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女神様の悩み

彼女には立花と電話が出来るようになったら話したい事が2つあった。


一つ目は今日行けなかった家電購入デ-トの次回打ち合わせの件だった。


会社帰りに飲みに行く事が少ない立花は、時間の融通が割と出来るが


アイドルグループに所属している彼女は終了時間未定のスケジュールが今週は多かったのだ。


だが金曜日は夕方に雑誌の取材で業務終了なので、早い時間に電気屋に行けそうだったのである。


『金曜日に決定で良いです』

絵色女神の誘導で家電購入する日にちが決定した。


そして、もう一つ話したかった事が

『アタシが大活躍する番組の放送日が今週の金曜日に決定しました』と

ハイテンションで立花に報告してくる。


例のエクシブハンターを番組内で紹介する、ワンコ-ナ-だな、立花はそう察した。


昨日の火曜日に収録して、今週の金曜日に放送?


普通テレビ番組は収録した番組を編集したり、ナレ-ションを入れたりするので


放送されている番組は、2週間前くらいに収録したものだと思っていた。


テレビ関東で金曜日の深夜26時から放送している『権太坂ランニング中』という

ファン以外は見ないだろう?と言う番組だ。


見ている人が少ないとはいえ、ずいぶん荒っぽい放送スケジュールだと思った立花が

『えらい早く、放送する事になったね?』と言うと


『今までセンターをしていた先輩がテレビに出れなくなっちゃって』と

裏事情を教えてきた。


要は、その子が出ていた回は、お蔵入りとして放送中止となったのだろう。


センターを張っていた子なら、番組でもメインで出演しており編集で消すくらいじゃ対応、出来なかったのだろうと思われる。


収録済みのストック全てがアウトなのか?


何をしたのか?は聞かないでおく。


『金曜日に家電を買いに行って、その夜は立花さん家でリアルタイムで上映会なんて、どうでしょうか?』と

彼女が提案してきた。


おそらく彼女の中で確定案件なのだろう。


『家電を買いに行くまでは良いが』

『深夜にテレビをリアルタイムで見たら、どうやって帰る?』


彼女が言いだした時点で彼女の回答は分かりきっていたが一応聞いてみると

『立花さん家に泊めてもらおうと思っています』と声を小さくして答えてきた。


今日のLINE ID行方不明の件もあり、立花がいじわるな感じで

『また俺が寝ぼけても知らないぞ?』と言うと


『それもあったから、お泊まりをしたいと思って』と言った後に

ゴニョゴニョと言葉を濁してしまい聞き取れなくなってしまった。


どういう意味だ?


期待している?


誘われている?


試されている?


頭の中で回答パターンを、考えてみるが正解が分からない。


とりあえず

『泊まるのは良いけど、布団持参だよ?』と言う、無理難題をふっかける。


そこは彼女も心得ており

『分かりました』と答えた。

だが女の子が布団なんて、担いでこれる訳がない。


これで金曜日の家電購入デ-トと、その日深夜からの番組上映会、3回目のお泊まりが決定した。


『本当は今日も自由が丘に行こうと思っていたんですよ』

『でも引越しをした後も事務所関係者から連絡が来ているし』

『親にも連絡が入っちゃったから、さっきから連絡が凄くて』と彼女は言うが立花は感じていた事があった。


スキャンダル御法度のアイドル、自分と会うのも注意しないと、本当に彼女と連絡が取れなくなる。


今日も所属タレントからの報告を受けて、専門業者の手配から新居の確保


即日に引越し屋の手配から荷物の搬入まで完成させる行動力


彼女の所属している事務所は相当キレ者が多い事務所なんだろう?


だとすると、立花と接触している事がバレないように、注意をしないといけない。


そんな考えを、していたので

『俺の事は事務所とかメンバーにはバレていない?』と探りを入れると


『事務所には言ってませんけど』

『美桜ちゃんには喋っちゃいました』と

彼女があっけらかんと答えてくる。


『美桜ちゃんって誰?』

『何を喋ったの?

大慌てで質問する立花に


『大丈夫ですよ』

『立花さんの事は喋ってないし』

『詳しく話す前にスト-カ-の件で大騒ぎで、おしゃべりは中断になっちゃいましたから』と

情報漏洩を否定してきた。


本当か?

おしゃべり好きな、お年頃の女子

『秘密ね』

そんな事を言って色々と喋っちゃっているんじゃないの?


