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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第三章 メグラン王国騒乱記
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ルブホとアルフの秘密

時は、少しだけさかのぼる。


「お疲れさま。大丈夫だった?」

「ええ、ご心配なく。」


トッピナーの問いかけに、メリゼはさも当然といった態で即答した。

死屍累々のドラグリアの運び出しは事実上不可能なため、殲滅した事の

証明がかなり面倒になる。そこで、全ての骸にメリゼが触れ、帰還後に

転移術を使って呼び寄せようという話がまとまったのである。


しかし、言うはやすし行うは難し。無残な屍は、見るだけで心を削る。

加えて言うなら、この作業は分担ができない。他の者が何人いようと、

結局はメリゼ本人が全てやらないと終わらない苦行だ。

さすがにガンダルクもプローノも、そこまで任せるのは躊躇した。

しかし当のメリゼが「やります」と言ってあっさり快諾したのである。

半泣きのアルメダに手伝いをさせ、グルークが喰らった以外の全個体に

迷いなく転移術の印を施した。


何度も失禁していた頃の彼女など、もはや面影も残っていなかった。


================================


このまま国境を目指しはしない。

何のためにこんな厄介な仕事を皆で請け負ったか。忘れてはいけない。

目的はあくまでも、冒険者としてのフリーライセンスの取得である。


「んじゃ村に戻ろう。今からなら、明るい内に辿り着けるだろうし。」

「そうしましょう!」


答えると同時に魔法陣が展開する。言うまでもなく残りの馬と馬車だ。

底なしの転移術の大盤振る舞いに、いささか皆は呆れていた。

とは言え、馬の所まで戻らなくてもいいのは大助かりだ。これならば、

確かに今日中にマルマ村に戻れる。

手早く分乗した皆はそのまま出発。なおも屍が残る岩場を後にした。


激戦の後は、決まって静かだ。

どんな戦いの場においても、それは不変の真理だった。


================================


アルフ・メリゼ・アルメダの3人が駆けた道をそのまま辿って、一気に

街道を目指す。さすがに最低限度の警戒はしているものの、あくまでも

念のためだ。アミリアスが定期的に感知をしているが、もうほとんどの

ドラグリアは倒せているらしい。

臨戦態勢とは程遠い空気の中、皆はマルマ村を目指していた。


「…痛むか?」

「ううん、それほどじゃないよ。」


負傷を気遣うルブホに、手当てした足を軽く叩いてアルフが答える。

何度か繰り返されているその様は、どこまでも自然だった。

うっかりすると、それが普通だ…と納得してしまいそうなほどに。

しかし、そうじゃない。

出発時点とは決定的に違う、大きな違和感がそこにはある。とは言え、

いざ口に出すとなると、なかなかに踏ん切りがつかないのも事実だ。


こんな時、遠慮という概念と無縁な者がここにいる。


『それはそうと、ルブホさん。』


そう言ったのはアミリアスだった。


「はい?」

『アルフさんに施していた隠蔽術、解かなくていいんですか?』

「えっ」

「そうそう。」


隣を歩くガンダルクが相槌を打つ。


「術で女性の容姿にしたんでしょ?あの群れに侮らせるために。なら、

もう終わったんだからいいじゃん。どうして解かないの?」

「あの、それは…」

「えと…」


しどろもどろになったのはアルフも同じだった。大柄な割にその仕種は

どこまでも女性らしく、演技だとはとても思えないのである。

ここに至っては、もはや場の全員が何となく察していた。


『…あなたの隠蔽術の精度は確かに大したものです。このあたしですら

見破るのは不可能だった。ですが、馬を駆けさせた先ほどの感覚共有で

はっきり判りました。ああこの人、貴術の影響を受けていないなと。』

「……つまり?」


促すように、ルクトが問いかける。


『つまり出撃前に施していたのは、隠蔽術ではなかった。むしろ、術の

解除措置だったというわけです。』

「えっ!!」


やや察しの悪いアルメダが、そこで驚きの声を上げた。


「じゃ、じゃあアルフさんって…」

『今のその姿が本来の姿。つまりは女性だったって事ですね。』

「えええぇぇぇぇぇぇ!?」


あくまでも察しの悪いアルメダが、甲高い声を張り上げた。

あまりにも分かりやすいその様に、目が泳いでいたルブホとアルフも

苦笑に似た表情を浮かべる。


つまりは、そういう事だった。

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