予算3万円以内でしたら何着でも結構ですよ』と、おどけて見せる。


『3万円?』

何故、具体的な金額が出てきたか不思議な彼女が聞き返すと


『この前、いとこが就職したんだけど』

『その時に買ってあげたス-ツの上下が3万円だったんだ』

『だから女神ちゃんにも同じ額のプレゼントを考えたんだよ』と説明する。


思いがけない申し出に

『本当にありがとうございます』と

深々と頭を下げた。


照れ隠しをするように

『芸能人に3万円じゃショボいけど、貧乏会社員だから許してよ』と

自虐的に立花が言うと


『3万円は全然ショボくありません』

『アタシ、そんな高価なプレゼントを貰った事がないんです』と

彼女は全力で全否定をした。


その真面目な雰囲気に最初はビックリしたが、そんな部分が彼女の良い所だと感じる立花であったのである。


ユニクロに向かう2人は楽しそうに会話をしており、デ-ト中のカップルにしか見えない。


絵色女神にとっては今日の買い物デ-トだけでも充分楽しみだったのに


立花から誕生日プレゼントとして、服を買って貰える事になったのだから喜びは倍増だった。


やがて目的地であったユニクロに着いたが、彼女の足が店の前で止まった。


『どうしたの?早く入らないの?』

店に入らない彼女に、そう聞くと


『あっちのお店じゃダメですか?』と

ユニクロの向かい側にあるGUを指さす。


GUはユニクロの系列だが廉価版的な商品ラインナップで値段も1割から2割ほど安くなっている。


『ユニクロの方が良くない?』

値段はGUより高いが種類やデザインが多い方が選ぶのも楽しいのでは?


そう思って彼女にユニクロに入る事を勧めたが


『こっちで大丈夫です』と

頑なにGUでの購入を求める彼女。


立花は絵色女神が、遠慮する事を想定して、あえて最初から予算を発表していたので


『銀行に寄ってきたから、多少は予算オ-バ-しても平気だよ』と

立花が言うと


チョコチョコと歩いて立花に近づき、耳元で

『こっちで買えば、立花さんに買って貰った服を毎日着れます』と言って、恥ずかしそうに下を向いた。


『店の服を全部、売ってくれ』


嬉しくて、思わずそう言いたくなった立花は、彼女の意見を尊重してGUに入っていく。


トップスもボトムスも充実しており、ワンピ-スの前で彼女は悩みまくる。


『どっちが似合うと思います』

2つの服を男に見せて選ばせる、地獄のシンキングタイムが始まり


絵色女神のファッションショーが始まった。


おおかた選び終わったかな?

立花が安心していた頃、彼女にまた呼ばれる。


『今度は何を選びますか?』


何着も選んだ立花が、ふざけながら彼女の元へ向かうと


黒とピンクのブラとショーツを持って立っており『どっちが良いですか?』と聞いてきたのであった。


男性にとって女性の下着売り場は、前を通るのも避けるような女性の聖域である。


そこでの下着選びをカップルでするのは付き合いの長いベテランカップルのみという先入観が立花にはあり


彼女が選ばせようとしている下着以前に、目のやり場に困ってしまう。


絵色女神は、そんな事など微塵も感じでおらず

『立花さんの好きな方を選びます』と

他の客がいる事も、おかまいなしに選択を迫った。


周りの目が気になっている立花は

『じゃあ、黒で』と言うと

その場から逃げるように去ってしまった。


やがて彼女がパジャマを選び買い物は全て終了して、お会計となったが27500円で


3万円には達しておらず

『他にも選ぼうよ』と立花が言ったが


『これだけで満足です』と

嬉しそうにパンパンに膨らんだ買い物袋を抱きしめて微笑んでいる。


その笑顔を見て立花も嬉しくなり、2人で店を出たのであった。


当初予定していなかった洋服購入で1時間近くかかってしまい慌てて家電店に急ぐ2人


店に入ってからは炊飯器をすぐに選び、店を後にした。


次は100円ショップに走り、箸や皿、茶碗を探し始めたのだが


立花は何も言っていないが当たり前のように彼女は全て2人分を選んでおり


まるで、これから同棲生活が始まるか?のような商品選びであった。


立花は絵色女神の後ろを買い物カゴを持って、付いていき


彼女が

『これ良くないですか?』と聞くと


『うん、いいね』と答え、買い物カゴの中身が増えていく。


会計をした時には100円ショップの筈なのに、合計は3000円を超えていた。


絵色女神の両手には大量の服があり、立花は右手に炊飯器、左手には100円ショップで買った大量の生活雑貨が入った袋


その姿は恋人を通り越して、夫婦のようである。


大量の荷物を運びながら、美少女の後ろを歩く幸せに包まれていた時に

『立花さんドラックストアは、この近くにありませんか?』と

絵色女神が聞いてきた。


『ここの2階にあるよ』

そう立花が説明すると

『シャンプーとコンディショナーも買って良いですか?』と彼女が聞いてきたので


『ウチにも、あるけど』と立花が説明したが


笑顔で

『長い髪の毛用のが欲しいんです』と答える。


立花の家にある100円ショップのシャンプーでは、髪の毛がゴワゴワするとは言い出せなかった彼女は自分用にと購入したのであった。


買い物が全て終わった頃には外も暗くなってきており


『もう、暗くなってきたからバレないので』

『変装を止めても良いですか?』と

彼女が立花に聞いてくる。


夜の住宅街、歩いているのも自分たち2人


『取っても大丈夫じゃない?』

立花に、そう言われた彼女はマスクを外して


立花の前に回り込み真正面になると

『どうですか?』

『可愛いいですか?』と

立花を見つめながら確認する。


そんな彼女の瞳を見つめた立花が

『可愛いいよ』

そう答えると、嬉しそうに微笑み


『早く、おウチに行きましょう』と

アパートへの帰路を急かす。


天真爛漫にはしゃぐ彼女を見ながら立花は


絵色女神は友達として、自分に接しているのか?


恋人候補として自分に接しているのか?


考えていた。


自分の勘違いではなく、彼女が自分の事を恋人候補として見てくれているなら


立花には彼女に言わないといけない事がある。


100円ショップでの生活雑貨の購入の仕方を見ていると、今後も彼女は自分の家に泊まりに来るつもりだろう?


間違いが起きる前に、彼女には伝えないといけない。


楽しそうに喋りながら歩く彼女の姿を見て


今晩、絵色女神に伝えようと決心した立花であった。

















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