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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第四章 激動のモーグ王国
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魔鎧の力

「どういうお考えでしょうか?」


あくまでも丁寧な口調を崩そうとはせず、ゲルテが問いかけてくる。


「副王リスベルにとって、そちらのメリゼ王女は大切なお方なのです。

万全の警護で城までお連れする配慮は、至極当然ではないですか?」

「言ってる人間が胡散臭過ぎる。」

「困りましたねえ。」


ガシュン!


外側2騎の魔鎧兵が一歩前に出る。どう見ても示威行為そのものだ。

いよいよ、場の空気が張り詰める。怯えを察して全員が馬を下りた。


「てか、もう城は目の前じゃん。」


うんざりといった口調で、メリゼの傍らのガンダルクが述べる。


「このまま行ってもそれほど時間はかからないし、心配だって言うなら

あたしたちの脇を固めて同行すればいいだけでしょ。違う?」

「…残念ですが、女王はあなた方にそこまでの信頼は置いていません。

メリゼ様の事情についてはきっちり把握しておりますし、ここまでの

護衛に関しても感謝しております。相応の報酬はお渡し致しますから、

どうぞこの場は穏便にお引取」

「メリゼ。」

「はい。」


ゲルテの口上が終わるのを待たず、ガンダルクがメリゼに問いかける。


「こいつは女王シャンテムの臣下の人間だと思う?」

「思いません。」

「もし本物だったらどうする?」

「シャンテム様に苦言を呈します。もっと躾を徹底して下さい、と。」

「にゃはははは、いいねえ!さすが我らのメリゼちゃん!」


愉快そうに大笑したガンダルクが、皆にざっと視線を向ける。


「お聞きのとおりよ。」

「ああ。」

「傷を恐れない覚悟を決めろ。」


プローノたち4人が武器を構える。アルメダとトッピナーが、メリゼを

庇う格好で立ち塞がった。そして、ルクトとガンダルクが最前列に立ち

ゲルテを見据える。


「悪いけど、あたしたちはメリゼの言葉を尊重するよ。あんたが本物か

まがい物かは関係ない。」


================================


「どうしても、ですか。」

「ああ。」

「では仕方ありませんね。」


刹那。


ギュイン!!


外側に立っていた2騎が、耳障りな駆動音を響かせて鋭く動いた。

それぞれ巨大な腕を回転させ、最も外側にいたシャリアとイバンサに

強烈な打撃を叩き込む。


ドガガッ!


「うぐぉっ!?」

「ぐあッ!!」


かわす間さえなかった2人の体は、鈍い音と共に吹き飛んで転がった。

かろうじてそれぞれの武器を前面に構えて防御したものの、その衝撃で

剣も槍も飴細工のように砕かれる。


あまりにも強力で、かつ容赦のない一撃だった。


「シャリア!」

「イバンサ!!」

「きゃああぁぁっ!!」


プローノとラジュールのかけ声に、メリゼの甲高い悲鳴が重なる。


戦端は、あまりに一方的過ぎる形で開かれていた。


================================


「こんな悲しい結果は不本意です。どうぞご理解下さい、メリゼ様。」


悲しげな表情を浮かべたベルテが、軽く手を振った。

すぐ右隣に立っていた別の魔鎧兵がそれに応え、駆動音を響かせながら

メリゼたちに歩み寄っていく。


ルクトたちは、動けなかった。

迫る巨体を前にして、トッピナーとアルメダもじりじりと後ずさる。

呆気なく、メリゼは独りになった。覆い被さるように、魔鎧兵の巨躯が

彼女をじっと見下ろしている。と、その上部が小さく開いた。中には、

ニヤニヤと笑みを浮かべる男の顔があった。


「言う事聞きましょうよ、ねえ?」

「…分かりました。だからもう…」

「そうそう、聞き分けは大事です。お嬢様ならね。それ…」


最後まで聞かず、メリゼが動いた。ごく自然な歩調で前へと踏み出し、

立ちはだかっている魔鎧兵の鈍重な体にそっと手を触れる。


その瞬間。

魔鎧兵は、音もなく消失した。


「!?」


悲しげな表情のままで見守っていたゲルテが、そこで目を見開く。

ルクトたちは、なおも不動だった。


「ど、どこへ…!?」

「ねえ、ひとつ訊くけどさ。」


何気ない口調で、ガンダルクが彼に問いかけた。


「その魔鎧兵っての、飛べる?」

「は!?」

「あ、もういいや分かったから。」


笛のような甲高い風切り音。

次第に大きくなる丸い影。


そこでルクトたちは同時に動いた。

何が起きたか把握できないゲルテを残し、一斉に身を伏せたのである。


瞬間。


ドッゴオオオオォォォォォン!!


視界に入れられるギリギリの高高度から垂直に落下してきた魔鎧兵が、

ゲルテのすぐ左隣に立っていた別の1騎に激突した。すさまじい衝撃で

両方ともプレスされたように歪み、部品と黒い液体、そして血液らしき

赤い滴が飛び散る。前衛オブジェと化した2騎は、そのまま沈黙した。


「ガ…ッ!」


至近距離で飛び散った部品の直撃を受けていたゲルテは、どう見ても

数瞬前の姿から想像できない有様に成り果てていた。何らかの液体を

半身に浴び、顔も衣服も傷だらけになっている。


そんな彼は一顧だにせず、プローノとラジュールがシャリアたち2人に

素早く駆け寄る。


「大丈夫か!?」

「ええ。」

「な、何とか。」


どうやら武器を犠牲にして、致命的なダメージを回避したらしい。

支えられ、どうにか立ち上がる。


『なっ…』


2人を殴り飛ばした残り2騎から、くぐもった声がかすかに聞こえた。

そんな2騎を睨み据えたルクトが、小さな声で問いかける。


「アミリアス。」

『はい?』

「お前を使った方がいいのか?」

『ええ。そうして下さい。』

「よし。」


そこでルクトは二番刀を抜いた。


「ガンダルク。」

「はいよ。」

「メリゼ様。」

「はい。」

「みんなを頼みます。」

「「了解!」」


「お前ら、覚悟しろよ。」



告げるルクトの声には、揺るぎない気迫が込められていた。

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