さよなら自由が丘 2
キッチンに立った女神は
ミニスカートに
エプロン姿で
料理を作り始めた。
その姿をニコニコして
眺めている立花は
スマホで撮影をしている。
撮られている事に気付いた女神が
『何で撮影しているんですか?』と
困ったように照れながら
聞いてきたので
『日本中が夢中ななっている
トップアイドルが
料理を作る動画は
貴重かな?と思って』と
説明すると
『気になって料理に
集中出来ません』と
怒ったように言うが
その顔は笑っている。
『出来るまで、おとなしく
待っていてください』
そう言って
料理を再開した女神を
立花はニヤニヤして
眺めていた。
テレビから流れていた
音楽番組を
たまたま見ていた時に
目を惹かれた美少女
ファンになった後に
その子から連絡が来て
今じゃ彼女として
付き合っている。
彼女の存在を知った時には
無名に近く
アイドルグループの
その他大勢だった子が
今ではトップアイドルとして
芸能界の頂点に
近づいている。
不思議だ。
偶然が重なって
人生は出来ていると聞くが
彼女と知り合っていなかったら
今、自分は
何をしていたのだろう?
そんな哲学的な事を
考えていた時に
『お待たせしました』と言って
女神がワンプレ-トに
飾りつけられた
ハンバーグを持ってきた。
コ-ンにインゲン、
ニンジンにポテト
デミグラスソ-スがかかった
ハンバーグに
『スゲ-な、ファミレス
みたいだな』と
立花が声を出した。
この際のファミレスみたいは
ショボいのか?
プロっぽいのか?
判断に困るところだが
立花に悪い部分を
感じていない女神は
『ありがとうございます』と
笑顔で答えていた。
立花がひと口目を食べるのを
心配そうに見守っていた女神は
『うまい』と言った
立花の言葉に
『良かった』と
満面の笑みを浮かべ
安心している。
付け合わせに箸を
付けてクチに運ぶ立花に
『味付けは薄いですか?』と
不安そうに聞くが
『丁度良いよ』と
合格を貰って
彼女も食べ始める。
『これから色々と作った時に
味付けが濃いか?薄いか?』
『立花さんの好みを教えて
ください』と女神は言ってくるが
『女神の味付けを
一通り味わってからで
大丈夫だよ』と
立花はムシャムシャと
食べ続けて完食した。
『ハンバーグは何点でした?』
食べ終わった立花に
女神が採点を求めると
『もちろん100点だよ』と
立花が答えると
女神の表情が曇った。
それに気付いた立花が
『女神?どうした?』と聞くと
『ダメです、
甘やかさないで下さい』
『最初っから100点なんて
出きる訳ありません』
『立花さんのご飯をアタシが
一生作るので』
『ちゃんと、立花さんの
好みを教えてください』と
女神は真剣に
聞いてきたのである。
卵焼き一つでさえ
各家庭で味付けが変わる。
彼女は旦那さんになる
立花の好みを把握したいのだ。
それが分かった立花は
『そうだね、ごめんなさい』
『個人的には90点です』と
言った後に
『ハンバーグは、もう少し
硬いタイプが好きなのと』
『ご飯も、もう少し
水分が少ないのが好みです』
『それ以外は今のままで
大丈夫です』と答えると
『わかりました』
『次回からは、そうします』と
彼女が笑顔で答えてきた。
『じゃあ、洗い物を
しちゃいますから』
『少し待っていてくださいね』と言って
キッチンに向かう彼女であった。
18歳になったばかりの
女神だが
彼女から学ぶ事は多い。
好きな人には
嫌われたくなくて
本音を言えない事がある。
本当に、その人の事を
考えているなら
マイナスになる事でも
正直に言うのが
相手の為になる時がある。
10才上とか関係なく
人生のパ-トナ-として
立花にも意見を言った女神を
立花は尊敬していた。
そんな気持ちもあって
『北海道に行ったら
次は俺の実家に行くか?』と
立花が聞くと
『え?本当に?』と言って
洗い物の途中ながら
立花の方に走ってきた。
『女神がイヤじゃ、なかったら
長野県伊那市に』
『女神をご招待します』と
立花が言うと
『イヤな訳ありません』
『いつにします?』と
明日にでも
連れて行けと言いそうな
雰囲気で彼女が、せがむが
『北海道に行くのが先だろ?』と
立花に言われて
そうだった、と
ベロを出して
キッチンに戻って行った。
すると女神は
『そつアル、そつアル、
早く見たいな』と
デタラメなメロディで
歌いながら洗い物をしていて
ご機嫌である。
以前、このアパートで
『立花さんの子供の頃の
写真を見せて下さい』と
女神に言われたが
『アルバムとかは
実家に置きっぱなしだよ』と
言って
女神が残念がって
いた事があり
おそらく、そのリベンジを
実家に行った時に果たそうと
考えているのだろう。
洗い物を済ました女神は
立花の横に座り
スマホのカレンダーを見ながら
長野県に行く日を
楽しみにしているのであった。




