●アクションシーン解説 27●
●ガンダルク対ザンツ●
百余年を経て再び対峙した、魔人国アステアの魔王2人の口喧嘩。
「アクションシーン」と言うほどの派手なアクションはありませんが、
本作においては決して無視できない頂上対戦なので。
現代におけるガンダルクは、どんな存在なのか。
往年の力をほぼ残らず失い、決して鍛えられない肉体で生きている。
取り柄と言えば、素早さと常人離れした圧倒的なバランス感覚くらい。
強大な敵相手では何の決め手もない少女に過ぎません。
しかし、だから無力な存在だという事には決してならない。たとえ力が
誰にも及ばなくとも、誰かを頼り、誰かを信じる事で「結果」を出す。
強い力を持たない故の「強さ」を、彼女は百余年の放浪の中で少しずつ
身に着けていきました。他の誰にも真似などできない、彼女ならではの
強さです。
対してザンツ。返魂術で戻って来た彼は、ある意味ガンダルクの対極に
位置すると言ってもいい存在です。史上最強だったガンダルクの肉体を
持ち、何者であろうとねじ伏せ得る絶対の力を得た。誰もが言う通り、
最強最悪の組み合わせです。しかし実のところ、彼の存在はどこまでも
空っぽです。
「ザンツ」というキャラの原点は、いわゆる転生・無双キャラクターの
パロディです。オマージュではなくパロディ。ある日突然、世界最強の
力と体を与えられ世界に転生した。周りに群がる者たちは自分を崇め、
最強と誉めそやす。そして彼自身は己の得た力を気の向くまま振るい、
特に意味のない破壊と蹂躙を世界に撒き散らしていく。
いいか悪いかでなく、ザンツの行動はとにかく底が浅い。確たる目的を
探す事もせず、偶然に得られた力をわがもの顔で振り回す。そこには、
魔王の威厳も思慮深ささえもない。ガンダルクが形容したとおり、彼は
単なる力の添え物でかありません。だからこそ、彼を見たメリフィスは
ただのクズと軽蔑するだけ。それは負け惜しみでも敵愾心の裏返しでも
なく、ただの率直な感想。百余年を生き抜き、悪である事を貫き続けた
グレモローサの方がよほど立派だと思う。善悪などは全て抜きにして、
メリフィスはメリフィスだからこそザンツをそんな風に評しています。
そしてもちろん、ガンダルクも彼と同じようにザンツの現状を軽蔑し、
そして哀れに思っている。彼の得た肉体が最強だという事は誰より深く
知っているけれど、ただそれだけ。今の己をザンツがどれほど嘲ろうと
腹も立たない。たとえどれほど力の差があろうと、自分はザンツを絶対
怖れない。そして、認めもしない。まともに相手する価値すらもない。
ならば、どうして危険を冒してまで彼の前にたった一人で立ったのか。
もちろん、時間稼ぎや油断を誘うという目的もあった。だけどそれは、
あくまでもついで。ただひたすら、一度ザンツと話しておきたかった。
魔王を継いだ者として、さらに彼を葬った本人として。少しでいいから
言いたい事を言っておきたかった。限りなく彼女らしいワガママであり
最後の落とし前でもある。事の経緯を見守っていたルクトたちにとって
肝を冷やす行為だったと思います。でもさすがに止める事はできない。
何と言っても彼女はアステアの先代魔王なのだから。
「肌着の綺麗な畳み方」を引き合いに出すあたりは、かなり長い伏線に
なりました。アルメダが懇切丁寧に教えてくれたこのちっぽけな事が、
中身空っぽの暴力を振りかざすより何倍も有意義だと信じる。その心を
持つか持たないかが、二代の魔王を大きく隔てている。
あえて薄っぺらなキャラという描写を徹底してきたザンツ。彼に対する
ガンダルクの言葉こそが、本作品に込めた大きなテーマの一つだったと
考える次第です。




