お前の足だから蹴りたい。★
「へー、面白いっすね。オレも交ざっていいっすか?」
そう言って、岸本は魔矢に軽くローキックする。
岸本は魔矢狙いなのか――。
しかも、元ヤンを躊躇いなく蹴るとは、コイツ、元ヤンが恐ろしくねーのか?
コイツも元同類だから――?
いやその前に、躊躇いなく女子を蹴れるとは、コレが岸本の本性なのか?
俺がいくつもの疑問を持ちながら事態を見守っていると、岸本の蹴りが少し強かったらしく、魔矢は顔をしかめた。
そして、意外にも魔矢の表情に岸本への怯えの色があるのを俺は気づいた。
俺は魔矢の怯えの表情を見て、おや、と思った。
――気のせいか?
もちろん魔矢は岸本を蹴り返すのだろう。
俺はその未来を想像し、――(何故か)少しガッカリした。
しかし、魔矢がローキックしたのは俺だった。
岸本がポカンとしている。
もちろん俺も驚いているし、また蹴られたトコロが気持ち良いし、そしてガッカリが感動(?)に変わっていった。
岸本は首を傾げながら、また魔矢にローキックした。
すると、魔矢はまた俺をローキックする。
俺の目を見て楽しげにニヤリと微笑みながら。
俺は密かに謎の優越感を味わいながら、胸が意味不明のドキドキ感に襲われていた。
俺が魔矢を蹴ったら俺を蹴り返す。
岸本が魔矢を蹴っても俺を蹴り返す……?
どういうシステム?
「なんなんすか。もう」
それだけをポツリと言って岸本は3人の元に戻っていく。
「な、なんで?」
困惑した俺は魔矢にそう尋ねるのだけが精一杯だった。
彼女は照れ臭そうにこう言った。
「アイツなんかヤバそうだし」
おおう。
岸本の本性を見抜くとは、さすが百戦錬磨。
「それに一升の足だから蹴りたいんだし?」
「――えっ?」
ズキューン。(俺の心臓が撃ち抜かれた音)
「な、なんだよ俺だから蹴りたいって」
「一升の足がアタシに蹴られて喜んでるようだぞ。ホレホレ、身体は正直だナ」
魔矢のローキックは弱い力でも効く。
「い、いた、いたっ、痛いって!」
「ははっ。どうだ、オメーの足は喜んでるって言ってるだろっ?」
俺は魔矢に、しこたまローキックを喰らった。
正直、痛さと気持ち良さで、頭が酔った様にクラクラした。
下に血液が集まる。
「あっ、一升何アタシに蹴られて股間を厚くしてんだ? この変態ヤローっ♡」
「あ、やめっ、コレは違っ」
俺の股間が盛り上がり、厚みを増しているのは彼女にはバレバレだったらしい。
確かに厚くさせてるし、熱くもなっているけども!
そんな感じで俺ら二人が子猫の様にじゃれ合っていると、鈴木が指を鳴らしてこちらへ合図する。
どうやらクラブに入る順番が回ってきたらしい。
魔矢が残りの二人、ユラちゃんセイナさんと先に入場口に向かう。
俺も女子3人組に続いて入場しようとしたところ、鈴木に止められた。
「な、何?」
「山さん、作戦会議しましょう」
合コン途中の作戦会議は良くある話だ。
お互いの狙いを最終確認ということか――?
「岸やん、山さん、すんません。オレ調べで、ユラとセイナは隠れ彼氏持ちということが分かりました。オレのミスです。どうします?」
「え、そうなのか。でも鈴木、お前彼氏持ちでも平気なんだろう?」
「いや。ユラがオレの友人グループ最大派閥の女ボスなんで不味いです。オレは自分のコミュニティ大事にしてるんで、今回はもう無いですね」
「……という事は?」
何か嫌な予感がする……。
「残されたのは、山さんが仲良く喋っていたマヤちゃんだけということです」
そ、そういう事になるのか。
「ここは3人で、正々堂々マヤちゃんを取り合いましょう。マヤちゃんカップ開催というわけです」
ま、魔矢杯開催……。
「いいっすね。こうなったら飲ませまくって酔い潰しちゃうっすか。3人でお持ち帰りしてもいいっすね」
あ、岸本のヤロー、クズ野郎の本性を隠さなくなってきていやがる。
魔矢にさっきプライドを傷付けられた仕返しをしようというのか。
「どうします? 山さん、ここで手を引きますか。オレ、負けない自信ありますよ」
「オレも負けないっす」
何だ何だ、この流れは。
俺はヤンキーが苦手で、近づくのも嫌なんだよ!
丁度良かったじゃねーか。
このまま帰ってやるよ。
――しかし、俺帰る宣言をしようとしたその時。
『――それに一升の足だから蹴りたいんだし?』
『―――れに一升の足だから蹴りたいんだし?』
『―――――一升の足だから蹴りたいんだし?』
(エコー効果)
ほぼ99%帰る方向に傾きかけていた俺だったが、元ヤンのあのセリフと元ヤンのニヤリ微笑む姿が脳裏を過った。
そして、元ヤンのローキックを喰らった足が甘美な痺れで何かを訴えている。
俺は――――決心した。
「――俺だって自信あるよ。俺が魔矢さんを落として見せるっ!」
俺は魔矢を落とす自信などこれっぽっちも無いが、俺がこのクズ野郎共から魔矢を守ってみせる!
「おっ、童貞の山さんにあの女は落とせないと思いますけどね。何気にあの3人の中で一番いい女だし。ていうか、オレが山さんに負ける理由が無い」
「……絶対、酔わせて持ち帰ってヤッてやる(ブツブツ)」
一升の一生で絶対に負けたくない戦いが今、幕を開ける――。
END
最後までお読みくださりありがとうございます。
もしよければご指摘、ご感想など頂けますと成長に繋がりますw
――――……
というわけで、黒猫虎の神シチュは「暴君・猛獣的な、お美しいおみ足の女性が何故か自分だけ蹴ってくる」というシチュでした。
どうなんでしょ、これ(笑)
【黒猫虎が最高だと思う恋愛(=萌え恋)】
男側(もしくは女側)の長年の恋愛に対する妄想・妄執・恋愛観念をぶち壊すような強烈な女性(もしくは男性)との恋愛。
【黒猫虎の最高だと思う恋愛シチュエーション(=神シチュ)】
暴君・猛獣的な、お美しいおみ足の女性が何故か自分だけ蹴ってくる。
――――……
★FAいただきましたっ
猫屋敷たまるさんからマヤさんいただきましたっ
猫屋敷たまるさん、めっちゃありがとうございます!
\(^o^)/
・猫屋敷たまるさんのマイページ
https://mypage.syosetu.com/1751619/
★再びFAいただきましたっ
八割れネコさんから「マヤさんに蹴られる黒猫虎」の絵をいただきましたっ
八割れネコさん、めっちゃありがとうございます!
(///∇///)
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https://mypage.syosetu.com/1811075/
★またまたFAいただきましたっ
サカキショーゴさんから「マヤさんから激しいローキックをもらう黒猫虎」の絵をいただきましたっ
サカキショーゴさん、めっちゃありがとうございます!
(о´∀`о)
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