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女神様が行方不明 1

アパートに戻りコンビニで買ったサンドイッチをつまむ2人


テレビでは朝の情報番組が流れており、報道やスポーツ、そして芸能ニュースが放送されていた。


そのニュースの一つが韓国発の女性アイドルグループが東京ド-ム公演をしたもので


彼女は食べるのを止めて食い入るようにテレビを見ている。


『やっぱりライバルは気になる?』

何気ないつもりで立花が言った言葉で、彼女が現在のアイドル業界を熱く語り出した。


自分達の先輩グループに『神楽坂36』『談合坂36』がいて


3番目として『権太坂36』が存在している。


今のところ、36グループがトップ集団だが、コロナウィルスが収まってきてから


韓国グループが次々と日本デビューを果たしてきており


元々、活躍していたABC41を筆頭に一大勢力である41グループ


歴史が古いイブニング小娘の事務所の複数のアイドルグループ


アニメとコラボしているアイドルグループも多く登場してきており


さながら昔の戦国時代のような状態で群雄割拠が続いているとの事だった。


36グループでも神楽坂36は別格で出演番組や雑誌の取り上げ量、宣伝費用は権太坂36の2倍以上。


グループのスタートとして、神楽坂36の補欠グループとして談合坂36が出来て


さらに予備軍として権太坂36が出来た経緯があった。


レコード会社での扱いも低く、神楽坂のアルバムで不採用となった楽曲が


次の権太坂36の新曲に使われる予定らしく、ヒエラルキーの底辺な事は彼女達も分かっているらしい。


アイドルグループに小さい頃から憧れて、やっと入れた芸能界だが


17才の彼女を取り巻く現実は厳しいものだった。


だが一通り喋りきった後にはスッキリしたようで

『でも頑張っていきますよ』と腕を上げて、チカラこぶを作るポーズをする彼女


その姿を見ながら

『何とかしてあげたい』と思う立花だった。


少し、ゆっくりとしすぎた朝食が終わり、身支度の準備に入る2人

『着替えをするよね?』

『俺、外に出て待っているから』

そう立花が言うと

『向こう側を見てくれていれば大丈夫ですよ』と

彼女がサラッと言うが


『そんな訳には、いかないよ』と言って、立花が外に出て行く。


その姿を見た彼女は

『かわいい』と微笑む。


外に出た立花は、昨夜の風呂上がりの下着姿の彼女を思い出し


すぐに自分の手のひらを眺めて、記憶に残っていない絵色女神の胸の感触を思い出そうとする。


決して思い出せないのだが、さっきまで一緒にいた彼女の笑顔を思い出し、

そちらの思い出で喜びをはんすうさせた。


『着替えを近くでするなんて、俺をどう思っているんだ』

口調は怒っているが顔はニヤけている。


『ありがとうございます、終わりました』

彼女が外で待っている立花を呼びこむ。


さっきまでとは違うデザインのTシャツに7分丈のパンツ姿を見た立花は


達成したいと思っていたミッションを思い出した。


『女神ちゃんにお願いがあるんだけど』と

立花が恥ずかしそうに頼み事を言うと


『何ですか、改まって』

『何でも言ってください』と笑顔で彼女が答える。


『いや〜、女神ちゃんとのツ-ショット写真を撮りたいんだけど、ダメかな?』と

頭をかきながら恥ずかしそうに頼むと


『今ですか?』

『メイクもしてないし』

『朝だから、むくんでいます』と

困ったような表情になり


『立花さんとのツ-ショットなら』

『可愛いく見える時が良いんだけど』と

やんわりと断ってきた。


『そうか、そうだよね』と引き下がり

『携帯の待ち受けにしたかっただけだから』と

説明すると


『待ち受け?』と彼女が尋ねてきたので


『会社にいる時とか、電車の中で見たくて』と

さらに恥ずかしそうに伝えると


『やっぱりアタシもツ-ショット写真欲しいです』と俄然やる気となってきた。


2人で並び、顔を近づける。

至近距離に緊張しながらタイマー撮影を何度も繰り返した。


撮り終わった写真には彼女の検閲が入り、彼女が納得しない写真は全て消去となる。


お互いの携帯でツ-ショット写真を見ていたが

『今度可愛いく撮れた時の写真を待ち受けにしてくださいね』と彼女が頼み、立花も笑顔で頷く。


時間を見ると出発予定時間を5分過ぎていた。

『急ごうか?』

立花の呼びかけに

