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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第二章 逆境のジリヌス王国
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ガンダルクの悔恨

「いやあ、久し振りだねホント。」


しみじみとした口調で言いながら、ガンダルクが小さく笑う。


「…かれこれ、30年振りだっけ?さすがに渋い感じになったね。」

「君は…本当にレムリなのか?」

「そのとおり。」

「……そうだとしたら、君は本当に変わっていないんだな。」


混乱していたプローノの声が、ようやく少しだけ落ち着いてきていた。

それでも、視線は未だにガンダルクに釘付けになったまま。


そんなやり取りを、傍らのルクトは黙って見守っていた。

ガンダルクを目にして、ここまで己を抑え込めているプローノの胆力は

なかなか驚嘆に値する。自分なら、もっと取り乱したかも知れない。


やはり、まがりなりにもガルデンをずっと治めている将軍だ。自分とは

色々な意味で経験が違う…という事なのだろう。


「…しかし、とりあえず元気そうで安心したよ。」

「どうもありがと。」


ぎこちない笑みを浮かべたプローノの言葉に、ガンダルクが答える。


「それでその…」


言いながら、何かに思い当たったらしいプローノの目がルクトに向く。

問われるであろう内容に関しては、かなり予想がついていた。


「もしかして君が、あの守護者(ガーディアン)を破ったのか?」

「そうです。」

「なるほど…!!」


わが意を得たりとばかりに、プローノの顔がパッと明るくなる。


「いや、そこまで腕が立つとはね。何だか嬉しい限りだよ!!」


歩み寄ったプローノが、ルクトの肩をパンパンと強く叩いて称えた。

まるでわが子を褒める父親のような姿に、傍らで見守るガンダルクは

あらためて遠い目でフッと笑う。


プローノの賞賛に応えながら、ルクトはそんなガンダルクから聞いた

昔話を思い出していた。


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「プローノって、ガルデン大要塞の総司令だろ。何で知ってるんだ?」

「まあ、あたしが知り合った時にはまだ将軍でも何でもなかったよ。」


焚火に小さな枝を放り込みながら、ガンダルクが問いに答える。

ガルデンまではあと1日となった、肌寒い野宿の夜だった。


「魔人たちの国外への流出がかなり進んで、世の中は変わっていた。

もはやあたしの名前は過去のものになり、我こそは魔王ガンダルクを…

なんてホラを吹く腕自慢の姿もほぼ見かけなくなっていたっけ。」


パチパチと爆ぜる炎から星空に目を移し、ガンダルクはなおも続ける。


「正直あの頃のあたしは、ほとんどアミリアスに会うのを諦めてたね。

このまま世の中が平和になれば、もう勇者とか冒険者も衰退するだけ。

まかり間違っても守護者(ガーディアン)を倒せるような凄腕は現れないな…って。」

『パッタリ来られなくなったので、亡くなったかと思ってましたよ。』

「よく言うよ…」


口を挟んだアミリアスに苦笑を向けるガンダルクに、ルクトが問う。


「つまりその間、誰もあの洞窟には連れて行かなかったって事か?」

「そう。あたし独りで行っても仕方ないし、何十年かのご無沙汰よ。」

「なるほど。…それであの遺体の状態に、極端な差があったのか。」


納得したルクトもまた、焚き火に枝をくべた。


「それで?」

「まあ世界中をブラブラしてたんだけど、ちょうどその頃にガルデンで

大規模な兵士募集が行われててさ。たぶん、魔人の脅威が減ってたから

そっちに働き口を増やそうって国の意向があったんだと思う。」

「俺が生まれる前だよな。…今じゃちょっと想像できない話だけど。」

「あたしの命と引き換えに、平和が訪れた時もあったんだよ。」


実感のこもった口調で言いながら、ガンダルクは小さなため息をつく。


「その頃の冒険者ギルドは腑抜けの巣窟だったから、ダメモトな感じで

ガルデンに行ってみた。もしかして少しマシなのがいるかも知れない、

そんなあてもない期待を抱いてね。そしたら、見所のある男がいた。」

「それがプローノ将軍だったと?」

「当時はまだ新兵ですらなかった。あんたと同じ、剣を志す若者よ。

だけど腕は確かだった。このあたしから見てもね。だから誘った。」


言いながら、チラリと二番刀の方に目を向ける。


「気のいい男だったよ。一次募集に応募できなくなるのに、頼んだら

二つ返事で引き受けてくれた。で、一緒に洞窟まで行ったのよ。」

『憶えていますねえ。何しろ本当に久し振りでしたから。』


「…だけど、あたしはそこでミスをした。あまりにも久し振り過ぎて、

大切な決まり文句を伝えるのを忘れちゃったのよ。」


パキッ!


手にした枝を、力任せに折った音が甲高く響く。


「何を忘れたんだ?」

「あんたにはちゃんと言った事。」


そこでぐっと唇を噛んだガンダルクが、もう一度空を仰いだ。


守護者(ガーディアン)は、このあたしを決して攻撃しない。だから戦いになっても

あたしを守る事は考えなくていい。それを言い忘れた。」

「…ああ、それか。」

「結局、プローノはあたしを庇って額に浅くない傷を受けた。それでも

必死であたしを連れて離脱したよ。あの岩人形と戦って生き残ったのは

彼一人だけ。…何が何でもあたしを死なせまいとして無様に足掻いて、

後であたしに何度も詫びていた。」


握り締めていた折れ枝を焚火の中に放り込み、ガンダルクはゆっくりと

ルクトに視線を向ける。


「あたしは彼に何も言えなかった。詫びる事もできなかった。結局、

彼は傷を癒してからまたガルデンの兵士募集に応募したんだってさ。

もともと腕は確かだったからその後はどんどん出世していった。」

「なるほどな。」


頷いたルクトは、ごろりと仰向けに寝転がった。


「…つまり、もしかしたらその時にプローノ将軍が岩人形を撃破して、

お前と旅をしていた今もあったかも知れないって話なのか。」

「そう。」

「だからあれほど、俺を誘った時はしつこく念を押してたんだな。」

「大事なことだと言ったでしょ?」

「そうだったな…」


あれは悔恨があったからなのか。

納得したルクトは、そのまま星空を見上げて告げる。


「…今のお前が訪ねるって意味は、ちゃんと分かってるんだよな?」

「もちろん。」

「説明を求められたら、自分が何かを話す必要がきっと出てくるぞ。」

「分かってる。」

「それでも会うべきなんだな?」

「そう。」

「分かった。」


そこでルクトは起き上がった。


「だったら俺もちゃんと腹を括る。気合入れて、お前とプローノ将軍を

必ず会わせてやるよ。」

「頼りにしてるよ。」

「任せとけ。」


そう答えるルクトの口調に、迷いの響きなどはなかった。


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「では聞かせてくれるか?…その、君たちの事を。」

「ええ。」


答えたルクトが、背筋を伸ばす。

いよいよだ。

ある意味で、自分の先達とも言える目の前の武人。

彼にどこまでの事を話すかは、己とガンダルクが決める。


しかしルクトには、少なからず確信があった。


きっと彼なら大丈夫。

立場も時間も越えて、ガンダルクを認めてくれるはずだと。



決意を固めた2人の顔に、もう迷いは浮かんでいなかった。

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