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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第二章 逆境のジリヌス王国
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ギルドにて

野営を挟んだ、翌日の昼過ぎ。

ルクトたち一行は、ジリヌス王国の南西にある都市ウズロに来ていた。


「それじゃ、このまま首都に向かう…ってわけには行かないのね。」

「ああ。さすがにそれは厳しい。」


ガンダルクにそう答えたルクトは、やや決まり悪げに笑う。


「ゆうべ説明したとおり、この国の王はメリフィスの熱烈なファンだ。

同じパーティーの人間って事で割と小遣いとかもらったりしてたけど、

今となっては手ぶらだと間違いなく門前払いになるだろうな。」

『世知辛いですねえ。』

「まあそれは仕方ないよ。それで、今あいつらはどの辺にいる?」

『まだフリーランドを出てません。あの街に逗留してるんでしょうね。

我々とは違い、装備類を揃えるのとウナクス君の治療もあるので。』

「分かった。」


頷いたルクトは、大通りの方に目を向けて続ける。


「…もうしばらくは追いつかれないだろうから、ボロが出る前に何とか

王に会う算段を立てよう。後の事はそのつど考えればいい。」

「ま、ちょっとした綱渡りね。」


実感のこもった口調で言いつつも、ガンダルクの表情は明るかった。


「よし、それじゃあ冒険者ギルドへ行こう。」

「了解。」

「…くれぐれも、いらん事を口走るなよ2人とも。ここはジリヌスだ。

ただでさえ魔人を嫌ってる国だから、しっかり己を弁えてくれよ。」

『「はあい。」』


================================


賑わう大通りを馬で北の方へ進み、ほどなくしてひときわ大きな建物が

突き当りを塞ぐように見えてきた。それを見たルクトが馬を停める。


「あれだ。」

「でっかいね。」

「メリフィスのパーティーにいた時も、魔人討伐なんかの依頼は8割方

この国で受けてたからな。どの街もあのくらいの規模はある。」

「じゃ、ここも何度も来てるの?」

「ああ。」


答えたルクトはひらりと馬を降り、ガンダルクを手招きする。


「馴染みの受付もいるから、何とか依頼を回してもらおう。とにかく、

直近の実績がないと話にもならないからな。」

「メリフィスと別行動してる…とか適当に言えばいいんじゃないの?」

「嘘はまずい。後が厄介だから。」

『でしょうね。』


あれこれ言い合ううちに、ギルドはもう目の前だった。

係留場にそれぞれ馬を繋ぎ、二番刀を懐に入れて入口へと向かう。


2人の足取りに、迷いはなかった。


================================


入口正面に設けられている受付は、かなりごった返していた。

一昨日のキンカジの街とは異なり、見事に魔人の姿が一人も見えない。


「うん、ジリヌスだねここ。」

「いらん事は言うなよ。」

「分かってるって。」


もう一度念を押したルクトが、受付カウンターに向かおうとした刹那。


ガシッ!


「!?」


いきなり右腕を誰かに掴まれ、足を止めてパッと振り返る。同じように

足を止めたガンダルクも、そちらに視線を向けた。


そこにいたのは、ルクトよりもやや背の高い水色の髪の女性だった。

メガネ越しの鋭い視線が、じいっとルクトの顔に注がれている。


沈黙は短かった。

腕を掴まれたまま、ルクトが女性に軽く会釈して告げる。


「…えっと、どうもお久し振りですトッピナーさん。お元気そうで。」

「ええ、久し振りねルクト君。」


そんな挨拶の言葉を交わしつつも、「トッピナー」と呼ばれた女性は

ルクトの腕を離そうとしなかった。笑顔も見せなかった。


「今日は、何しに来たの?」

「ええっと…」

「誰この人?」


すぐ隣で成り行きをじっと見ていたガンダルクが、怪訝そうな口調で

ルクトに問いかける。その視線は、傍らのトッピナーに注がれていた。


「さっき言ってた馴染みの受付さんだよ。」

「どうも初めまして。サルバドル・トッピナーと申します。」


視線だけガンダルクに向けて挨拶の言葉を述べたものの、トッピナーの

表情は相変わらず険しい。その態度にさすがのルクトも眉をひそめた。


「…離してもらえます?」

「何をしに来たのかだけ言って。」

「ソロの仕事を探しに来たんです。…ちょっと、事情がありまして。」

「分かった。突然ごめんね。」


ようやくトッピナーは手を離した。


「それで、あの…」

「ちょっとこっち来て。」


話を聞かず、トッピナーはさっさと歩き出した。正面受付にではなく、

入口から見て右側に並んでいる個別ブースの方へと。


「あのう。俺たちは」

「いいから来て。ホラ早く。」


有無を言わさぬ声と手招きに、顔を見合わせたルクトとガンダルクは

言われるままそそくさと歩み寄る。


どうやら、大事な用らしい。ここはとりあえず言う事を聞いておこう。


そんな無言の同意を共有し、2人はトッピナーに続いて一番端にある

個人ブースへ入っていった。


================================


部屋は狭かった。

通常こういった個室では、受注した依頼に関する細かい説明を担当から

聞いたりする。今のようにいきなり連れ込まれる…というのは珍しい。


「座って。」


相変わらず表情も声もかなり険しいトッピナーが、椅子を指して言う。

見ようによってはかなり失礼な態度ながら、ルクトたちは従った。

どうにもトッピナーの態度に、何か切実な意図を感じたからだった。


しばしの沈黙ののち。


「…非常に失礼な事を訊くけど。」


そんな前置きを挟んだトッピナーの目が、ガンダルクに向けられる。


「彼女、信用できる?」

「え。」


その問いに、ルクトは形容しがたい表情を浮かべた。


「…実に答えづらい質問ですね…」

「まあそうよね。何たって」

「いらん事を言うなってのに!!」


「ああごめんなさい。いくら何でも訊き方が悪過ぎたわよね。」


掛け合いを目にしたトッピナーが、ほんの少し口調を柔らかくした。

そして、あらためてルクトに問う。


「彼女、メリフィスの息がかかった人間じゃないわよね?」

「違います。それは全然。」

「分かった。ならいいわよ。」


そこで初めてトッピナーは、机を挟んだ2人の対面に座った。

そして、抑揚のない小声で告げる。


「ルクト君。」

「何でしょうか?」

「あなた、メリフィスのパーティーを追放されたのよね。」


「は!?」


神妙な顔をしていたルクトの声は、露骨に裏返った。


「何でそんな事をトッピナーさんが知ってるんですか!?」

「あたしだけじゃない。」


ルクトの顔から視線を外す事なく、トッピナーはなおも淡々と告げる。


「…たぶん、国中のギルドの人間が知ってると思う。」

「……はぁ!?」



目を見開いたルクトの声は、またも裏返っていた。

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