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仮面の告白

猪木会長は現在、独身である。


かつて奥さんと

可愛い子供が2人いた。


一流大学を卒業した彼は

コンピュータ会社に

就職をして会社員として

成功していた。


そんな彼は社内で評判となり

女子社員の間で

争奪戦が行われて

やがて1人の女性と結婚した。


すぐに子宝にも

恵まれて2人の子供が

家族として加わった時に

それは起きた。


『独立して会社を立ち上げたい』

『自分のプログラミングの

腕を世界で試したい』


彼の申し出に奥さんは

猛反対をする。


それは当然だ。


エリ-トサラリーマンとして

高収入を得ている

今の生活を何故捨てるの?


安定した生活が

約束されているのに


何故、荒波の海原に出航を

しないといけないの?


夫婦の意見は歩みよらず

毎晩、言い争いが続いていたが


やがて彼は半ば強引に

会社を辞めて自分の会社を

立ち上げてしまった。


『オリファルコン』

古代ギリシャの文献に登場する

伝説の金属である。


それに、あやかって

世界を席巻する企業となり

現代に伝説を甦らせる


そんな思いで、会社を作った。


彼の妻は

『半年、やってみて

ダメだったら会社員として

再就職して』

そう頼んでいる。


だが彼は

『半年で答えが出る訳ない』

『一年後に、初めて

芽が出るか?』

『それが分かるんだ』

そう言って妻の言葉に

耳を傾けなかった。


国民金融公庫から

融資を受けて

従業員を雇って

会社はスタートをした。


やがて彼が陣頭指揮をした

ゲ-ムが完成した。


『エクシブハンター』


開発中に他の社員から

『スト-リ-を練ったら?』とか

『ギミックに凝ったら?』と

アドバイスが出ていたが


彼は耳を傾けずに

自分の考えた通りのまま

発表する。


だが結果は散々たるものだった。


レビューや批評欄には

クソゲ-や時間の無駄

そう言った言葉が並んでいる。


彼は優秀な

プログラマーではあったが

優秀なゲ-ムデザイナーでは

なかった。


周りのスタッフが1人

また1人

会社を、去って行き

やがて彼1人となってしまう。


妻が

『もう、諦めましょう』

そう言ってくれたが


彼は

『うるさい』と

怒鳴りちらして

追い払ってしまう。


ダウンロード数は

1週間で2人

そんな日が続いた時に

彼の元に弁護士が

訪れた。


妻の両親が雇った弁護士で

離婚をして子供達の親権を

放棄して欲しい


その代わりに

慰謝料や養育費は

請求しない、との

ものだった。


『ちょっと待ってくれ』

『家族に会わせてくれ』

そう言った

彼の懇願は却下された。


『私も遺恨を残さない為に

最後の挨拶をしては?と

提案したのですが』と

言った弁護士の言葉は

そこで止まってしまう。


そうして彼は1人となってしまう。


残ったのは

彼が人生をかけて作った

クソゲ-と呼ばれる

一週間に2人しか

ダウンロードしない

ネットゲ-ムと

多額の借金だけだった。


『俺には才能が無いんだな』


1人ぼっちとなった彼は

『死んだら借金は

チャラになるのかな?』と

自暴自棄とも思える言葉を

呟く機会が増えている。


食事も1日に一回しか

取らない日が続いていた

ある日


ゲ-ムの掲示板に

書き込みがあった。


当初、彼は必要無いと

言っていたが


かつて在籍していた社員が

『ユ-ザ-の声は

商品開発で神の声なんですよ』

そう言っていた遺物だ。


孤独となり

相談する相手もいない

彼はワラにも、

すがる気持ちで

掲示板を見た。


『クソゲ-、つまらない』


また罵倒する

メッセージであった。


久しぶりに来た掲示板の

メッセージが

これじゃ

いよいよ終わりだな。


彼は、そう考えて

落ち込んだ時に


一瞬、頭の中に

閃光が走った。


まだ、このゲ-ムを

してくれている人が

いるじゃないか。


そう思った時には

掲示板に彼自身が

書き込みをしていた。


『私は、このゲ-ムの開発をした

社長の猪木と申します』

『どの辺りが、つまらなくて

クソゲ-か教えて

貰えないでしょうか?』

頭を下げて

教えを請うメッセージを

アップしたのだった。


これを見た大学生は驚いた。


掲示板の悪口は

大抵すぐに消されるのが

普通だが