俺なら大丈夫だけど


バレたら、困る奴なんて1人しかいない


『あ...』


そう言ったまま立花は5秒ほど黙ってしまう。


『どうしました?』

絵色女神が急に喋らなくなった立花を心配して聞くと


『ゴメン、俺  喋っちゃった』と

立花が、謝ってきた。


『何人くらいですか?』

かなり冷静な口調で彼女が確認してくる。


その圧力は立花にも伝わってきており

『1人です』と答えると

『何処まで喋ったんですか?』と

更に深く切り込んできたのであった。


『はい、』と言った後に背筋を伸ばして

『2日間連続で泊まった事と、今朝のツ-ショット写真を見せてしまいました』と

申し訳なさそうに答えたのである。


『その人は信用できる人なんでしょうね?』

絵色女神の尋問は止まらない。


そう聞かれて、事務所内や食堂で大絶叫で騒いでいた棚橋の姿を思い出して黙ってしまうと


『信用出来ない人なんですか?』と

低いト-ンで確認する彼女に

今日の昼ご飯タイムの時の事を説明し始めた。


LINEが急に繋がらなくなって焦っていた時に、

『離れて行った女なんて忘れろ』

『どうせブスなんだろ?って言われて』

『こんなに可愛い子なんだぞ、って悔しくて見せちゃったんだ』

そう立花が説明したが彼女は無言で答えてこない。


電話の向こう側で、最高の笑顔で

『立花さんに可愛いって、言われた』と

ニヤニヤして喜んでいたからだ。


『女神ちゃん?』

『怒った?』

『勝手に見せちゃってゴメンね』

返事がないのは怒っていたからと思った立花が、申し訳なさそうに言うと


『しょうがないですね』と

ご機嫌な口調で答えてきたのである。


可愛いと言われた、そのひと言で彼女は今日一日の疲れを忘れる事が出来た。


そんなやり取りをしていて、時間は夜22時をまわっている。


彼女の親からの連絡の督促も入っており、今日はお開きとする事にする。

『じゃあ、また明日』

『おやすみなさい』


恋人同士の1日の終わりのような言葉を交わし、2人は電話を切った。


久しぶりの1人のベッドで横たわっていた立花は、いつのまにか眠っている。


翌朝いつもより早く目覚めた立花はシャワーを浴びて、身支度をしていると

『ピコン』と

スマホが鳴った。


彼女からのLINEスタンプによる

『おはよう』だった。


立花はその画面を嬉しそうに眺めながら

『おはよう』

『昨日は、よく寝れた?』

そう返信をすると


『ピコン』と

スマホがすぐに反応する。


『慣れない部屋だったので寝れませんでした』

『でもツ-ショット写真を見ながら、明日のお泊まりの事を考えて寝ました』と返信が入り

その内容を読んでクスっと笑った立花が


『遠足前の子供かよ?』と

レスを返す。


すると、すぐに

『ピコン』と返信の合図


画面を見ると

『だって楽しみなんです』と

笑顔のスタンプ付きで返信が来た。


立花も、その内容が嬉しくて

『これじゃ恋人みたいじゃん』と

何気なくレスを返す。


すると、そこからピタリとLINEが止まった。


あれ?

トイレか?

席を外したのか?

 

もしかして内容が気持ち悪いと思われた?


自由が丘のアパートで疑心暗鬼になっている男がいる一方で


そのメ-ルを見て爆死している少女がいた。

『恋人みたいじゃん』

その文章を読みながら、昨夜の電話で

『可愛い』って言われた言葉がリフレインしており1人、お花畑の世界を漂っていたのである。


レスが来ないのは不安だが、朝の身支度をしなくてはならない


スマホをテ-ブルに置いて洗面所に向かう立花


『ピコン』


絵色女神からのLINEが届いたが、

立花は気付かず歯を磨いている。


爆死から目覚めて、何て返信しようか?

彼女が頭を悩ませて送ったレスだったが、

今度は立花からレスが来なかった。


どうしよう?

まずかったのかな?


彼女は追加でLINEを送ろうか迷い始めている。


立花が彼女のLINEに気づいた。


『恋人みたいですか?』

この文章に、また頭を悩ませる。


この程度のやり取りで、お前は恋人気取りか?


目が合っただけで、この子は俺の事を好きかも?と思う勘違い野郎か?


必要最低限の業務連絡だから勘違いするな、って事か?


