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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第三章 メグラン王国騒乱記
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ドラグリア殲滅戦・2

宿屋の末娘セルニルは、ほんの少し釈然としない気持ちだった。


いいお客だったのは間違いない。

行商人なら、たとえ馴染みの客でもそんなに長く宿泊しないのが常だ。

それに対して、あの11人は4泊もしてくれた。正直かなり助かった。

しかし出立の際、また言われた。


「悪いけど、明日まではあの部屋は入らずに空けておいてね。」

「え、またお戻りですか?」


思わず聞いてしまった。

するとあの水色の髪の女性は、少し苦笑しながら答えた。


「うーん…そこはまだ未定だけど、とにかく今日中だけお願いできる?

明日になったらもう、掃除するなり次に貸すなりしていいからさ。」

「…分かりました。」


別に本人にそんなつもりはなかっただろうけど、どうせ明日もお客は

来ないだろうと言われた気がした。…正直、ちょっと悔しくもあった。

それでも、ゆっくり滞在してくれた上客だ。無下にはできない。


「ごめんね無理言って。」

「いえ。ではお気をつけて。」


頭を切り替え、笑顔で見送った。

そうすべきだと思ったから。


だけど、何でなんだろうなホント。


================================

================================


「じゃあこれを。」


ルクトとガンダルクが、それぞれの持つブローチをメリゼとアルメダに

手渡す。いずれも、アミリアスから渡されていた通信用の魔具だった。


『聞こえますか?』

「あっ、はい!」

「聞こえます!」


肩に着けたブローチからアミリアスの声が飛び出し、2人は驚きの声を

同時に上げた。


『お二人には内在魔力がないので、ブローチに込めた魔力を使います。

ですが少なくとも、丸一日くらいは通信を維持できるはずですので。』

「了解です。」

「それで十分…ですよね?」

「もちろん。」


いささか不安そうなアルメダからの問いに、ルクトが笑って答える。


「ってか、そんな長い時間をかけてやる事じゃないでしょうから。」

「そうそう、短期決戦でね!」


相変わらず気楽な口調で言い添え、ガンダルクもニッと笑った。


================================


「よし、じゃ隠蔽術を…かける。」


そう言ったルブホが、目の前に立つアルフに向けて右手をかざした。

袖をまくった左腕に触れると共に、その大柄な姿が音もなく変化する。

背丈は変わらない。しかし見た目は完全に女性のそれになっていった。


「おおーお…」

「これはまた…」

「凄いな。」


おそらく、今まで一度も見る機会がなかったのだろう。プローノ以外の

3人が、貴術によって女性の容姿になったアルフに驚きの声を上げる。

むろんルクトやトッピナーたちも、少なからず驚嘆していた。

見上げるような体躯も、少し女性的なバランスに変化したのが判る。

顔立ちに至っては、完全に別人だ。上品でありながら、その背丈にも

嘘のようにちゃんと馴染んでいる。何と言うか、とにかく自然だった。


「お前にこんな技量があったなんて知らなかったぜ。ホント驚いた。」

「いや…まあな。」


目を丸くしたイバンサが、ルブホにそんな賛辞を送る。しかし当人は

困ったように苦笑するだけだった。


「前にもやった事あるとか?」

「い、いやあ…あはは。」


ガンダルクの問いに対し、アルフは頭に手を当てて笑った。その声も、

完全に女性のそれに変わっている。しかも、控えめに言っても美声。

どうにもそのギャップが大変な事になっていた。


「とにかく、それなら十分だな。」


プローノがあらためてそう告げる。


「アルフ。」

「はい。」

「今さら言うまでもないが、お前の役割は重大だ。だが無理はするな。

優先すべきは生きる事だ。その事を常に心がけろ。いいな?」

「はい!」


姿勢を正すと、アルフはさらに背が高くなる。

見慣れないその女性顔は、それでもキッと引き締まっていた。


================================


「それでは行きましょう。」

「はい。」

「お願いします。」


2頭の馬に分乗したのは、アルフとメリゼ、そしてアルメダの3人。

ちなみにアルフも、トッピナーからブローチを借りて着けていた。

まずこのメンバーで、ドラグリアがいると思しきナサドの谷に向かう。

客観的に見れば、無謀そのものだ。女性3人でわざわざひと気のない、

それも危険な場所に向かうなどと。

しかしこれは、全員で熟考した末の案である。もちろん、本人たちも

役割を理解し、納得した上で先遣の任務を受け持っている。


ドラグリアは、とにかく用心深い。

たとえ目立った重武装が無くても、ルクトたちが赴けば恐らく逃げる。

そうなれば、ズルズル長期戦になるのは確実だ。それだけは避けたい。

だからこそ、3人に任せる。


侮ってくれさえすれば、チャンスはきっと作り出せる。

もちろん危険は大きい。それでも、ここはプローノが認めた兵士である

アルフを信じる。


信じてこそ、できる事がある。



3人の背中を見送るルクトたちは、あらためて身を引き締めていた。

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