●アクションシーン解説 10●
●チョルサの街の逃亡劇●
第二次心臓狩りの標的にされた魔人の少女を巡る、夜間の戦いです。
この世界では、「海を渡る」という行為はきわめて危険とされます。
航海術が未熟なのに加え、転移系の術でも海上では効力を失ってしまう
傾向があり、あらゆる意味で無事に渡るのが難しいという感じです。
なので、マレ島に到着してしまった時点でルクトたちはほぼ孤立無援。
誰の助けも得られないし、逆に誰を助けに行く事も簡単にはできない。
そんな状況下で描いた、ラジュールの孤独な戦いです。
場所的なイメージは、19世紀頃のロンドン。「切り裂きジャック」に
追われている…という雰囲気で描写しました。元ネタは、98年の映画
「パラサイト」。寄生された人間がどんどん増えて主人公を追い詰める
シークエンスへのオマージュです。ゾンビ映画的な増殖展開ではなく、
明確な一人の「元凶」が全員を支配しているという設定で描きました。
操られた女性が壁を殴って骨折するシーンは「寄生獣」前半に登場した
「A」のオマージュです。それと、操られた人間に術者の意識が上書き
される設定は、同じく98年の映画「悪魔を憐れむ歌」のオマージュに
なります。人ごみの中で、軽く手を触れただけで憑依対象を変えていく
悪魔の描写は、実に絶望的でした。
当初、ラジュールは「いかなる死地からも生還する男」といった設定を
付与しようと思っていました。が、肝心の死地を用意できなかったので
こういう貧乏くじで苦労する人物…的なキャラに落ち着いた次第です。
というわけで、誰の助けも得られず逃げ回っていた絶望展開から一転。
劇中でも最強クラスの魔人・ビザレの登場と相成ります。
そもそも、このチョルサの街の戦い自体が「ラジュールがトッピナーの
家族に遭遇する」という展開ありきでした。ホラーかオカルトかという
陰鬱な展開から、圧倒的強さを持つ魔人が登場して場をひっくり返す。
そして相手の正体を知らないまま、切れたラジュールが漢気を見せる。
実はちょっとませた性格のミミエのキャラも含め、「陰」から「陽」の
極端な切替えを目指してみました。
ラジュールが重要キャラなのは初期から決めていた事ですが、正直な話
この時点でのビザレは「トッピナーがラジュールに気後れする理由」と
いう程度の存在でした。プロポーズを断るための雑な出任せではなく、
本当にめちゃくちゃ容姿が恐ろしい実兄がいる。見たら絶対腰抜かす。
それが嘘ではなかったという点は、当のラジュールにとってはむしろ
救いになる事実です。同時に、そのビザレに(そうとは知らず)漢気を
見せられたのも高ポイントでした。
そして後に、単発の出番で終わったはずのミミエも決戦時に再登場。
初遭遇時はその迫力に失禁していたビザレと、まさかのゴールイン。
こういう形で再登場させる展開は、キャラを問わず楽しかったです。




