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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第三章 メグラン王国騒乱記
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雑事は国境を越えてから

置き去りにしていた馬と荷物一式、転移貴術で一気に回収。

メリゼの術は対象の大きさや重さを問わないので、非常に役に立つ。

グルークさえ転移させられる彼女にとって、この程度の馬や荷物などは

問題にもならなかった。


面倒な相手に絡まれはしたものの、結果的に剣を抜かずに国境を通過。

メリゼとしても、この結果はかなり会心だろう。表情が物語っている。


「本当にありがとうございました、ルブホさん!!」

『お役に立てて何よりです。』


相棒アルフと共に、マルマ村に残留する事を決めたルブホ・マフケン。

彼はずっと、アルフに隠蔽の貴術を施し、男として振る舞わせていた。

旅の途中、体を洗う時などで裸体を見た事もある。完全な男だった。

術の精度はもちろん、羞恥を超えて男を貫いたアルフも驚嘆に値する。

しかし、やはり女性としてルブホの傍にいたいという思いは強かった。

ドラグリア殲滅戦の際に本来の姿に戻ったのは、良いきっかけだった。


そして別れの際、ルブホはその術をメリゼに施したのである。

どう見ても彼女とは結びつかない、どこまでもむさ苦しい男の姿に。

遠隔での術の行使は不可能なので、村から国境まではずっとその姿。

容姿に相応しい言動を覚えるたび、傍らでアルメダが半泣きになった。

いろいろな意味で、侍女である彼女にとっては拷問だっただろう。


「大事な事だから我慢してくれや。なあ嬢ちゃんよォ?」

「わかりましたからやめて下さい。お願いしますぅ…」


馬車の中での2人のやり取りには、ルクトたちも苦笑しかなかった。


結果を出せた今だからこその、愉快な笑い話である。


================================


「アミリアス殿によると、もうすぐそのブローチの魔力は枯渇する。」


通信を代わったプローノが、そんな忠告を口にした。


「このまま連絡ができなくなれば、関わる事もほぼなくなるだろう。」

『…でしょうね。』

「だから、くれぐれも私たちの事で無理をしようなどとは考えるなよ。

その村で冒険者として生きる事と、我々と関わる事とは全く別の話だ。

アルフともども、その点に関しては絶対に忘れるなよ。いいな?」

『『了解しました。』』

「よし。…今までの事、感謝する。どうか幸せになってくれ。」

『『はい!!』』


ブローチ越しにプローノに応える、ピッタリと重なった2つの声。

それは、どこまでも明るかった。


================================


「さてと、それじゃあ残りの問題を片付けないとね。」


そう言ったガンダルクの視線の先に横たわるのは、数人の人間たちだ。

先ほどのデヴァンスとのやり取りに巻き込まれ、なかば強引に転移術で

ここへ連れてきてしまった出国者。当然、ルクトたちに何の関係もない

完全な他人である。


そしてもう一人は、受付の女性だ。

宰相が正式に派遣した以上、彼女がデヴァンスの存在を知らなかった…

などという事はないだろう。しかしいくら何でも、こんな扱いを受ける

承諾をしていたとは考えられない。ある意味、最大の被害者だ。

あの場の顛末とデヴァンスの態度を考えれば、この人たちが事の後で

抹殺された可能性はきわめて高い。その意味でも、あの場に残すのは

決定的にまずかった。だから処置を施し、メリゼの転移の対象として

この場所まで連れて来たのである。背に腹は代えられなかった。


「とりあえず、みんな起こそうぜ。いいかアミリアス?」

『お任せください。』


鞘に収めたままの二番刀を、そっと彼らの額に当てていく。微かな光が

眉間へと走り、次の瞬間には全員が目を覚ましていた。


行列の中でプローノたち4人のすぐ後ろに並んでいた5人。服装などを

観察すれば判る、行商人の一団だ。武器を携える1人は、護衛だろう。

小規模集団だが、アルバニオ街道がまた通れるようになった知らせは

広まって間もない。この人数こそ、今はかなり妥当なのかも知れない。

こんな事に巻き込まれるなどとは、誰も考えないだろう。

案の定、皆の顔には困惑しかない。


そして、受付の女性。

彼女の場合は、少しリアクションが異なっていた。さすがに国境の地で

働いているだけあり、今この場所がモーグ側というのはすぐに察した。

何が何やら分からないまま、貴術で連れて来られた…という事実も。


「…説明してもらえます?」

「あ、ハイ。」


いかにも不機嫌そうなその言葉に、ルクトはいささか気後れしていた。


さて、一体どう説明すればいいか。そして、どう落とし前をつけるか。

メリゼと比べれば、立場的重要度は比較にならない。ただの一般人だ。

だからと言って、まともな説明さえ省くのは絶対に許されない話だ。


世界を変えたいと願うのであれば、目の前の人たちから目を背けるな。

旅を始めた時からの、ガンダルクとルクトの信条でもある。


だからこそ、今この場面においては目の前の女性ときっちり向き合う。

国境を無事に越えられたと言って、そういう部分を疎かにするな。


「ええっとですね。」


腹を括り、ルクトは説明を始める。


剣を振るうより、こういうのの方がよっぽど厄介だよなあ。

そんな彼の思いを察したか、傍らのガンダルクがフッと笑う。


新たな旅立ちの前の些細な、そして大切なひと仕事だった。

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