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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第三章 メグラン王国騒乱記
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トッピナーの提案

翌朝。


就寝時刻が遅かった割に、皆の顔に疲れの色はさほど見られなかった。

やはり気候がかなり穏やかになってきたのと、寝ずの番をアミリアスが

受け持ってくれている点が大きい。遥か遠くからの接近も残らず察知が

可能とあれば、これ以上安心できる見張り役はいないだろう。


「お疲れ。」

『いえいえ。星もきれいでしたし、皆さんの寝言も楽しめましたし。』

「は!?」

「ね、寝言!?」

「何を言ってたんですか!?」


『そこは寝ずの番の特権ですよ。』


体があれば涼しい顔をしただろう。少なくとも、語る気はないらしい。

朝から、皆は無駄に悶々とした。


================================


「さーてと。」


身支度を整え、朝食と相成った。

ちなみに、調理を担当しているのは専らアルメダである。万事において

要領の悪さが際立つ彼女も、なぜか料理はかなりの腕を誇っている。


「何で教えてくれなかったの?」


不本意そうなメリゼの問いかけに、アルメダは真顔で答える。


「侍女とは本来、お料理を担当するお仕事ではありませんから。」

「……そう言えばそうよね。」


馬鹿な事を口にしたと思ったのか、メリゼは少し赤くなって俯いた。

専属の料理人がいるのに、どうして侍女がわざわざ料理をするだろう。

そんな益体ない2人のやり取りに、周りの人間も苦笑を浮かべながら

朝食をかき込んでいく。


昨日と比べれば、ずいぶんと空気は明るくなっていた。


================================


のんびりする身分ではないにせよ、無駄に急く必要なども特にない。

まずは、昼になるまでにこれからの方針を決定して出発する。それが、

とりあえずの予定だった。


「ま、早急に必要になるのは金。」


なぜか積極的に進行役を買って出たトッピナーが、まずそう切り出す。


「酒の値上が…はまあ置いといて、今のこの人数でいつまでも所持金を

切り崩してばかりってのは厳しい。とにかく、何としても日銭を稼いで

糊口を凌ぐ方法を確立しないと。」

「しかし、今のこの国でそんな生活基盤を築く事が可能でしょうか?」


手を上げた大兵のアルフが問う。


「人間の冒険者の大半がジリヌスに流出しているとは言え、我々には

社会的な信用がありませんよ。」

「それは認める。」


あっさりそう答えたトッピナーが、やがてルクトの方に視線を向ける。


「…ちょっと前に、彼も同じような理由で路頭に迷ってた事があった。

彼を追い出した勇者メリフィスが、よりによって彼が人魔だという事を

国中に通達させたからね。しかも、他でもないジリヌス国内で。」


「ジ、ジリヌスで?」

「ええ…」

「それはまた…何とも…」

「大変だったでしょうね。」


アルフに加え、ルブホ・シャリア・イバンサがその話にドン引きする。

ジリヌスから来た人間にとっては、人魔であると国中で露見する事実の

意味は、ひときわ重いのだろう。

と同時に、今の今までその事を全く知らなかったのは、やはり彼らが

冒険者ではなく兵士だった…という事実の表れでもあった。


「まあ、最初は途方に暮れました。だけど、運よくトッピナーさんに

抜け道を教えてもらったので。」

「抜け道ですか。」


シャリアが興味深げに食いつく。


「つまり、何らかの形で己の素性を隠す方法があると?」

「要するにそういう事です。むろん簡単には行きませんでしたけど。」

「あー、アレね。大変だったね。」


ディグロー掃討を思い出したらしいガンダルクが、しみじみと呟いた。


「…ま、それをもう一回やろうって提案ですよ。この面子でね。」


皆の顔を見回しつつ、トッピナーがあらためてそう宣告する。


「つまり何かしらの厄介な案件を、ギルドを通さず現地で請け負うって

話ですよね。んで、その報酬としてライセンスを発行してもらうと。」

「そのとおり。」

「え、それって大丈夫なんですか?ギルドを通さないというのは…」


ルクトとトッピナーのやり取りに、再びアルフが疑問を口にした。


「詐称になるんじゃないかと思うんですけど、許されるんですか…?」

「誉められた事じゃないけどね。」

「ええ…」


悪びれもせず言い放つトッピナーのふてぶてしさに、アルフはさすがに

不安そうだった。大柄な割に、彼はプローノの部下5人の中で際立って

気が小さい。どうも見た目の迫力とイメージが合わない人物だった。


「別にいいじゃないですか。」


そんな問答に、メリゼが口を挟む。


「法に反してるかも知れないけど、別に悪い事しようって話じゃない。

時と場合によると考えましょうよ。それが一番ですって!」

「ええ…まあ…ハイ。」


妙に勢いあるメリゼに押し切られ、アルフは曖昧に頷いてしまった。

そんなやり取りをすぐ傍で見ていたガンダルクが、愉快そうに笑う。


「にゃははは。王女さまのお許しが出たって事ね。心強い限り!!」

「ですよね?あたし王女だし!!」

「メ、メリゼ様…?」


もはや、勢いだけで突っ走っている感のあるメリゼ。



そんな主の言動に、アルメダだけがひたすらオロオロしていた。


================================


「大体の話は分かった。…右も左も分からぬ我々6人に対しての配慮、

まことに感謝します。」


居住まいを正して、プローノがそうトッピナーに告げる。


「ある意味恩を売ってるだけです。あまり気にしないで下さい。」

「それでは、これからどこかの街のギルドへ赴いて、適している依頼を

探す事になるのでしょうか?」

「いやいや。」


ルブホの質問に対し、トッピナーは笑いながら手を振った。


「もう当ては見つけてますよ。」

「え?」

「どこで?」

「もちろん、昨日行ったチョルサの冒険者ギルドでです。」


そう言いながら胸元を探り、小さな走り書きを取り出す。


「スランナグたちから話を聞いた、そのついでにね。」

「あ、あの時にですか…。」


素直に感心するルブホたちに対し、トッピナーはほんの少し胸を張る。


「こう見えて、ギルドの受付として長く勤めてましたからね。」

「頼もしい!!」

「さすが!!」


メリゼとアルメダが、息を合わせて賞賛の言葉を送った。


「まあ、任せなさいって。」

「具体的に、どのくらいのキャリアをお持ちなんですか!?」


「ぐっ」


ドヤ顔になっていたトッピナーが、その質問に少し顔を歪ませる。


「…?」

「ね…年数は聞かないで。」

「ご、ごめんなさい!!」


明らかにダメージを受けているその声に、メリゼは慌てて詫びた。

さすがにいろいろと察したらしい。


年数を知っているらしいルクトは、ただひたすら目を合わせないように

顔を背けていた。


ともあれ、方針は決まった。



出発の時は、もう間もなくである。

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