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星辰病  作者: Failed supernova
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第五証 平和な解答 後編


1.精神病

違う……もっと自然的な力に即している影響が真実に隠されている気がする。プラシーボ効果で緩和される症状なら意思の強い人が生き残っている筈だ。生にしがみつこうとしなかった僕が生き残っているのがその反証だ。

























2.自律神経作用

星辰ウイルスの原因が脳の中枢を迂回する反射作用だとしたら、可能性はある。だけど内蔵や血管への運動を命令し、遂行するのが自律神経作用だ。……だけど、その作用だけで身体の消滅までを行えるか……?少し惜しい気がする。もう一度考えよう。




















3.進化過程

地球と人間の進化のハナシなら、もうとっくに打つ手はないな。これは違う。

















4.錯覚

能天気だな。僕は。この期に及んで実は勘違いでした、なんて宣おうものならゴキブリをツノを取ったカブトムシだって言うようなものだろ。違う?…………違うね。

















5.自己暗示

何度も考えた。星辰病自体がウイルス性のものではなく、何かしらの催眠術式によって根深く念じこまれた前頭葉が2ヶ月後無意識に信号を感知して消滅していくような、ある種電流回路のスイッチ的役割をしているんじゃないかって。よくある宗教の信仰の類。終末思想の論者達が長年温めた人類滅亡作戦。馬鹿馬鹿しさ100億点の考えだ。

ただ暗示にしては感染者が多すぎる。人が人に感染させていくにしてもこんなに精巧かつ誰にも解読不可能な病気を作り出すならいっそ2ヶ月なんてインターバルを置く必要が無い。一般的に催眠は当事者に神経伝達物質の働きだけ求めるから(あくまで1ミリたりとも信じていない僕の考えだが)身体中に起こる消滅に関与しているとは思いがたいって言うのが正直なところ。
















6.自壊衝動

近いな。身体の一部から壊れていく意味では合っている。

抗生物質が効かない点もアポトーシス、自壊作用が効いてるとすれば確実だ。

ほぼ正解に近いと思う。

大事なのはそれが何によって引き起こされているか、だ。もう答えは一つしかない。


















7.自然治癒力


ーーーそう。


人間の基本的代謝が織り成す、自然治癒力だ。


1.感染した前頭連合野が夢で警告をし、身体の状態が正常かどうかを答えるよう催促する。夢の問いかけは遠回しではあったが、身体機能の充足と安否を聞き出そうとしていたんだ。


2.しかし声が出せない。夢でさえも声が出せない。その認識を得た自律神経系は不安定状態に陥る。異常を感知したとある機能が効果を発揮する。それこそ僕らが進化の道筋で勝ち得た生存能力ーーーーー自己再生機能。


声が出なくなるのが、思った通りトリガーなんだ。


コールドスリープで身体が凍結されたとしても、脳が機能を停止しようとしても、身体を守ろうとする細胞の動きは止められない。生きようとする意思は止まらない。異変を察知した細胞が変異を開始するから……


人は寝ている間に体の保持と成長を行う。免疫・受容細胞は身体全体が異常と判断し神経回路さえも再構築しようと細胞が少しずつ入れ替わる。その特性を利用し星辰病は細胞自体に自壊命令を与え病変を引き起こす。アナフィラキシーを利用した擬似サイトカインストームに近い。


エンドルフィンの分泌が止められない以上、薬品が無効化されるのは当然と言える、いいや無効化じゃない。ハナから無効能であるが故に投薬自体が無意味なんだ。


簡単に言えば、怪我を修復しようとする活動を反転させ、崩壊に転じさせる機能をプログインするのが『星辰病』星辰病のーーー『夢』だ!!!


つまるところ、答えはこうだ。


「2ヶ月後、何度か夢を見る。その段階で声を失い、異常を感知した身体が自然治癒ーーー否、自然消滅を開始する。免疫を阻害しても回復能力は止められない。回復を破壊に転じさせる星辰病は、人が生きている限り確実に身体を消滅へと導くプログラム。これが、これこそが救いの無い病を打破すべき答えだ!!!!!!」


泡が破裂すると同時に海が割れ、眩しい太陽が僕を照らす。


この答えは、手応えがあった。


ようやく……天を冠する名を拝命した、人知の及ばぬ難病に対する光明が見えた。歓喜に打ち震える。瞳を開け、再び埃の部屋へ帰ってきた。ふぅ、と大きく息を吐いて、確かな実感を持ってガッツポーズを取ってしまう。


「やったぞ……!この仮説があれば、星辰病に対する希望が生まれる。希望が産まれたら、ハッピーエンドが……僕らの生きた意味がようやく明日に繋がるよ、朝日……!」


そう、全てがうまくいっていると錯覚して舞い上がっていた僕は……


ごん。


後ろから振り下ろされた一撃に気付く間もなかった。





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