『わかりました』と言いながらバタバタと準備する彼女を笑顔で見守る。


『お待たせしました』

彼女の準備が終わったのは予定時間を10分過ぎての事だった。


旅行カバンをガラガラと鳴らして住宅街を歩く2人の姿を他の出勤途中の会社員が不思議そうに見ている。


かたやス-ツ姿のサラリーマン、かたや海外旅行に向かう女子大生


お二人の関係は?と聞きたくなる。


そんな視線を一切気にしない彼女は

『炊飯器と鍋でしょ、ト-スターも欲しいかな?』と

今晩買いに行く家電屋の事を嬉しそうに話している。


その姿を見て財布が心配になった立花が

『20万円くらいATMから下ろしておこうか?』と聞くが


『いえ、全部揃えて10万円以下にしましょう』と立花に宣言をする。


『先生、お願いします』

おどけた立花の発言に

『任しといてください』と彼女も乗った。


そんな会話をしているうちに自由が丘駅に到着。


『何かあったらLINEしますから』

そう言った彼女に

『今日は携帯を頻繁にチェックします』と立花が答えて


立花は東横線方面へ、絵色女神は大井町線方面へと向かう。


駅で彼女と別れた立花は電車の中で

『これじゃ恋人同士じゃん』

そう思い、ほくそ笑んで隣にOLに気味悪がられていたが気付いていない。


ハイテンションのまま、会社に到着したのは始業時間の10分前だった。


すぐに同僚の棚橋に見つかり

『今日はいつもの立花みたいだな?』

『バ-バラはどうした?』と

話しかけられたが


ご機嫌な立花は

『昨日はナンシ-って言ってなかったか?』

『まぁ、どっちでも無いけど』と

咎める事もなく流す。


その姿を見た棚橋が

『今日は寝不足じゃないんだな』

『バ-バラは帰ったのか?』と茶化すと


立花は

『昨日も泊まって行ったよ』とクチを滑らせてしまったのだ。


マズい、と立花も気づいたが、時すでに遅しで


『昨日も泊まった?』と

大絶叫で叫び、下のフロアの人間まで聞こえそうな声を出したのである。


昨日の棚橋の報告を聞いていた人間はピンと気付き、ヒソヒソ声で

『昨日も泊まったらしいぞ』と言ってコチラを見てくる。


2回目の暴露に立花も怒り

『声がデカいんだよ』と

棚橋の胸ぐらを掴んで抗議するが


当の棚橋は大喜びのままで

『詳しく教えろよ?』と

立花の抗議を無視して、更なる情報を聞き出そうとしている。


『言わねぇよ』と頑としてクチを割らない立花と、はしゃいでいる棚橋に


『おい、そこ』

『朝礼を始めるわよ』と女性上司の藤波係長が注意をして、その場は一旦落ち着いた。


朝礼が終わり、棚橋と立花が再びじゃれあっていると藤波係長が近づいて来て

『ちょっと良い?』と話しかけてくる。


2人が藤波係長を見ると

『今日もヘルプを頼みたいんだけど』と

仕事の依頼をしてきたのだ。


頼んだのは当然立花にだった。


昨日の働きぶりに感動した係長が、是非にと頼んできたのである。


だが立花は

『今日は用事があって残業が出来ないんです』と断ると


『ナンシ-か?』と

藤波係長が聞いてきた。


それを聞いた2人は顔を見合わせて、再び絡みあってじゃれあう。


『仲が良いのは分かったから』と呆れ顔の藤波係長に言われて


『残業にならない程度でしたら、対応します』と立花が答えると


『ありがとう』と言って、早速資料を出して説明を始めていくのであった。





場所は変わって港区にあるサニーミュージック本社ビル7階


スタジオには集合の40分前だが絵色女神の姿があった。


1番乗りと思っていたが同期で加入した越中美桜が既にスタジオに入っている。


『美桜ちゃん、おはよう』

絵色女神に挨拶をされた彼女も

『女神ちゃん、おはよう』と返してきた。


今朝見た韓国のアイドルグループのド-ム公演の話を絵色女神がすると

『見た見た、凄かったよね』と美桜も興奮気味に感想を伝えてくる。


そんな話をしている最中だが、絵色女神には、彼女に聞きたい本題があった。


それは新規メンバーの合格発表があった2週間後に絵色女神と越中美桜が2人で、たまたま話していた時の会話の時の事だった。


『女神ちゃんって彼氏いる?』

何かの話しの流れで越中美桜が絵色女神に質問をしてきたのである。


『アタシいないよ』

『美桜ちゃんは?』


そう聞かれた彼女は

『ウチ、2年付き合っている彼氏を熊本に残してきてるんだよね』と言っていたのである。


