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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第二章 逆境のジリヌス王国
24/703

ディグロー掃討戦

ザシュッ!!


戦いの始まりは唐突だった。

段々畑の畝に足を踏み入れた途端、すぐ目の前の土が一気に盛り上がり

大きな黒い影が飛び出す。赤く光る小さな目は、魔獣の証だった。

もちろん、当のルクトはその襲撃を読み切っていた。間合いを見極め、

相手の勢いをそのまま利用して剣を振り切る。右の肩口から真っ二つに

切り裂かれた影がどさりと落ちた。紛れもないディグローの雄だった。


息を入れる間などない。

絶え間ない振動が足元から伝わり、示し合わせたように畝のあちこちが

あたかもミミズ腫れのように次から次へと盛り上がる。

それを目で薙いだルクトが、迎撃のために腰を落とした瞬間。


『後ろからも来てますよ!…それと回避反応がやや遅れてます!!』


自己主張するかのようなアミリアスの声が、腰あたりから響く。


「…黙ってろってのに!」


舌打ちしたルクトは、それでも左右から同時に襲い来た2体を一振りで

骸に変えた。そのまま間髪入れずに地を蹴り、直下の畝に飛び降りる。

同時に、背後から飛び出したディグローの爪が空を切った。


『下に逃げるのは駄目ですって!』

「誰のせいだよ!」


言い合うわずかな間にも、何体ものディグローが我先にと飛び出す。

正面の個体を突進しながら袈裟懸けで切り払い、ルクトは他の個体から

距離を取るために畝を駆け抜ける。


確かに、こんな場所で下に向かって移動するのは下策中の下策だ。

相手が土の中を移動している以上、巣の中に飛び込んでいるに等しい。


よくない戦局だった。


================================


ガキィン!!


すぐ傍らの土を崩して現れた個体の一撃を、剣を寝かせ辛うじて防ぐ。

しかし足を止めた事によって、他の個体の接近を許してしまった。


「チッ!!」


再び舌打ちしたルクトは、寝かせた剣を素早く回して爪の攻撃を流す。

そのまま器用に剣先だけ跳ね上げ、目の前のディグローの顔を裂いた。

しかし遅い。すでに背後の個体が、長剣の間合いの中に迫っている。


『危な…うおっと!?』


アミリアスの声は途中で途切れた。

とっさに長剣を手放したルクトが、二番刀を抜き放ってディグローの

喉元を切り裂く。短剣サイズのままだからこそ、放てた一撃だった。


『やっと使ってくれましたか!』

「うるさいって言ってるだろが!」


手放した長剣を拾う余裕のないルクトが、ディグローの攻撃をかわして

二番刀を本来のサイズに拡大する。ぐるりと横薙ぎを一回転させると、

すぐ目前に迫り来ていた2体が一気呵成に両断された。


それでも、まだ波状攻撃が続く。

倒れた2体の骸の向こう側に見える畝が、またしても盛り上がった。


「…くっそおキリがない!」

『間合いと高さを取らないと、この状況のままではジリ貧ですよ!』

「だからいちいち言うなって!!」


埒が明かないやり取りが終わるのを待たず、ひときわ大きな体の個体が

骸のすぐ傍らから飛び出してきた。反応の遅れたルクトが、そちらに

視線を向けた瞬間。


ボゴッ!!


放物線を描いて落下してきた石が、吸い込まれるかのような正確さで

ディグローの鼻先に命中した。傷を与える威力ではなかったものの、

感覚が集中している鼻先への一撃でディグローはぐらりとバランスを

崩す。その瞬間を逃さず、ルクトは一太刀で相手の首を切り落とした。


ダン!ダン!