色々な予想が錯綜してしまい

『違うかもしれませんね』と返信したのであった。


恋愛初期のカップルにありがちな、自分が仕掛けた地雷を自分で踏んで爆破させる行為。


『そうですか』と

彼女から返信が来たのは30分後だった。



微妙な空気が流れたが

『今日も一日働いてきます』と書いた立花のLINEに


『がんばって!』と

絵色女神が即レスで返してくる。


『ソッチもMVの撮影、頑張って』と送り、それぞれが仕事場へと向かった。


立花には朝一番でやらないといけない事があった。


棚橋への口止め


昨日は絵色女神との連絡がつかなくなって、慌てて帰ってしまい


棚橋に彼女の事を口止めするのを忘れていた。


もしかすると、既に会社中に言いふらしているかもしれない。


そんな事を考えて出社すると、すぐに棚橋の背中が目に入った。


『棚橋、ちょっと良いか?』

そう言って声をかけると


『おう、立花』

『思ったより元気そうだな』と返してくる。


『ちょっと話があるんだが』

オフィス内で騒がれては困ると学習した立花が、食堂へ棚橋を誘導した。


『話って、昨日の女の件か?』と

棚橋から切り出してきた。


『そうなんだ、その件はみんなに黙っていて欲しいんだ』と

単刀直入に頼んでみると


『分かっているよ』

『俺もバカじゃない』

『振られた男に追い討ちをかけるようなマネはしないさ』

そう言って、立花の肩に手を回して語ってくる。


フラれた訳じゃないんだが

そんな事も考えながら

『じゃあ誰にも話してないんだな?』と棚橋に聞くと


『当たり前だろ』

『落ち込んだ友達を笑いモノに出来るか?』と、男の友情を見せてきた。


こいつ、やっぱり良い奴じゃんか


そう思い、思わず

『ありがとう』

『あの後、連絡が取れて復活したんだ』と

笑顔で話してしまった。


すると棚橋の表情が急に笑顔になり

『良かったな』と

握手を求めてきたのであった。


『ありがとう』

棚橋の男気に立花が感動していると


『友達を、紹介して』と

言ってきたのである。


『はぁ?』


ちょっと感動していた自分がバカらしくなった立花が聞き返すと

『彼女クラスの可愛いさだったら、友達も絶対に可愛いだろ?』

『合コンしてくれよ』と恥ずかしげもなく頼んできた。


現役アイドルだから可愛いに決まっているだろ


だが権太坂のメンバーと合コンなんて出来る訳がない。


そもそもが自分の彼女じゃない。


『彼女とは付き合っている訳じゃないから、そんな事を頼めないよ』

立花が、そう言って断ると


『いやいや、2日間泊まったんだろ?』

『うん』


『ズッポリ刺したんだろ?』

『いや刺してない』


『刺すって何だよ』



『ウソだろ?女を2日泊めて刺してない?』

『その刺すって表現はやめろ』


『なんでだ?』

そう棚橋に言われて

『彼女はまだ17歳なんだ』と答えた。


そう聞いた棚橋が固まっている。


『17歳を2日も家に泊めたのか?』

棚橋が急に、おとなしくなり静かに質問をしてきた。


『家に帰れなくなった彼女を緊急避難的に泊めただけで、やましい事はしていない』と言った後


オッパイを触った事と、着替えを見た事を思い出して黙ってしまう。


それを察した棚橋が

『なんか、しただろ?』と質問するが

立花は顔を横に向けている。


『刺しただろ?』

『刺してない』


そんな掛け合いをしながら

危ない橋と分かっていても渡ろうとしている立花を応援してやろうと棚橋は心に誓っていた。


場所は変わって世田谷のスタジオ

朝から衣装を何回も変えてミュージックビデオの撮影をしている権太坂36のメンバーの姿があった。


新センターを中心にセミを中心に撮影が進んでいくので絵色女神のような若手は出演シ-ンが少なく別室の待機の時間が長い


若い女の子にヒマな時間を与えれば、当然おしゃべりタイムとなる。


同期入部の越中美桜と絵色女神は出演する場面が同じだったので席を並べて喋りだした。

『女神ちゃん大変だったね』

『プレゼントに発信機なんて怖いよね』

美桜が心配するように彼女に話しかけてくる。


『ありがとう』

『でも大丈夫だったよ』

絵色女神が、そう答えたが美桜は目で何かを要求してきた。


やはり逃げられないか


スト-カ-事件の前に美桜と話しをしていた、胸タッチ事件の続きを話すと言ってしまっていた。


『向こう側に行こうか?』

彼女が美桜を部屋の隅っこの椅子に誘う。


ニコニコした美桜が椅子に座ると

『昨日の話の人とスト-カ-は別人だよ』と

絵色女神が話しだした。


『そうだよね』

『ウチらにも発表があって、ぬいぐるみから発信機が見つかったって聞いて』

『胸を揉んだ人とは違うと思ったんだ』と

目を爛々とさせて答えてくる。


何処まで喋って良いものか?