絵色女神は、その話を聞いてビックリしていた。


アタシより1コ下だから、中学生の時から付き合っていたんだ


それと同時に付き合いがどこまで進んでいるか?知りたかった。


これが男同士なら

『もうヤッタのかよ?』と立花の同僚のように無神経に聞けるのだが


お年頃の女の子の場合は興味はあるが、聞く事が出来なかったのである。


絵色女神が今日聞きたいのは男の心理であった。


他愛のない話をした後に声のト-ンを落とした絵色女神が

『美桜ちゃん、ちょっと聞きたい事があるんだけど』と切羽詰まった雰囲気で質問をしてきた。


彼女の、ただならぬ雰囲気を察した美桜が

『やばい話?』と

悪い笑顔で聞き返してくると


『そう』

『男の人の話』と答え

周りをキョロキョロ見渡した後、更に顔を近づけたのである。


『美桜ちゃんって彼氏と付き合って長いんだよね?』

そう聞かれた美桜が

『もうすぐ3年かな?』と答えると


『彼氏に胸を触られたのは付き合って、どのくらい経ってからだった?』と

恥ずかしそうに聞いてきたのだ。


『何?女神ちゃん彼氏出来た?』

美桜が自分の事のように喜びながら、逆に質問してきた。


『え?彼氏って訳じゃなく!』

『気になる人って言うか』

『まだ、ハッキリと...』

そう言った後クチがモゴモゴして言葉が続かない。


『え?何処で知り合ったの?』

『え?業界の人?』


絵色女神の質問は忘れられて、美桜からの質問が続くが、困った彼女は照れているだけだった。


その姿を見て

『ゴメン、ゴメン』

『質問って、胸を舐められたのは付き合って、どの位経った時だっけ?』と聞き返すと


『違う、違う』

『初めて触られた時がいつ?って』

そう訂正しながら、顔を真っ赤にさせている。


『昔の事だからハッキリ覚えてないけど』

『付き合ってから3ケ月くらい経ってからかな?』と古い記憶を辿って答えると


『3ケ月か...』

そう言って固まってしまった。


それを察した美桜が

『どうしたの?』と彼女に聞くと


『初めて会った、次の日は早いよね?』と

静かに答える。


『女神ちゃん、それは早いよ』

『彼氏じゃない男と次の日にやっちゃうのは』

そう美桜が言ってる途中で


『やってない、やってない』と

全否定してきたので


『やってないの?』

『でも胸は触られたの?』と

不思議そうに聞いた後に


『キスは?』と美桜が聞くと


『まだ...』と絵色女神が恥ずかしそうに答える。


『やっていないけど、胸は触られた?』

『それって、どういう状況?』

『相手は何者?』

頭の中の整理が出来ない話を聞いて

かえって越中美桜の興味は大きくなった。


『ゴメン詳しくは話せないないんだ』

『忘れて』

このような状況になる事を想像していなかった絵色女神は美桜に質問をした事を後悔していた。


男は好きでもない女の胸でも触りたいものか?


裏を返せば、好きだから胸を触ってきたと思いたかった。


そこだけを聞きたかったのだが、言いたくなかった、コチラの情報をつつかれて逃げるのに苦労をしていると


徐々に先輩メンバーやマネージャー連中もスタジオ入りしてきて美桜の追求もそこまでとなった。


権太坂の中でも単独で番組に呼ばれたりする何人かのメンバーには専任マネージャーがつくが


絵色女神のような、その他大勢には10人ほどに1人のマネージャーとなっていた。


そのマネージャーを見つけた時にマンションをスト-カ-に見つかってしまった件を報告しなくては、と思い出した彼女


『佐野さん、ちょっと良いですか?』と

女性のグループマネージャーに声を掛けて

『借りて貰っているマンションがファンの人に見つかってしまったんです』

『怖くて家に帰ってないんです』と言うと


『女神ちゃん、大丈夫?』

『襲われてない、平気?』と心配をし、大騒ぎになっていく。


家の扉に

『女神ちゃんの家を見つけた』そんな紙が貼ってあった。


立花の家に2日間も泊まっていた事を隠す為に

それが今朝の事だったと報告すると、すぐに男性スタッフも10人ほど集まり、マンションを見に行く事となった。


打ち合わせの集合時間9時になり、権太坂のメンバー全員が揃ったが


スト-カ-事件で大騒ぎとなり、開始が見通せない状況に困惑する絵色女神だった。














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