●アクションシーン解説 30●
●魔鎧疾装騎の高速戦●
ザンツ戦以降初めてとなる大規模な戦闘であり、これまでにない演出を
したい…と考えた結果の高速バイクチェイスとなりました。
魔鎧疾装騎の元ネタは、08年公開の映画「ダークナイト」のラストに
登場したバットポッドです。バットモービル・タンブラーの前輪部分が
そのままバイクに変形するという、ギミックのオマージュになります。
もちろん、これは「バイク」という概念から設計されたガジェットでは
ありません。魔鎧兵の標準的な装備となった脚部のローラーダッシュを
移動手段に転用出来ないか、というアイディアから発展した代物です。
異世界転生による現代の知識を一切取り入れず、バイクを登場させる。
魔鎧兵とエゴイがあってこその発想だったと思います。
搭乗者は2名。1人がルクトなのは既定路線として、もう1人は誰か。
順当に選ぶならガンダルクだろうと思われますが、やはりインパクトが
欲しいのでアルメダに決めました。とは言えかなりリスクが高いので、
二番刀内臓型のロボットカーにする事で強固なる補助システムを搭載。
ナイト2000も真っ青のAI搭載マシンになりました。このあたりは
考えるのが非常に楽しかったです。通常ならタンデムシートが必要でも
二番刀なら格納スペースも細く作る事ができる。まことに機能的。
とは言え、3人乗りくらいはできるボリュームとパワーはありますが。
騎馬軍団との戦闘シーンの元ネタは87年公開の映画「天山回廊・ザ・
シルクロード」中盤の競技シーン。騎馬民族たちの中にオートバイで
乱入するシーンのオマージュです。車体側面から伸ばした鎖鞭によって
急旋回するシーンは、89年公開の映画「バットマン」に登場していた
バットモービルのオマージュです。昨今のハイテクマシンと一線を画す
アナログなハイスペック描写が当時好きだったので。
キールとギールは、ライドラグンの活躍を1回ぐらい描きたい…という
思いから登場させました。ルブホの隠蔽術で馬に見せかけるという案は
自分でも無茶だなーと思ってます。事実上、彼の最後の見せ場でした。
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●メリフィスたちのガジェット●
ルクトたちと別れたメリフィスたちも、それなりに進化を遂げている。
フィジカル面でなくガジェット面でどう変わったかを描くシーンです。
ソーピオラの左の義手をメリフィスが活用するという展開は、意外性を
狙った演出です。常に一緒にいるという前提ありきですが、この場合の
意外性は読み手だけでなく、彼らが戦うべき相手に対しての不意打ちと
いう意味でも色々考えました。拳が外れて十徳ナイフ並みに活用できる
構造など、我ながらよく思いついたなと思う次第です。イメージ的には
アクションものの洋画で、護送車の中で囚人たちが奇襲をかけるような
シークエンスを参考にしました。
ザンツとの決戦時に折れてしまったメリフィスの剣。代わりとなる剣を
エゴイが作るというのは当然の流れと思うので、他と同様にギミックが
満載の特殊な鞘を考えてみました。空中浮遊ボードになるギミックは、
もちろん映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズに登場した
ホバーボードのオマージュ。また、手をかざすと中にある剣が飛び出す
ギミックは、サム・ライミ監督版の映画「スパイダーマン」に登場する
グリーンゴブリンのグライダーからイメージしました。
テンプレ的な勇者にはしたくないという意向はずっとありましたので、
あえてメリフィスにもこんな奇抜なガジェットを付与してみました。
剣を持てば間違いなく最強だけど、他の戦い方もできる。メリフィスの
柔軟さを描写するという意味でも、このあたりのガジェット系バトルは
書いていて楽しかった印象です。
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●ロープスアの混沌●
現魔王がついに本格的に動き出し、ジリヌス王国の首都が混乱に陥る。
終盤に向けての布石的な戦闘です。
ザンツ侵攻の際に世界中で行われた魔獣人化と似て異なる、ある意味で
それよりも残酷な魔人化。人格自体が失われないという設定はやはり、
魔王から世界への挑戦状的な意味が強いです。こうなってしまった後で
君たちはどう生きる?的問いかけ。
魔人に変えられた国王センドレンとメリフィスの戦いは、ワンサイドに
なるとわかり切っている対戦です。いかに強大な魔人に変わろうとも、
ザンツの足元にも及ばない。そして最強と呼ばれるメリフィスも同じ。
どんなに猛ろうとも、メリフィスが本気を出せば確実に瞬殺される。
単騎のメリフィスがどれほど強いかをあらためて描く…という意味で、
バランスのいい対決になったかなと思っています。それほどに強い彼を
片手間でふっ飛ばすジュンカ。強敵というアピールももちろんですが、
この時点で「昔の勇者パーティーのメンバー」という可能性もそこそこ
示唆しています。国王の護衛の者が「人間ではないのか」という仮定を
していたのもひとつのヒントです。
戦士団に関しては、ガルデン防衛戦を経ているからこそ、パニックには
ならなかったという解釈です。魔人になる=破滅…などとは考えない。
グレインによるこの大掛かりな問いに対し、戦士団の面々は意図せずに
明確な答えを出したわけです。サブキャラの域を出なかった彼らなりの
長い物語の中の変遷を、しっかりと描写する事ができました。
そんなわけで、いよいよ戦いの舞台が魔人国アステアに移ります。