一足飛びで畝を踊り越えた人影が、ルクトの目の前に降り立った。


「何やってんのよ2人とも!!」

「今の石お前か!?」

「そうよ!!」


迷いもなく駆け下りてきたその影-ガンダルクが、ルクトを叱咤する。


「こんな雑魚ども相手に、グダグダやってんじゃないっての!」

「だからって降りて来るな!!」


さらに白熱する言い合いの只中に、別のディグローが襲い来る。


「危ないぞ!!」

「あたしの心配なんか要らない。」


素っ気なく言い返したガンダルクの体は、きわどい間合いで爪の一撃を

スッと回避した。そのまま、相手のすぐ脇を流れるように駆け抜ける。

かわされた事にすら気づいていないディグローの顔を、ルクトの一閃が

ざっくり切り裂いた。視線を向けると、ガンダルクは襲い来る攻撃を

息も切らさずに回避し続けていた。


「…すげえな、あの動き…」

『あれですよあれ。無駄のない動きというのは!あなたもしっかり…』


ザシュッ!!


一段下の畝から襲い来たディグローを返り討ちにしたルクトの中で、

その瞬間何かが切れた。


「アミリアス。」

『何です?今は戦闘中…』


「いい加減うるせーんだよ!!!」


ドスッ!!!


我慢の限界に達したルクトは、有無を言わさず二番刀を地面に深々と

突き立てた。さすがのアミリアスもその行動に驚愕の声を上げる。


『ちょっ、ルクトさん!?』

「もうお前はそこで黙ってろ!!」


ジャラッ!!


叫びながら振った右手の篭手から、鎖鞭が一気に伸びて剣を絡め取る。

引き戻す勢いそのままに体を回し、ルクトは鎖鎌を振るような軌道で

上の段の畝にいるディグローの足を膝から切り飛ばした。


ダン!


地を蹴って跳躍したルクトが、一段上の畝にようやくその身を戻す。


「あーもう、何やってんだか!!」


攻撃をかいくぐったガンダルクが、突き立てられた二番刀に駆け寄る。


「もうちょっと連携できないの?」

『いや、そう言われましても…』


そんな事を言い合う内に、上の段のルクトは調子を取り戻していた。

むしろ、枷が取れたと言わんばかりに襲い来るディグローを次々屠る。


「あーあ、お荷物扱いじゃんか。」

『しかし……あれ?』

「どしたの?」

『…いや、ちょっと待って下さい。これは…』


何かを確かめるような言葉と共に、二番刀の魔石が強く光り始める。

次の瞬間。


『ルクトさん!!』

「うるせーな何だ!!」

『左斜め後方3エル(メートル)!5秒後に地上に出ます!!』

「…!?」


怪訝そうな表情を浮かべるのと同時進行で、ルクトは指示された地点に

一瞬で移動した。そして迷いなく、長剣をその場所に突き立てる。

かすかに地面が盛り上がったのと、ほぼ同時だった。


ドスッ!!


鈍い感触と共に、地面から黒い血が滲み出る。


『次は真横の前方1エル!2秒!』


ドスッ!!


地面から引き抜いた剣をその箇所に突き刺すと、またも血が噴き出た。


「…おおぉ、先読みかよ。」


地表に出る前の2体を倒した事に、ルクトは驚嘆の声を上げた。


「こんな事できたのかよお前!?」

『あたしもたった今知りました。』

「は?」


二番刀の傍らにいたガンダルクが、頓狂な声を上げる。


「どういう意味よ?」

『あたしも驚きです。…どうやら、こうして刀身を地面に突き立てれば

大地の魔力と接続できるらしくて。この状態でなら、以前と同じように

感知魔術が使えそうですね。』

「…何それ。」

「マジかよ。」


『いやあー、さすがに転生ってのは知らない事実もあるもんですねぇ。

あたしもまだまだ勉強ですよ。』

「何を調子のいい事言ってんだ。」

『ホラ次ですよ!後方3.5エルに5秒後!どんどん行きましょう!』

「…何だかなあ。」


テンションを上げたアミリアスの傍らで、ガンダルクが呆れ声で呟く。



完全な結果オーライで、厳しかった戦局は好転の兆しを見せていた。

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