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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第四章 激動のモーグ王国
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狙う者と守る者と

余計なリスクは背負わない。

結果を得る事を最優先とし、障害となる者の筆頭を効果的に排除。

後は迅速に目標を確保。


連携こそが、キンドラ・フェッツの真骨頂。


場を長引かせるような愚は、決して冒さない。


================================


ルクトが何をされたのか。

自分たちがルクトに何をしたのか。


把握する間など与えない。

目標はメグラン王国の王女、メリゼただ一人。他はどうでもいい。


森の街道は、ウォレミスの街以上に「上の足場」には事欠かない。

身軽な者であれば、上からの奇襲はいとも簡単に行う事ができる。

どんな凄腕が周囲を警護しようが、真上を守る事などは想定できない。


影のように、キンドラ・ツィーグは飛び降りた。

何か起こったのだろうかと訝しげに正面を見ている、メリゼへと。


殺さない。だけど、負傷の有無にはそれほどこだわらない。

周りにいる有象無象の生死などは、輪をかけてどうでもいい。

ただ目的を果たすのみ。


ルクトが仲間2人を視認してから、まだ2分も経っていない。

それはまさしく、一匹の獣のごとき連携だった。


刹那。



眼下のメリゼが


こちらを


見た。


================================


ダガン!!


「ぐうっ!?」


あまりに唐突な衝撃に、ツィーグは思わずうめき声を上げた。

落下の軌道上に、いきなり出現した立方体の「何か」。

どうにか着地姿勢をとったものの、想定よりもはるかに早い接地により

容赦ない衝撃が足首に走った。己とメリゼの間に、石でできた立方体が

出現したのだ…と何とか理解する。


「…転移術か何かか!?」


深く考える暇はない。今の一瞬で、奇襲はほぼ露見してしまっている。

真下にいるメリゼを、直接捕らえるのはもう厳しい。


…なら、侍女の方だ!


謎の立方体を蹴り、その場で跳躍。右手にいた小柄な少女を狙う。

目を見開いたまま、少女は動こうとしなかった。

刹那。


ダガン!


「何!?」


飛びかかる軌道を完全に読み切った位置に、またも立方体が出現する。

やむを得ず上に着地した瞬間、何の前触れもなくそれは落下した。

踏み込むタイミングを完全に逸し、もう地面に降り立つしかなかった。


ドドォン!!


時間を置かず、出現していた立方体2個が地面に落ちる音が響いた。

真下にいたはずのメリゼは、それを予見したかのように避けている。

体勢を立て直した自分に、周囲の者全員の視線が向けられていた。


…何なんだ、こいつらは一体。

どうやってあたしの襲撃を防いだ?

いや、そもそもどうして襲撃自体を把握していたんだ?

そして、あの立方体は一体何だ!?


もはや、奇襲は破綻していた。


================================


「…何をグズグズしている?」


眼前のルクトの腹に刃を突き立てた姿勢のまま、フィーグが怪訝そうな

声を上げる。後方の一団に対しての奇襲が不発に終わったという事実は

遠目にもはっきり認識できていた。


「ニィーグ、援護に行って。」

「……」


ルクトの背後にいる妹にそう告げたものの、返答がない。

何だ、どうした?


「聞こえないの?ツィーグの…」

「いや、そりゃ無理だろ。」


あまりにも何気ないそんな言葉が、フィーグの耳に鋭く突き刺さる。

間違いなく、それは眼前のルクトの声だった。

一瞬だけ後方に向けていた視線を、ハッと正面に戻す。


しかし。

そこにあったはずのルクトの顔は、もうなかった。

代わりに目に飛び込んできたもの。



それは口から血を流している、妹のニィーグの苦悶の顔だった。


================================


ジュッ!!


「ぐぅっ!?」


いきなり手に熱と鋭い痛みが走り、握っていた柄を離す。その拍子に、

二番刀はズルリと傷口から抜けると地面に突き刺さった。それと同時に

傷口からあらためて鮮血が溢れる。ルクトではなくニィーグの傷から。


ルクトは、すぐ傍らに立っていた。

傷など、何も負ってはいなかった。


『心得違いも甚だしいですね。』


足元、つまり取り落とした刀からの声が、容赦なく耳に突き刺さる。


『ルクトさんやトッピナーさん以外の、それも卑しい暗殺者ごときが。

我が魔王の至宝たる二番刀を握り、そしてルクトさんを刺すなどと。』


淡々と告げるアミリアスの声には、明らかな怒りがこもっていた。


「な…何なんだよ…!」

「まだ分からないのかよ、お前。」


うんざりといった口調で、ルクトがフィーグに言い放つ。


「二番刀の柄を握った瞬間、お前はアミリアスの幻影魔術に囚われた。

で、妹を俺だと思い込んだんだよ。後は見てのとおりだ。」


ドサッ。


まるで、ルクトの説明が終わるのを待っていたかのように。

腹と口から鮮血を流すニィーグが、声もなくうつぶせに倒れ伏した。

かすかに痙攣していた体は、やがて永遠に動きを止める。


『急所を一撃ですね。お見事。』


称えるように、アミリアスが煽る。


「さすがだな、暗殺者。腕”だけ”は確からしい。」


ギイィン!!


刹那。

アミリアス同様に煽ったルクトに、フィーグの爪の一撃が炸裂した。

しかしその攻撃を、ルクトは篭手をかざす事で受け止めていた。

衝撃で表面が削れ、火花が散る。


「ラジュールさん。」


場に踏みとどまったルクトの声は、どこまでも落ち着いていた。


「向こうは皆さんにお任せします。大丈夫ですよね?」

「ああ、もちろんだ。」

「俺はこいつを仕留めますので。」

「分かった。」


短く答えたラジュールは、そのまま馬を反転させて駆け戻っていく。

振り返る事もなかった。


「てンめぇ…!!」

「文句でもあんのか?」


獣の目で睨み付けてくるフィーグに対し、ルクトは全く怯まず応える。


()()()()()()()()()()()()

「…!?」


ギリギリと力比べを続けながらも、フィーグは大きく目を見開いた。


「ならそのつもりで相手してやる。全力でかかってこい。」


張り詰めた空気が、周囲の草を鋭く揺らす。



ガラス球と化したニィーグの瞳に、2人の姿が丸く映り込んでいた。

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