元ヤン☆ローキック。
二次会は近くの踊れる場所に行くことになった。
先頭を鈴木とユラちゃん、次を岸本とセイナさん、最後を俺と魔矢と別れて徒歩で向かう。
「そういや、他の二人とはどういう関係? 同じ会社だっけ」
「そだよ」
「どんな二人なの?」
「まあまあ、いいヤツらだよ。面白いし」
この話を読んでいる女子がいるなら、合コンでの男の友達評を信じないで欲しい。
絶対にネタにする以外の欠点は伝えないから。
それが男同士の合コン紳士協定。
「そっちは?」
「同中繋がり。地元が一緒なんだ」
「へぇ。あの二人も元ヤンなの?」
魔矢の目付きが険しくなった。
すぐに、胸ぐらを(略)。
「おいこら。『も』って何だ『も』って。という事はお前はアタシが元ヤンだって思ってんのか?」
「ち、違うんですか?」
息が苦しい。
「違うに決まってんだろ! こんなか弱いアタシをつかまえて元ヤンだなんて。アタシはどう見てもフツ女だろっ」
「で、でもジャージだし」
「ば、バカ言え。き、今日はついでにジムに行ってきたんだよ。それに、これはお高いシャレオツなジャージなんだよっ」
言い訳が苦しい。
「わ、分かったって。違うって分かったから、この手、少し緩めて……」
あー、死ぬかと思ったぜ。
お花畑で死んだ父親が手招きしてるのが見えたよ。
今はクラブにもう着いて、入り口近くで黒服のお兄さんに案内される順番を待っているトコロだ。
「で、魔矢はジムでどんなトレーニングしてるの」
魔矢は一応、本当にジムに通っているらしい。
「色々やってる。面白いのはヨガとかキックボクシングかな」
「キックボクシング……」
オサレ黒ジャージを着ている事で、魔矢のスタイルがメチャクチャ良い事は、ここまでの道程でチラ見で把握していた。
――童貞だけに道程で。
俺は魔矢の長くてスタイルの良い美脚からキック技が繰り出されるのを妄想してしまった。
うーん、それはアリ寄りのアリかもしれない。
「あ、そうだ。一升、アタシのココを蹴ってみて」
「え?」
「軽くな」
魔矢は俺にローキックの指示を出してきた。
不思議に思いながらも、俺は指示に従うしかなかった。
「こ、こうか?」
パスン、と彼女のふくらはぎ辺りに俺の軽い蹴りを当ててみる。
すると、
「お返しっ、えやっ」
魔矢は意外と可愛らしい掛け声と共に、俺に向かってローキックを放った。
パシィッ。
その時、彼女のローキックが当たった辺りから、何とも言えないビリビリっという快感が脳天目掛けて駆け上がってくるのを感じた。
しなやかなおみ足がまるでムチの様にしなり、柔らかく甘く巻き付くような蹴り。
打たれたところが甘く痺れ、全身にムズムズが広がっていく。
俺はその気持ち良さに驚いた。
「へへ。中々だろ?」
俺がその気持ち良さに驚き過ぎて返事を返せないでいると、岸本のヤツが近寄ってきた。
「へー、何してるんすか」
「お。岸本っち。一升にキックボクシング教えてるんだよ。ほら、一升。もう一回、ココ蹴ってみ」
魔矢に促されるまま、もう一回軽く蹴ってみる。
パスン。
すると俺のご期待通り、魔矢のローキックが俺に炸裂する。
パシィッ!
また、あのビリビリっとした気持ちよさが俺の身体を、股間を、背骨を駆け登ってきて、脳ミソに甘美な痺れを伝えてくる。
――何コレ、超気持ち良い。お金払ってもいいくらい……。
元ヤン美女のしなやかな長いおみ足から繰り出されるローキックは、俺の足に少しの痛みを与えつつ、俺のM男の部分を目覚めさせてしまえる効果があるというのだろうか。
いやいや、俺の夢は、俺がS彼で彼女になる人をMに育てていく事で――。
「へー、面白いっすね。オレも交ざっていいっすか?」