絵色女神自身も迷っていた。


『美桜ちゃんだから話すね』

ここからは彼女の賭けだった。


『3日前にスト-カ-が家に来てから、ネットカフェに泊まっていて』

『そこでナンパされたり怖い思いをしていて、逃げたいと思ってた時に知り合った人なんだ』


そう話すと

『ネカフェで知り合った人なの?』と

美桜が質問をしてきたので


そうだ、ネカフェで助けて貰った事にしよう。


彼女としては立花イコ-ルGODとは知られたくなかったので


サイト経由やエクシブハンターの名前を出したくなかった。


必ず知り合ったキッカケを聞かれる。

そこの説明がネックだったのだ。


『そうなんだ』

『ネカフェで絡まれていた時に助けてくれて』

『その人の家に泊めて貰っていたんだ』

そんなスト-リ-を咄嗟に思いつき美桜に話しだした。


『すごいね白馬の王子が現るって感じで助けてくれたんだ』

美桜はそう言って目を輝かせている。


アタシの話が通った?


不安だった彼女だが、美桜の反応を見て信じてくれたと思い、そこからアパートに行った話をしたのだった。


『でも2日も泊まったのに、その男の人は女神ちゃんに手を出さなかったの?』

どうやら美桜は、そこが納得出来なかったようで


『何でその男の人は迫って来なかったのかね?』

美桜が不思議そうに質問をしてきて、彼女自身も不安になってきた。


彼女も、この2日でネットの記事を読み漁っており『家出した少女が独身男の家に泊まったら』的な情報をたくさん得ていた。


アタシは大事にされている。


彼女はそう捉えていて喜んでいたのだが

美桜の発言により、その考えが揺らいできたのである。


『ウチなんか熊本に帰って、彼氏と会っている時は服を着ている時間の方が少ないよ』

『彼氏がウチに飛び付いてくるからね』

美桜の言葉はネットの情報と合っていた。


もしかしてアタシが女として見られていない?

子供扱いされている?


一気にブルーな気持ちになってくる。


絵色女神の表情から彼女の心理を察した美桜が

『もう、その男と会う約束してないの?』と聞くと


『明日の夜に泊まりに行く約束になっている』と

正直にバラしてしまう。


悪い笑顔を浮かべた美桜が

『女神ちゃんから、その人に迫ってみたら?』と大胆な提案をしてきた。


『迫るって、何を?』

焦った絵色女神が質問すると


『もちろんベッドに誘っちゃうのよ』と

彼女の肩を抱きながら顔を近づけて囁く。


『そんなのムリだよ』

驚きのあまり大きな声を出してしまい、離れている他のメンバーがこちらを見た。


『しっ』

人差し指を口の前に立てた美桜が

『女神ちゃんは、その男の人の事を好きなんじゃないの?』

『結局は、どうしたいの?』と聞かれ困ってしまった。


アタシ立花さんの事が好きなの?

自問自答してみるが分からない。


固まっている彼女に

『胸を触られた時にイヤだった?』と聞くと


『恥ずかしかった』と彼女が答える。


確かにイヤだったら、ぶっ飛ばしていただろう。

実家の弟がふざけて触った時には泣くまで叩いていた。


『イヤじゃなかった』

そう答えた彼女に美桜が

『なら好きなんだよ』と伝える。


『そもそも好きじゃない男の家に明日も泊まりに行く?』

そう美桜に言われて顔が赤くなってしまった。


確かに男の家に3回も泊まるなんて今までの自分では考えられない。


そう考えて少し明るい気持ちになったが

『その人って女の子を好きじゃない、って考えられない?』と言った美桜のひとことで

また彼女が固まってしまった。


ヘアメイクをしてくれる男性のLGBT率が高い事を芸能界に入ってから知った彼女は心配になっている。


自分が着替えをしようとした時も、外に出てしまった。


男らしいと感動していたがLGBTだったら?

そんな疑念が頭をよぎる。


『明日、泊まるんでしょ?』

『女神ちゃんがアタックしてみたら、分かるんじゃない?』

美桜のアタック指示を受けて

『具体的に、どうしたら良いのかな?』と彼女はアドバイスを求めていくのであった。






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