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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第一章 追放と出会いと
15/703

ガンダルクの目標

「いやあー、思ってた以上に高値で売れたねえ。」


ホクホク顔のガンダルクが、テーブルの上に持ち金を並べて数える。


「ええと…しめて18万ギブルか。しばらくは食うに困らないね。」

「それなりの家が買えそうだな。」

『やっぱり、ネラン石があったのが大きかったんでしょうね。』


3人がいるのは、街の宿屋の一室。

メリフィスたちの持ち物をほぼ全て売り払った彼らは、ちょっとした

小金持ちになっていた。


================================


「まともな宿に泊まるのって、いつ以来かなぁ…」


夜の帳が下りつつある窓の外を見ながら、ガンダルクがしみじみ呟く。


「お前って、今までは原則的に野宿だったのか?この百年間。」

「ずうっと…ってわけじゃなかったけど、まあ大体はそうだったよ。」


ルクトの問いにそう答えたガンダルクは、かざした自分の手を見やる。


「今のあたしのこの体は、全く成長しない代わりに劣化もしないのよ。

もちろん外から汚せば汚れるけど、老廃物みたいな汚れは出てこない。

だからまあ、野宿で事足りてた。」

「便利といえば便利だけど、何だか味気ない話だな。」

「もうすっかり慣れたけどね。」


そこでガンダルクがルクトに向き直り、意味ありげな表情を浮かべた。


「それより、ルクト君。」

「何だよ。」

「宿を取ったのはいいけど、当然のように同室ってのは良かったの?」

「…は?」

「は?じゃないわよ。」


諌めるような口調でそう言いつつ、ガンダルクはぐっとルクトに迫る。


「こんな妙齢の女の子と同室って、親御さんは承知してんの?」

「いやいや、お前ガンダルクだろ?いくら体が女の子だからって…」

「……うん?」

「ある意味、可哀想だとさえ思ってるんだ。いくら俺でもその境遇には

かなり同情してるって話だよ。」

「………」

「なんで黙るんだよ。」


形容しがたい表情になって口をつぐむガンダルクに、ルクトが訝しげに

問いかける。しかし返事はなく、微妙な沈黙の時が流れる。


数秒ののち。


『ルクトさん。』


沈黙を破ったのは、ベッドの上に投げ出されていたアミリアスだった。


『もしかして、転生前のガンダルクは男だった…とか思ってます?』

「え?」


きょとんとするルクト。


「違うのかよ?だって伝承では…」


ゴン!


皆まで言う前に、ガンダルクの拳骨がルクトの頭に炸裂した。


「あたしは昔から女だよ!!」

「ええ!?」


答える言葉が露骨に裏返る。

殴られた痛みより叫ばれた内容の方が、ルクトには何倍も衝撃だった。


================================


「いや、ホント悪かったよ。」


完全にムクれているガンダルクに、床に正座したルクトが詫びる。


「母さんもお前の性別までは話の中で触れなかったし、恐怖の魔王が

女性だとは思わないだろ。そんな伝承は聞いた事なかったし…」

「いくら違うと訂正しても無駄だったのよ。あたしの話なんて誰ひとり

信じないし、話を盛り上げるためには魔王は男の方がいい!って理由で

勝手に捏造されていった。あたしももう、途中で諦めてたよ。」

「だったら俺だって仕方ないと…」

「黙らっしゃい。」


ぴしゃりと言い放ったガンダルクの目が、ルクトを見据える。


「あんた、かれこれ4日もあたしと一緒に行動してるでしょうが。」

「ええっと…」

「それでも思い込んでたってのは、言い訳できる状況じゃないよ!」


…………………………………………………………………


『いやあ、客観的に見れば、意外と仕方ないかも知れませんよ。』

「やかましいわ!!」


================================


夜も更けた頃。


「それで、だ。」


やっと機嫌を直ったのを見計らい、ルクトがあらためて質問した。


「これからどうする気だよ?」

「そうねえ…。」


すっかり暗くなった窓の外をちらりと見ながら、ガンダルクが答える。


「とりあえず、お偉いさんに会ってみたいと思ってる。」

「お偉いさん?…と言うと、例えばギルド長とかか?」

「国王とか、そういうの。」

「はあ!?」


またもルクトの声が裏返った。


「いきなり何でだよ!!」

「話がしたいから。」

「だから何を話すんだよ!?」

「魔王の事に決まってるでしょ。」


そう言ったガンダルクは、ルクトに向き直ってゆっくりと座り直した。


「んじゃあ、もうちょっときっちり説明するからさ。」

「ぜひ頼む。」


「あんた、魔王ってどんな存在だと思ってる?」

「え?」


意外過ぎる問いに、ルクトは毒気を抜かれてきょとんとする。

しかし目の前のガンダルクに、からかうような様子は微塵もない。


どうやら、彼女の根底を成す話への取っ掛かりらしい。

それを悟ったルクトもまた、ほんの少し居住まいを正す。



長い夜になりそうな、そんな予感があった。

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