お隣さん
入学式の日。
僕は出席番号順に指定された席に着席して、好奇心が働いて隣の席は誰だろう?とすぐ横をチラッと振り向く。
そこにはまるで化粧っ気の無いひと目ですっぴんとわかるあまり存在を主張しない大人しそうな女の子が座っていた。髪型はよく高校生で見かけるようなおかっぱまではいかないまでも前髪の整ったキューティクルが綺麗な黒髪のボブヘアー。
ボーッと黒板を眺めてるように見える。
入学したらまず最初は隣の席の人に話しかけようと意気込んでいたけど、これは…無理かもしれないな。
僕は視線を前に戻すと目の前にあいかが居た。
「ねぇ、ゆうの斜め後ろの席あいかなんだけど。高校では隣になれなかったね~。あーあ。」
なんだか悔しそうにチクチクと言ってくるあいか。
何も悪いことしてないのに責められてる気分になる。
「そりゃあ、五十音順なんだから高校にもなれば順番もズレるだろ。隣じゃなくたってクラス同じなんだし、文句言うな。」
僕は面倒なので、バッサリ話を切るように言ってやった。
「そうだけど~。違うじゃん。そういうことじゃなくて~。」
なんとも歯切れの悪い言い方をするあいか。
お隣さんに申し訳なくなって、つい声を掛けてしまう。
「あっ、うるさくてごめんね。僕はゆうって言うんだけど、名前聞いてもいいかな?」
「...」僅かに沈黙するお隣さん。
「わたし?わたしはみう。聞き取れなくて「みゅう」ってのばして呼ばれることあるけど……み、う、ふたもじ。」
一瞬ヒヤッとしたけど、無難に自己紹介してくれた。
「みうさんね。これからお隣同士仲良くしてね。」
僕はなんてことない当たり障りのない挨拶で締める。
「わたしはあいかだよ!みうちゃんよろしくね!」
しれっと流れるように挨拶するあいかは流石である。
「...よろしく。」 ちょっと間を空けて挨拶を返す彼女。
この調子で高校生活は愉しく過ごせるのだろうか。
一抹の不安が過ぎる中、僕の高校生活が始まった。