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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第三章 メグラン王国騒乱記
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そして国境へ

マルマ村でルブホ・アルフと別れ、一行はアルバニオ街道を西へ進む。


ここまで来れば、もうモーグ王国は目の前である。さすがに冒険者が

あたふたとジリヌスへ向かうような混乱もなく、国境近くに相応しい

独特の空気が感じられる。道を往く魔人の割合も、高くなっていた。


「もうすぐ国境ですね。えーと…」


先頭を進むラジュールが、荷物から地図を出して確認する。


「街の名はカラスカス。ちなみに、この名前はモーグ側らしいです。」

「え、じゃあこっち側は?」

「ありませんよ。」


ガンダルクの問いに、単身馬を駆るシャリアが答えた。


「この街道から至るモーグとの国境には、メグラン側に街と呼べる地は

作られてません。出入国を管理する検問塔があるだけなんです。」

「何か味気ないねえ。お隣の国との接点だってのに。」

「実情はともかく、あまりモーグと表立って仲良くはできないんです。

やはり、ジリヌスの存在はこの国にとって無視できない問題なので。」

「なるほどねー。」


ジリヌスの兵士だった彼が語ると、妙な説得力が生まれてくる。

いずれにせよ今の情勢を考えれば、そのあたりはますますキナ臭い。

とにかく、このままモーグ王国を、女王シャンテムのもとを目指す。


当座の目的がはっきりしている現実だけが、今の一行の拠り所だった。


================================


名目上、王女メリゼは体調を崩して静養している事になっている。

もちろん、王都から出てもいない。そんな事実はあってはならない。

しかし、あくまでもそれは名目だ。宰相ウルムスとその部下にとって、

メリゼの居場所が分からない現状は決して放置できないだろう。

とは言え、彼女の最後の目撃証言は「巨大なフライドラグンに馬車ごと

連れ去られた」というとんでもないものである。消息が不明どころか、

すでに食い殺されたと想定する方がよっぽど現実的だ。

ましてやその後、ドラグリア殲滅の戦いに参加したなどと、本人を知る

誰もが思いもしないだろう。実際、彼女を王女ではないのかと疑う者は

一人もいなかった。そんな現実に、メリゼは少しだけ落ち込んでいた。


しかし、ここからはそういう楽観は許されない。

どこに行ったかの見当がつかないとしても、メリゼが生きているのなら

国境を越えるはずだ…という仮定は誰にでもでき得る。ウルムスにも。

だとすれば、国境の検問には確実に彼の息のかかった者がいる。実際に

メリゼの顔を知らなくとも、確認をする方法などいくらでもある。


だからこそ、何としても彼女と共に国境を越える。

今の時点でもし捕まったりすれば、確実に彼女は偽者だと断定される。

真っ当な立場で随行している侍従がアルメダだけでは、どうにも弱い。

王都にも首都にも向かえない以上、もはやモーグ王国の女王と副王に

助力を請う以外に道はない。現状、メリゼが本物であるという発信を

宰相ウルムス以上に強く行えるのはその2人だけだから。


無茶だと言われようと、それを信じ進むしかなかった。


================================


「見えたな。」


ラジュールと並び先頭を進んでいたルクトが、前方を見据えて呟く。

さほど高くはないものの、遠目にも堅牢さが判る塔がそびえている。

国境の街・カラスカスとの境界線に建造された、検問塔だ。

さすがにここまで来ると、出入国の往来もかなり多くなっていた。


「この検問塔に来た事のある者は…いないな。」


皆を見回し、プローノが確認する。

生粋のジリヌスの兵士である4人に経験がないのはもちろん、ルクトも

ほとんどモーグ来訪の経験がない。長年に渡って世界各国を旅していた

ガンダルクでさえ、この街道からのモーグ入国は初めてだった。

祖国と就職先ジリヌスしか知らないトッピナーも同様。メリゼたちも

言うまでもないという感じである。


「とりあえず、近くまで行ってから探ろう。いいなアミリアス?」

『了解です。しかし…』

「何だよ?」

『好ましからざる状況だとしても、今回ばかりは突破するしかない。

その点は覚悟しておいて下さい。』

「そりゃそうだ。」

「うん。」

「承知の上だ。」

「了解です。」


アミリアスの指摘は容赦なく、また限りなく正鵠だった。


どのみち、モーグへは向かうのだ。もしこの検問が駄目だったとして、

他へ向かうには時間がかかる。その時間だけ、状況は悪くなるだろう。

仮にウルムスが国境全てを監視しているなら、もう考えるだけ無駄だ。


「よーし、やったろうじゃん。」


どこか嬉しそうな口調で言い放ち、トッピナーがぐるんと腕を回す。

西へ向かうほどモーグからの輸入の酒が増え、安く購入できている今。

彼女のテンションは実に高かった。


「にゃははは。いいねそういうの!どうせなら楽しく挑もうってね!」


ガンダルクもまた、塔を見上げつつ愉快そうに笑う。


荒事は覚悟の上。

その事実を、誰もが当然の事として受け止めている。

もちろん、当人であるメリゼも。


検問塔を目指す馬たちの足並みに、乱れなどは一切なかった。

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