表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第三章 メグラン王国騒乱記
87/703

新たな姿で挑む

ガンダルクの記憶どおり、街道から少し逸れた空き地に商人たちが集う

キャラバンが存在していた。全体の規模を考えれば、望む物はそこそこ

手に入るだろうと思われる。


「でもまあ、買い物はあたしたちで行ってくるから。」


乗り気になっていたプローノたちを制し、ガンダルクとルクトの2人が

買い物係を買って出る。


「さすがにその格好じゃあ、誰かに言いがかりつけられても仕方ない。

とりあえずは任せてよ。」


自分で選びたそうなアルフたちも、ジリヌスの兵士然とした今の容姿を

指摘されると反論ができなかった。せめて好みぐらいは聞くよ、という

ガンダルクとルクトに、あれこれと注文をつける。さすがにプローノは

サイズしか要望は口にしなかった。


「王女さまはどうします?…何か、ご希望ありましたら聞きますが。」

「いえ、特には…」


遠慮しているのか、それともここで希望通りの物など望むべくもないと

あきらめているのか。メリゼは特にリクエストなどはしなかった。

しかし。


「あ、じゃあメリゼ様のお召し物はあたしが見繕いまぁす!!」


そんな名乗りを上げたのは、侍女として張り切るアルメダだった。


「そうね。じゃあ一緒に来てよ。」

「了解です!」

「え、ちょ、ちょっと?」

「それじゃ皆さん、少しの間ここで待ってて下さい。すぐ戻ります。」


予想外の展開にうろたえるメリゼをよそに、3人がキャラバンの方へと

迷いなく馬を走らせる。


「ま、少しの辛抱ですよ。」


何とも言えない表情になったメリゼの肩を叩き、トッピナーが笑った。


「彼女なら、あなたに何が似合うか知ってるでしょうからね。」

「…なら、嬉しいですけどね。」


戸惑うばかりだったメリゼもまた、開き直ったかのように笑う。


いつの間にか、雲は晴れていた。


================================


こういう時、ものを言うのは経験である。メリフィスのパーティーの

一員として活動していたルクトと、百年に渡り世界をブラブラしていた

ガンダルク。世渡りという点では、2人に経験で勝る者がいない。

余計な問題を起こさないという意味でも、他の面々は大人しく待った。


「お待たせー。」


ほどなくして、3人は戻ってくる。


「どうだった?」

「武器関連は大した物がありませんでしたが、服に関してはけっこうな

品揃えでした。それなりに全員分を揃えられましたよ。」


ルクトの言葉は、誰にとっても僥倖と言えるものだった。

自前の物がある以上、ここで武器を買おうとは思わない。それよりも、

とにかく堂々と行動できるような服さえ手に入れば大助かりである。


「じゃあ、さっきの広場まで戻って着替えましょう。」

「え、戻るのか?」

「そう。」


怪訝そうなイバンサの言葉に対し、ガンダルクが肩をすくめて答える。


「着替えられそうな場所を探しつつ移動とか言うと、逆に手間かかる。

まずはこれを優先すべきって事よ。いいでしょ?」

「まあそうか…。」

「かまいませんよね王女様?」

「……」

「もしもし聞いてます?」

「えっ!?…あぁ、ハイもちろん。それでいいと思います。」


アルメダから渡された服に見入っていたメリゼが、半端な答えを返す。

何となく興奮している様子だった。


そうと決まれば善は急げ。

一同は、来た道を一気に引き返す。


どことなく気楽な雰囲気が、王女の窮状には何とも不釣合いだった。


================================


「にゃはは、いい感じじゃん!!」


集合場所に戻って、しばらくのち。

ルクトたち3人を除くそれぞれが、着替えを済ませて再集結していた。


「…うん、確かに。」


感心したような口調で言ったのは、剣士風のラジュールだった。

他の面々も、自分以外の出で立ちを見比べながら何度も頷いている。


さっさと見繕ってきた割に、2人のチョイスはなかなか的確だった。

安く済ませるために全て古着のみで揃えた事が、結果的にいい感じの

ベテラン感を醸し出している。特にプローノは、古豪の勇者といった

独特の貫禄が生まれていた。唯一、アルメダが全てコーディネートした

メリゼは、射手か貴術師を思わせる軽装でまとめられている。フードを

被ってしまえば、まず誰であるかは露見する心配もないだろう。


「うんうん、似合ってる。」


彼女の着替えを手伝ったトッピナーが、出来栄えに満足していた。

服を選んだアルメダもまた、ぐっと胸を張って誇らしげな表情になる。


全体的な見てくれの問題は、これでほぼ払拭されたと言ってよかった。


================================


「そんじゃ、とにかくどこかの街を目指そうか。ねえ?」

「そうだな。」


ガンダルクの提案に対し、プローノが賛同の意を示した。


「何しろ今は情報が欲しい。現状、メリゼ様はいわゆる”行方不明”だ。

その事をどんな形で公表するのか、もしくは公表しないのか。その辺を

きっちり見極めない限り、次の手が打てないからな。」

『公表しないって選択肢、この局面ではあり得る話でしょうかね?』

「考えられなくはないですね。」


アミリアスの疑問に、メリゼ自身が食い気味に即答した。


「引越しが極秘であった以上、あのウォレミスの街での襲撃がこの私を

狙ったものだという事実さえ丸ごと隠蔽されかねない。…そうなれば、

今この場にいる私を宰相ウルムスは絶対に認めないでしょうね。」

「だったら急ぎましょう。」

「うん。」


ルクトの号令を受けて、再び全員が馬に分乗する。

走り出す前に、ガンダルクが全員を見回してポツリと言った。


「冒険者パーティーの合同チーム…って感じになったねぇ。」

「…いいですねそれ!!」


「え?」

「は?」


思いのほか強く食いついたメリゼの声に、皆が怪訝そうな表情になる。


「いや、形だけですから…」

「じゃ説得力を持たせましょう!」

「せ、説得力?」


意味不明なメリゼのハイテンションに対し、ラジュールは困惑した。


「…と言われますと?」

「見た目だけじゃなく、きっちりと実績も積みましょうよ!」

「え…」

「ええ?」


「私も頑張って鍛えますから!!」


何やら、王女の中でくすぶっていた感情を大いに刺激したらしい。

完全に”その気”になっているのは、目を見ればすぐに判った。


「いいんじゃない?そんなのも。」


相変わらず気楽な口調でガンダルクがそう答え、メリゼもアルメダも

同じような笑顔になる。



「よおし、何はともあれ出発!」


響き渡るルクトの声が合図だった。7頭の馬が、あらためて駆け出す。


まずは街へ。

それからの事はそれから。

見通しなんて、今はそれでいい。



駆ける足並みはどこまでも力強く、そして迷いなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