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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第三章 メグラン王国騒乱記
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動き出す一行

「さてと。」


やっと立ち上がったガンダルクが、皆に視線を向けて苦笑する。


「ずいぶん長いこと待たせちゃって申し訳ない。本題に入ろうか。」

「そうだな。」


同じく苦笑したプローノが、傍らに並んで立つ4人の兵士に向き直る。

彼らもまた、毒気を抜かれたような顔になって苦笑していた。


「…お前たち、異存はないか?」

「ええ。」

「はい。」

「もちろん。」

「大丈夫です。と言うか…」


答えた4人の中で、中性的な顔立ちの剣士が肩をすくめて続ける。


「まずはちゃんと彼女を見極めろ…というプローノ様の言葉の意味が、

今になってよく分かりました。」

「あ、そんな前置きがあったんだ。じゃあ、とりあえず合格かな?」

「ええ。我々はあなたたちを信じる事にします。どうぞよろしく。」

「にゃはははは。こちらこそ!」


笑って答えたガンダルクの右腕が、並んで立つアルメダの肩を抱いた。


「ある意味、あんたが突っかかってきたおかげかもね!」

「え!?いやあの…はい。」


「いい加減、話を進めようぜ。」

「そうそう!」


痺れを切らしたルクトとトッピナーが、愉快そうに告げる。


場の空気は、ようやくはっきり動き始めていた。


================================


「俺の名はイバンサ。」

「シャリア・ドルマです。」

「ルブホと申します。」

「アルフ・ゴースと言います。」


兵士らしく、自己紹介の言葉は実に簡潔だった。


槍を携える、屈強な男がイバンサ。

さっきの中性的な男がシャリア。

少し気弱そうな外見の男がルブホ。

そしてもっとも大柄な男がアルフ。


「サルバドル・トッピナーです。」

「ルクト・ゼリアスです。」

『アミリアスと申します。』


ルクトの持つ二番刀が喋る様にも、4人はさほど驚きを見せなかった。

どうやら、そのあたりもプローノに説明を受けていたらしい。

想定よりかなり早かったとは言え、再会は予想していたのだろう。


ガルデンの兵士たちよりは、かなり腕が立ちそうだ…


彼らの立ち居振る舞いに、ルクトはそんな印象を受けていた。


「さあて王女様。」

「えっ、はい!?」


向き直ったガンダルクの呼びかけに対し、かなりの間放置されていた

メリゼが間抜けな言葉を返す。


「後回しにして申し訳ない。じゃあそろそろ、あなたの抱える問題に

きっちり向き合いましょうか。」

「は、はい…恐れ入ります。」


どうやら、自分の立場を少しばかり忘れていたらしい。今になって、

やっとメリゼは表情を引き締める。


やれやれという表情を浮かべ、傍らのラジュールがため息をついた。


================================


このメグラン王国では、王族の姿を目にする機会などは滅多にない。

家族の構成などについては、かなり具体的に公示されている。その一方

どこに住んでいるか、どんな容姿かなどについては知らされていない。


「なので、パッと見で私をすぐ認識できる人はほとんどいません。」

「おお、そりゃ好都合だね。」


そんなメリゼの申告に、ガンダルクが嬉しそうに答えた。


「んじゃあ、いかにもな服を着たりしない限りはバレないって事ね。」

「でも本当に大丈夫でしょうか?」


アルフが少し心配そうに告げる。


「ウォレミスの街での襲撃には大勢が参加していましたし、生き残った

者もかなりいるはずです。どこかでまた遭遇すれば、すぐに…」

「いや、それは心配ないよ。」


やっと髪が乾いたらしいトッピナーが、気楽な口調でアルフに答えた。


「確かに周到な襲撃だったし、情報が前もってもたらされてたってのも

事実。だけど、その情報はあの場所を馬車で通る話に集約されていた。

つまり、それを逃した今となっては何もかも台無しでしょ。」

「ああ。千載一遇のチャンスとして設定されてたからな。…少なくとも

今の時点で王女が行方不明な以上、同じ事はもうできない。」


トッピナーの説明を補完したルクトの目が、空に向けられる。


「グルークはかなりの距離を飛んだから、連れ去られた場所の予測も

ほとんどできないはずだしな。」

「そうそう。だから堂々と行こう。意外と何とかなるって。」


気楽な意見ではあるものの、そんなガンダルクに異論を唱える者は特に

いなかった。確かに、下手に厳重な警護をすると怪しまれるだろう。


「じゃあ、このままどこかの街まで行きましょうか。とりあえずは…」

「いやいやいや。…ちょっと待ってください。」


勢い込んだラジュールの提案に対し、ルクトは手を振りながら言った。


「むしろ、見てくれに問題があるとしたらあなた方ですよ。」

「え?」

「我々が?」

「…どうして?」


兵士たちが、プローノとラジュールを含めてキョトンとする。

さすがにルクトは笑いを堪えた。


「どうして、って。どっから見ても皆さん、ジリヌスの兵士団ですよ。

ただでさえややこしい情勢なのに、そんな姿の一団がウロウロしてたら

王女以上に目立ちまくりです。まず皆さんの見てくれを変えないと。」


「えっ」

「…ああ、そうか。」

「言われてみれば…」


誰も気づかなかったのかよ。


そんなツッコミを何とか呑み込み、ルクトが皆に告げる。


「今の俺たちは全部で11人です。下手に武装は解きたくないので、

冒険者パーティーの連合という体で行動するのが堅実だと思います。

…俺たちはこのままでいいとして、まず皆さんの服装だけでも何とか

それっぽくしましょう。」

「…うん、そうだな。」


さすがにいささかばつの悪い表情になったプローノが、同意を示す。

自分たちの発想の至らなさに、他の5人も視線を泳がせていた。


「気にしない気にしない!」


言い放ったガンダルクが、馬で来た道に向き直って告げる。


「とにかく移動しよう。来るまでに商人のキャラバンを見かけたから、

そこであれこれ調達すればいいよ。こっからは行動あるのみ!」

「そうですね。」


恥ずかしそうな笑みを浮かべたアルフが、そう言って馬の首を叩いた。


「あんまり暗く考えても仕方ない。まずは動きましょう。」

「よっしゃ!」


全員が、異口同音に同意を示した。



もともと出自も何もかもバラバラな者たちの集まりだ。

足りない部分は補い合えばいい。

王女だ護衛だと妙に肩肘を張らず、とにかく前に進む。


「じゃ行こうか!」


全員の気持ちが揃った事が、出立の合図となっていた。

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