お似合いの2人
結局のところ、ゲルテと名乗った男は使者でも何でもなかった。
もちろんリスベルに見覚えはなく、共にやって来た誰も知らなかった。
原形を留めていた魔鎧兵の装甲部を開放して中を確かめてみたものの、
やはり中の遺体は正体の分からない者たちばかりだった。
「ただ、これらの魔鎧兵には確かに心当たりがありますね。」
検分をしたリスベルの部下の男が、短く説明をした。
「北方の魔人都カラカで開発されたタイプです。民間に流通しており、
一部は犯罪組織などの手にも渡っているという情報があります。」
「ずいぶんと物騒なものが、市場に出回ってるんですね。」
「仰るとおりです。」
ルクトの言葉に、その男は苦い表情を浮かべて頷く。
「…魔王ガンダルク亡きあと、この国にはアステアの技術とそれを持つ
魔人が大量に流入しました。結果、こういった技術は良くも悪くも広く
様々な層に浸透していったのです。留めようのない変遷ですよ。」
「なーるほどねー。」
ルクトの隣で聞いていたガンダルクが、実感のこもった声を上げる。
「あたしが滞在していた頃からも、時代は変わってってるのか…。」
「ともあれ、皆さんご無事で何よりです。本当に遅れて申し訳ない。」
重ねて詫びたリスベルが、魔鎧兵に再び搭乗しながら続ける。
「何はさて置き、とにかく姉ちゃ…女王のもとへ案内致しますので。
その男に関しても、拘束して詳しく尋問します。」
「よろしく。」
皆を代表し、ルクトがそう答えた。
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マンデにある城までは、もうさほど遠くはない。街に入ればすぐだ。
「どうせなら、このままで」という皆の意向が尊重され、城までの道は
今までの道程どおり馬と馬車を使う事となった。リスベルと従者たちは
魔鎧兵を駆り、周囲を警護しながら随伴する。実に晴れがましい行進に
なったものの、隣国の王女の来訪と考えればそれほどおかしくもない。
ただ、もちろん来訪者がメリゼだという事実は伏せられているので、
「要人警護」という名目となった。魔鎧兵そのものは珍しくないのか、
街の人たちもそれほど注目しない。結果的には好都合だった。
「しかし副王が直々に…って事実、さすがに誰も知らないだろうな。」
「でしょうね。」
ルクトとトッピナーが、そんな事を言い交わす。
あらためて自分たちの姿を見返してみれば、さすがにくたびれている。
ウォレミスの街にて合流して以来、ほとんど誰の支援も得られないまま
ここまで戦い抜いてきたのである。それを生業としている自分たちは
ともかく、曲がりなりも王女であるメリゼの今の姿は、事情を知らない
者には決して信じられないだろう。ある意味、完全に板についている。
「…回り回って、意外とお似合いの2人なのかも知れないわねぇ。」
「確かに。」
ガンダルクの言葉に、ラジュールが真顔で答えた。
自ら魔鎧兵を駆り、率先して先頭を歩く副王。
冒険者として実績を積み、自ら馬を駆る王女。
偏見も先入観も捨てた目で見れば、実にお似合いといえる姿である。
ここまでの彼女の頑張りを、間近で見続けてきたルクトたちにとって。
毅然と歩を進めるメリゼの後姿は、どこまでも頼もしかった。
『もう間もなくです。』
左側を歩いている魔鎧兵の女性が、そう言って前方を指し示す。
目抜き通りの突き当たりに、大きな白い城がそびえているのが見える。
いよいよ、女王シャンテムの住まう場所に辿り着く。
深い感慨と共に、一行はあらためて気持ちを引き締め直していた。




