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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第三章 メグラン王国騒乱記
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知らぬが何とやら

冒険者ギルドの中は騒がしかった。しかしルクトたちは、特に気にせず

目当ての相手の姿を探す。


自分たちがギルドを訪れれば、必ずロクでもない話を聞く羽目になる。

もはやそれは、ウズロの街の時から連綿と続くお約束のようなものだ。

だから余計な気を回さず、とにかく目的だけをさっさと済ませる。


さいわい、探すまでもなかった。

ちょうど話を終えたところらしく、受付カウンターを離れた4人の目が

ほぼ同時に正面のルクトを捉える。相手が自分を認識した事を確かめ、

ルクトは軽く右手を上げた。


「よう、ピルバス。」

「お前…ルクトか?」

「あー、あなたたち!!」


驚いたピルバスの後ろから、小柄な少女-リアンホが声を上げる。


「にゃははは、元気そうね。」

「あらまぁ。…5日ぶりだっけ?」


さらに背後にいた女性-スランナグの視線が、チラッと二番刀の方へと

向けられた。


「元気そうね。」

『そちらも。』

「おかげさまで。」


「久し振り」と形容するほど日数は経っていない。

それでも、その5日間はあまりにも内容が濃く、重かったのも事実だ。


入国直後を思い出し、ルクトたちは我知らず相好を崩していた。


================================


「それで、どんな情勢だ?」


ギルドの中をざっと見回しながら、ルクトがピルバスに質問する。

メリゼやプローノたちは少し離れた場所に陣取り、小声であれやこれや

他愛のない言葉を交わしながら耳を済ませている。


「お前たちはどうなんだよ。」

「この街に着いたばっかりだから、とにかく右も左もって感じだよ。」


少なくとも嘘ではない現在の状況を説明しつつ、ルクトはあらためて

ピルバスたちに水を向けてみる。


「そっちは。王都まで行ったのか?…確かメリゼ王女の安否をどうにか

確認したいとか言ってたよな。」

「ああ、もちろん行ったよ。」

「本人にお目にかかるなんて事は、もちろん出来なかったけどね。」


スランナグがそう言って小さく肩をすくめる。彼女の視界のすぐ脇で、

そのメリゼ本人も肩をすくめたのがチラッと見えた。


「だけど、王都は思っていたよりは平穏だった。今のところ、王女にも

これといって目立った動きなんかはないみたいだな。」

「そうか。…まあ、平穏だったならそれに越した事はないよ。」


どうやら、メリゼ王女が首都宮殿へ引越しするという話は、どこまでも

極秘かつ性急な提案だったらしい。丸ごと無かった事にされている。

そう言えば、ウォレミスの街で襲撃された際も馬車は1台だけだった。

本当に文字通りの「お忍び」として行動させられた事実を考慮すれば、

ごまかす事は大いに考えられる。


素早く話を整理したルクトは、彼らにだけ通じる話題を振ってみた。


「…じゃ、ジリヌスから来たという刺客も姿は見せなかったのか。」

「王都には来なかったみたいね。」

「王都()()?」


何気ない口調のリアンホの言葉に、トッピナーが反応する。


「つまり、今日までにどこかしらに現れた…って事なのね?」

「ああ、昨日だよ。」


ここまでずっと黙っていたもう一人の男、カルドスが告げた。


「ここから少し西にあるウォレミスの街で、ならず者と一緒になって

大暴れしたらしい。」


================================


うかつに視線を向けられないのが、ルクトには何とも残念だった。

今この瞬間、プローノたちがどんな表情になっているか見れないのが。


「ウォレミスって造酒の街よね?」


とぼけた口調でトッピナーが問う。


「わざわざジリヌスから来た連中がまた、どうしてそんな場所に。」

「昨日の今日だから、まだまだ情報は錯綜してるんだけどな。」


そう言い置いて、ピルバスが質問に答えた。


「俺たち4人は行ってないんだが、ウォレミスで大乱闘があったのは

確かな話らしい。街の中心部なんか半壊状態だってよ。実は現場にいた

同業者が何人かこっちに流れてて、そこから情報が漏れてきたんだ。」

「そうか…」


何となく、ルクトたちは周りにいる人間たちの顔を見回す。さいわい、

自分たちに見覚えのある者は一人もいないらしかった。


「だけど皆、何が目的だったのかについては言葉を濁す。騒ぎの後には

国軍の兵士が大勢来たらしいから、何か言われたのかも知れないな。」

「…国軍の兵士?」

「そりゃまた、ずいぶんと大ごとになったのね。」

「ああ。どうやらその場に残ってたならず者どもは、一人残らず捕縛。

処刑は免れないだろうって話だよ。…ジリヌスの人間なんかと組んで、

何を企んでたんだろうな?」

「まあ、よっぽど酒が欲しかったんじゃないのかね。」


適当な言葉を返したルクトに対し、スランナグが大きく頷いた。


「そうかもね。まあどっちにせよ、ウォレミスがそんな状態になれば、

ここらでも酒は値上がりするよ。」

「えっ。」


それまでしゃあしゃあと話していたトッピナーが、その言葉に固まる。


「さ、酒が値上がり…?」

「被害が半端じゃないみたいだし、しばらくは仕方ないわよね。」

「そんな…」


意識がそっちの話に傾いてしまったトッピナーはともかく、ルクトも

かなり肝を冷やしていた。


あの場に国軍兵が来たというのは、やはり準備が周到過ぎる。

どこからもその情報が得られなかった事を思い返せば、襲撃の計画自体を

強引にでも隠蔽してしまうのが主な目的だったのだろう。たとえ計画が

成功しようとしまいと、宰相クラスの人間の関与が露見するのを防ぐ。


あの場にモタモタ留まっていたら、自分たちもどうなっていたか。


あらためて間一髪だったのだという事実を、全員が痛感していた。


================================


「ま、そんな情勢だよ。」


説明を終えたピルバスが、大げさに肩をすくめた。


「ジリヌスの奴らは、今も消息不明らしいな。…何をしに来たにせよ、

ウォレミスの被害を考えればたぶん賞金首になる。それを追うのも、

選択肢のひとつかなと思ってる。」

「あんまり、深追いはするなよ。」

「もちろんだとも。」


ルクトの心配に対して、ピルバスは苦笑しながら答える。


「俺たちにも生活ってもんがある。気になってる話は確かに多いけど、

さすがにガッツリ関わろうとまでは考えてないよ。」

「うん、それがいいよ。絶対に。」


実感のこもった口調で、ガンダルクがピルバスたちに告げた。


彼らは、確かにかなり出遅れた。

王女メリゼの身を案じていながら、すぐ近くにそのメリゼがいる事にも

気づけていない。はっきり言って、蚊帳の外の存在だろう。


しかし、聞けば聞くほどこの騒動の根は深く、そして闇も深い。

知らずにいる方がいいというのも、また間違いのない事だ。



もたらされた情報は、ルクトたちの想像をかなり超えるものだった。

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