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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第二章 逆境のジリヌス王国
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ルクトの悩みと意気

「…行くか。」


日が落ち、今日は村人たちにも各々の家で戸締まりを徹底してもらう。

多数を相手の戦いになる以上、何が起こるかの保障ができないからだ。

完全な後払いとは行っても、受けた以上は最低限の責任がある。


しかし俺個人としては、今の状態はあまり好いとは言えなかった。


理由は、この手の中にある刀だ。


『うーん、このまま実戦というのはいささか不安が残る状況ですねえ。

あたしの推測では、もう少し鍛錬を積んでからの方が良いのではと…』

「いいから黙っててくれ。」


そう。


とにかくアミリアスが口うるさい。


================================


ディグロー掃討は初めてじゃない。

メリフィスのパーティーに入る前、駆け出しだった頃に2度受けた。

もちろんその時は、ここまで大きな群れを相手にはしていない。一方、

俺の腕もそれなりに上がっている。状況としては十分に勝算はある。


しかし今、アミリアスの宿っている二番刀の存在がどうにも厄介だ。

武器としての可能性が未知数なのはいいとして、とにかく扱いづらい。

性能云々よりもまず、女の子の声でペチャクチャ喋るのってのがどうも

調子を狂わされる。本当に使ってもいいのか?とさえ思ってしまう。


「割と神経質ってか、優男ねえ。」


ガンダルクがそんな事を面白そうに言うが、別に紳士ぶってるつもりは

微塵もない。単純にこっちの感覚を乱されるってだけだ。

昼間に二番刀の特訓をしたものの、感覚の違いを痛感しただけだった。

アミリアスいわく、握って振る事で俺の動きの”精度”が測れるらしい。

で、実際に測ったところ、かなりの無駄がありますねと言い出した。


そんな事、わざわざ言われなくても十分に自覚しているんだよ。

自分が未熟なのは承知の上で仕事をこなして来てるんだから、あんまり

客観的過ぎる指摘をされても困る。動きの理想なんてもの、そう簡単に

追求できるはずないだろう。しかしアミリアスは、刀に転生する前から

出不精だったのに加え、今はもはや肉体を持っていないという状況だ。


当然、実際に刀を振っている俺とは根本的に感覚が異なっている。


「ああうん、無理よ無理!やめ!」


辛抱強くその特訓に付き合っていたガンダルクも、ついにあきらめた。


「アミリアス!」

『はい?』

「あんたの言いたい内容はそこそこ分かるけど、今やる事じゃないよ。

もう夜が本番なんだから、ルクトの能力の底上げを目指すには絶対的に

時間が足りない。そこは認めな。」

『そうですか…』

「今日のところは、補佐に徹して。相手はディグローなんだからそれで

十分よ。…そうでしょルクト?」

「ああ、そのとおりだ。」


まったく同意だ。

正直、俺はガンダルクに少なからず感謝していた。


================================


「…いるな。」


高台から眼下を望むと、土の臭いにかすかな獣の体臭が混じっていた。

何度も掘り起こされているせいで、この距離でもはっきり感じ取れる。

相当な数のディグローが、すぐ目の前の畑の地下に集まってきていた。


「ガンダルクはここにいてくれ。」

「何で?あたしも行くよ。」

「相手は数が多い。乱戦になったら守れないから、とりあえずだ。」

「優しいねえ、相変わらず。」


苦笑しながら小さなため息をつき、ガンダルクは続ける。


「分かった。だけど戦局次第では、遠慮なく割り込むからね。いい?」

「ああ。危なくなったら頼むよ。」


現状、俺にとって今のガンダルクの実力はまったくの未知だ。

本人やアミリアスの言葉をそのまま信じるなら、魔力はほとんどない。

加えてその肉体は、何十年経っても状態が変化しないらしい。つまり、

いくら鍛えても鍛えられないという事になる。現在の身体能力が完全に

外見のままなら、ディグロー相手にまともに戦えるとは思えない。


ここは俺が単独で片をつける。その気構えで臨む事にしよう。


「よし、んじゃ行くか。」


誰にともなくそう呟き、俺は愛用の長剣をすらりと音もなく抜いた。

と同時に、腰に提げている二番刀が声を上げる。


『あれ?あたしを使わないんですかルクトさん?』


案の定言ってきたか…


「ああ、まずはいつもの得物で戦う事にする。別にいいだろ?」

『…まぁ構いませんけど…』


ブツブツと文句を言っているアミリアスが、正直かなり鬱陶しい。

様々な局面で頼りになる存在なのは間違いないが、今この時に限っては

少し黙っていて欲しいのが本音だ。遊び半分じゃないから。


まあいい。

手に馴染む長剣の感覚を確かめて、俺は気持ちを入れ直した。


俺たちが欲しいのは、ギルドで使う新しいライセンスだ。そのために、

トッピナーさんの提案を受け入れてこのカウギ村までやって来た。

二重登録をするためには、こういう辺境の役場を活用すべきだ…と。


しかしそれは、俺たちの都合だ。

今この瞬間、村の人間はディグローって存在に生活を脅かされている。

請け負った以上、何としても彼らの憂い事を切り払う責任がある。

自分の都合はひとまず脇において、ディグロー殲滅に全力を尽くせ。


それが、今もこれからも俺のすべき仕事だ。絶対に忘れるな。

よし。



じゃあ行くとするか。

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