表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第二章 逆境のジリヌス王国
18/703

心当たりを手繰って

翌日の朝。


「よし、んじゃ行くか。」


準備を整えたルクトたちは、ライドラグンから馬に乗り換えていた。


「思ったより高く売れたねえ。」

「まあ、上物だったからな。」


買い換えた店を振り返り、ルクトとガンダルクが言葉を交わす。


さすがに次の国へ向かうのに、あの目立つライドラグンは厳しいという

判断だった。ましてや3頭は必要なく、かと言って1頭だけを売るのも

何となく気が引ける。で、2頭の馬に乗り換えた事により、結果的には

山のようにお釣りが来た。


「やっぱり、メリフィスたちはこの街には来ないんだな。」

『そのようですね。まあ武器もない状態ですから、当然でしょうか。』

「そういやそうだな。」

「ま、いいじゃない。」


雑に話を終わらせたガンダルクが、元気よく告げる。


「さあて、いざジリヌス王国へ!」


================================


ジリヌス王国。


魔人国アステアの東に隣接する国であり、軍事大国としても知られる。

また古くから特に魔人を忌み嫌う風潮が国全体にあり、冒険者ギルドの

数も他の国よりも群を抜いて多い。アステアとの戦争こそないものの、

ガンダルク死後も魔人をほとんど受け入れなかった唯一の国である。


ルクトとガンダルクは、どんな理由でこの国へ向かう事を決めたのか。

その取り決めは、昨晩に遡る。


================================


挿絵(By みてみん)


『あたしとしては、メグラン王国が無難だと思いますけどねえ。』

「無難なところがいいとは限らないでしょうが。」


アミリアスとガンダルクの意見は、真っ向から割れていた。


ジリヌスとメグラン。

アステアの東側と国境を持っているこの2つの国は、フリーランドから

直接向かう事ができる二択となる。今まで来た道を引き返さない限り、

必ずどちらかの国に入る。しかし、いざどちらかとなると難題だった。


『ガンダルクもご存知でしょうが。ジリヌスは、あなたの生前からして

徹底的に魔人を忌み嫌う国ですよ。難儀するのは目に見えています。』

「もちろんそれは知ってるよ。」


ムッとしたような声でガンダルクが答える。


「百年の間、暇に飽かして世界中を歩き回ってたんだから。少なくとも

引きこもってたあんたよりはずっとよく知ってる。」

『なら、どうしてわざわざ…』

「いかにも難儀しそうな国こそ、最初に攻めるべきと思うからよ。」

「…まあ、売り込みの基本としてはもっともな意見だと思うけど。」


2人の議論を聞いていたルクトが、そこで口を挟んだ。


「だけど相手は国だぞ。そこらへんの覚悟はちゃんとあるのかよ?」

「もちろん。って言うか、あんたがいてくれるから心配はしてない。」

「そりゃいくら何でも買い被り過ぎってもんだ。」

『そうですよ。ここは堅実に…』


「うるさいな!」


ガンダルクが声を荒げる。


「魔王を倒してハイ終わりみたいな単純な事をやるつもりはないのよ。

誰もやってない事に挑むんだから、厳しいところから攻めるって選択が

間違ってるとは言えないでしょ!?…違う!?」

『……』

「確かにそれはそうだな。」


じっとガンダルクの言葉に耳を傾けていたルクトが、小さく頷いた。


「じゃあいいんじゃないか、まずはジリヌスに行く選択で。それに…」

「それに?」

「ジリヌスの王なら、俺も一度だけ目通りした事があるからな。」

「はあ!?」

『ええ!?』


2人の声が、見事にハモっていた。


================================


「よおし、この辺でいいか。」

「うん。」


馬を停めたルクトとガンダルクが、揃って背後を見やる。

2日に渡って逗留していたキンカジの街は、もう見えなかった。

街道を行き交う人の姿もほぼ絶え、見渡す限り畑が広がっている光景。


「じゃ、頼むぜアミリアス。」

『はい。』


そう答えると共に、鞍に固定された二番刀から笛のような音が響いた。

数秒ののち。


「…あ、降りてきた。」


雲の隙間から、羽を広げた黒い影がゆっくりと降下してくる。

やがてその影は、大型の恐竜ほどの図体を露わにして2人のすぐ傍らに

バサリと降り立った。


「よう、お疲れグルーク。」


そう言いながらポンと首筋を叩いたルクトに対し、グルークと呼ばれた

フライドラグンはグルグルと唸って応える。首筋の鱗の先には、金色の

腕輪がきっちりはめ込まれていた。


「探知貴術は生きてるか?」

『そのようですね。』


柄の魔石を発光させ、アミリアスがそう答える。


「よし。じゃあ悪いけど、このままメグランの王都まで行ってくれ。

そこで、しばらくはのんびり時間を潰しててくれればいいから。」

ルクトの言葉をアミリアスが伝え、やがてグルークはその翼を広げた。

そしてゆっくりと飛び上がって上昇し、南東を目指し飛び去っていく。


「ま、そういつまでもごまかせないだろうけどな。」

「とりあえずメグランに向かったと思ってくれれば、それでいいよ。」

『では、我々も行きましょうか。』


グルークの姿が見えなくなったのを確かめ、2人は再び馬を駆る。

目指すはジリヌス王国。その決定にもう、誰も迷いはなかった。


================================


「だけど、いつか乗ってみたいよなフライドラグンも。やっぱり…」

「あたしは嫌だからね。」

「は?」


食い気味に即答したガンダルクに、ルクトが怪訝そうな目を向ける。


「何でそんな嫌がるんだ。昨日まで普通に乗ってただろ。」

「走る奴はいいけど、飛ぶのは嫌。悪いけどお断り。」

「だから何でだよ。」


『ガンダルクは空飛ぶのは苦手ですからね。無理もないです。』

「え、そうなのか?」

「ちょっ、余計な事言うなって!」

『昔、フライドラグンから落下して骨折しましてね。それ以来…』

「言うなってのに!!」

「…魔王ガンダルクって、空飛ぶの苦手だったのか。初耳だな。」

「忘れて!!」


無駄口を叩きつつ進む3人の影が、次第に長くなっていく。



ジリヌス王国との国境は、まだまだ遠かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