それが返信された上に

アドバイスを求めている。


暇つぶし程度のつもりで

投稿した大学生だが

少しずつ改善の

アドバイスを投稿していった。


『キャラクターが少ないと

思います』


『キャラクターを

増やしたいのですが

デザイナーに依頼する予算が

ありません』


『でしたら、ネットにある

フリ-素材を使わせて貰ったら

どうでしょうか?』


『フリ-素材を

アップしている方なら』

『ワンカット500円ほどで

新規キャラのオ-ダ-も受けて

くれるみたいですよ』


彼の知らない情報を

色々と教えてくれる

大学生のおかげで


エクシブハンターの

ゲ-ム画面の見栄えも

だいぶ良くなっていった。


『技を増やしたり

アイテムを増やすのは

どうでしょうか?』


大学生のアイデアは

彼には出なかった発想で


貰ったアイデアを

不眠不休で

プログラミングした結果


エクシブハンターは

大変革をして

人気ゲ-ムへと

登りつめていく。


やがて倒産寸前だった

オリファルコン社は

従業員が50人を越える

中小企業となった頃


アドバイスをしてくれている

大学生が就職するとの話を

聞いた彼は


『副社長として

オリファルコンに入社して

欲しい』とお願いをする。


だが、彼は入社を固辞した。


『中小企業じゃダメなのか?』

彼は大学生に強い口調で

迫った。


大学生は笑いながら

『ゲ-ムはファンとして

楽しみたいんです』


『仕事として頑張ったら

アイデアは出なくなると思うんです』

『外から見ているから

分かる事もあると思うんですよ』


そう言って断ってきた。


この時、大学生の話を聞いて

小さな会社だから

断られたと半分思っていた彼は


更に頑張って会社を

成長させて

ついには東京証券取引所に

上場する企業にまで

成長させる事が出来た。


今度こそ入社して貰える


そう思って

『上場企業なら入社して

くれますか?』

彼が、そう頼んだが

答えはNOだった。


『上場してもダメなのか?』

彼が、そう迫ると


昔大学生だった彼は

『中小企業とか上場企業は

関係ないって』

『昔、社長に話しを

したじゃないですか?』と

笑っている。


本当に会社の規模に

こだわらないのか?


彼は拍子抜けしていた。


それならと

『オリファルコンが上場出来たのは

アナタのおかげだ』と言って

上場で得た資金の一部である

10億円を彼に渡そうとしたが

彼は拒否した。


『10億円じゃ足らないのか?』

彼は、そう尋ねると


『10万円でも、

いらないですよ』


『俺は言いたい事を好きに

言ってただけです』

『それを形にした社長の

功績ですよ』と

10億円や株の受け取りを

拒否したのであった。


その頃、新聞や雑誌で

急成長した新興企業である

オリファルコンの特集記事が

掲載されており

彼の名前と顔は世間に

知られていた時に

会社の受付に

子供2人を連れた女性が

現れた。


『社長にお会いしたいと言う方が

受付に来ています』

『社長の奥様と、お子さんだと

名乗ってらっしゃいますが』

そう聞いた彼は


『私に家族はいません』

『おかえり頂いて下さい』

そう言って断った。


自分が1人になった日の事を

彼は絶対に忘れない。


会社が盛況になった途端に

辞めていった

過去の社員達が

近寄ってきたが

全て拒絶している。


誰も信じない


ただ1人、自分がドン底だった時に

手を差し伸べてくれた

立花隆だけは別だ。


立花の為なら

何でも出来る

立花の為なら

全てを捧げても良い


立花に対する信頼は

彼の中で愛情に変わっていった。


この時に猪木会長は

目を覚ました。


『この夢を見るのは

久しぶりだ』

そう言って全裸のまま

会長はベッドから降りた。


ベッドには

昨晩、相手をした人間が

裸で寝ている。


『日本ラウンドは明日からか』

カレンダーを見た会長が

そう呟いた時に


『早いね、もう起きたの?』

ベッドの中の人物が

会長に話し掛けている。


『ゴメン、起こしちゃったね』

『サトシは、まだ寝ていてよ』

そう言って佐山サトシの

髪を撫でていた。


打倒、絵色女神


2人の共通目標である

世界大会の最終ラウンドは

明日から開催されるのであった。



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