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魔女恋  作者: 葛葉
6/14

05.現在03

お読みいただきありがとうございます。

本日3話目の更新です。

 


「魔女殿!危ない!!」



 バッシャーーーンッ!!



 そして現在2人で濡れ鼠となり、岩肌の洞窟とまでは呼べない、少し深い窪みで夜を明かしている。



 どうしてこうなった…




 ✳︎✳︎✳︎




 森の外まで送ることになり、2人共準備を終えたのは昼の少し前だった。早めの昼食をとり、もしもの時のために夕食分も携帯食の準備をして庵を出た。

 彼らの使う安全な道というのは私は知らない。

 だが私がいれば無事に森を抜けられる……はずだった。



 目論見が外れたとわかったのは出発してわずか30分程度。数歩後ろを歩いていたはずのアレクが、ガサササッという音と共に声なき叫び声を上げて消えた。


「アレク!?」


 見渡すと蔦に片足を絡め取られ、頭上高く宙吊りにされている彼がいた。植物系の魔物だ。

 私も言葉をなくして驚愕していると、次々と蔦が伸びてきて彼の身体に巻きつこうとしていった。


 しかしアレクはさすが記憶をなくしても身体能力が高く、胆力がある。自分の足に絡まる蔦を剣で薙ぎ払うと、難なく地面に着地した。それでも襲いかかる何本もの蔦。我に返り彼の元に駆け寄る。


「魔女殿!下がって!」


 私を危ないから下がらせようとする彼に逆らい、強引に抱き着く。

 彼は一瞬迷ったようだが、覚悟を決め、私を抱き込みながら剣を構えた。


 が、蔦はその後迷うそぶりでウネウネしていたが、名残惜しそうに引いていった。


 戸惑うアレク。

 そうだ、記憶がなくなっていたのだ、と前任者から説明されていたはずのことを改めて伝えた。



 森は魔物も、獣も、自然の地形も厳しい。

 距離的には女の足で4時間程で歩ける距離だが、まず初見で無事には踏破できない。

 できたのは冒険者的なかなりの実力者が運良く、それも数十年に1人程度のものだ。

 お薬係の彼らは一子相伝…ではないが、口伝で次の者にルートを伝えるのだ。


 だが私はと言うと、地形に関しては何ともし難いが、その他のトラブルに関してはどんなところを歩こうがフリーパスである。

 力を持っていた祖先が他者の入りにくい森に居を構え、自分の血の中にこの森の獣や魔物を忌避する術を仕込んだ。なのでその子孫、代々の魔女は害されることなくこの森に住み着いている。

 外界とほぼ没交渉であることは、人間との間にも余計なトラブルを起こさせない。



 森の外まで送るという申し出は、彼らの使う安全な道を通るという意味ではなく、私と共に歩けば安全だという意味であるということを説明した。


 流石に数歩しか離れていない距離で魔物に襲われるとは思っていなかったために危険に晒してしまったが、もっと距離を詰めて歩けば問題ないだろうと伝える。



 そこからは2人でもっと距離を詰めて歩を進めた…が、今度はアレクの金色の頭だけ魔カラスの大群に襲われた。


「アレク!!」


 急いで彼の頭に覆い被さり魔カラスを追い払う。



 次は何かあればすぐに引き寄せられるように手を繋いで歩いた…が、今度はアレクだけ巨大ヒルに襲われた。


「アレク!!!」


 急いで身体を引き寄せヒルが逃げて行くのを待つ。無理に引き剥がすと肉が抉れて厄介なのだ。



 そうするともう、彼に密着して腰に手を回して歩くしかない。

 街の中であれば「ラブラブカップルね〜」で済むが、獣道さえない森の中。普段は2時間程で通り過ぎる場所に着いた時にはもう日が暮れかけていた。



 そこは川から少し水を引き、飲み水に利用したりできるようにした場所である。

 巨大な岩があり、その腹には抉れた洞があり、少しの雨風ならば凌げる。

 ほとんどないが、街への往き帰りに休憩に使ったりもする。仕方なく今夜はここで野宿をすることとして、今にも沈みきってしまいそうな太陽の残り火に縋って慌てて準備をした。

 だから焦っていて少し油断をした。

 たかだか数歩の距離を離れただけ…が、大蛇の群れが彼に飛びかかる状況を作り出していた。


「アレク!!!!」


 1匹2匹、3匹目までを後ろに下がりながら反射的に斬り捨てていた彼に抱き着いた。

 私が彼と蛇との間に入れば、蛇は私を襲わないから…という算段だった。

 実際に蛇は戦意は喪失していただろうと思う。しかし地面からすでに飛んでいた蛇を見た彼は、私を抱き抱えて後ろに飛びすさった。

 そして背後には昨夜の嵐で水嵩を増した深い川があり、私達は見事に飛び込むことになった。


 もう何を幸いと言っていいかわからないが、水中では抱きついていたため、肉食魚は襲いかかって来ずに周囲を泳ぐだけだった。



 無言で岸に上がったのち、彼は絞り出すように言った。


「申し訳ない…」


 アレクが悪いわけではない。…が、アレクのせいではある。

 私も虚ろな目で答える。


「いえ…」


 今度は2人でピッタリとくっつきながら火起こしを始めた。



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