エピローグ とある未来
これで完結です。
「あー……」
今日は3年くらいぶりに魔女の庵に来ている。
あれから結婚したり、出産したり大変だったのはそうだが、一番の理由はアレクが許してくれなかったからだ。
魔女であるディアーヌは無事産まれ、今は2人目が私のお腹の中にいる。ここに至ってやっと逃走されるかも疑惑が薄まったらしい。
それでもここに来るのにアレクも付いて来た。
正直、ディアーヌと私だけの方が楽な道程じゃないかと思ったのだが、ちゃんと獣除けなどのお呪いグッズを付けてディアーヌを抱いたアレクは全然何にも襲われなかった。
3年ぶりの庵は劣化防止の呪いがかかっているにしても、思ったよりも荒れていなかった。ディアーヌを連れて家の中に入ると、やはり薄汚れているが落ち着く。
「懐かしい?」
外周りを確かめていたアレクも中に入ってきた。
「うん。ね、もしかしてアレクが手入れしに来てくれていたの?」
「大したことはしてないけどね。」
それでも最初気にしていた食料庫の腐海化や風雨の吹き込みとかはなかった。
今日の目的は大事にしていたものとか貴重品を持ち帰ること。すぐに帰る予定だったが、思ったよりも順調に着いたので少し片付けもしようかということになった。ついでに晴れているので先程はしゃいで泥まみれになったディアーヌの服も洗ってしまうことにする。
タライと洗濯板と洗剤は一番最後に使った物なのですぐにある。アレクになんともいえない気持ちで渡すと、彼はニヤっと笑ってそのタライを頭の上に掲げて見せた。
「晴れたな!よかった。洗濯してもすぐ乾きそうだ。」
そう言って後ろ向きに歩いて出て行こうとしていると、
「とうさま!」
いつのまにかディアーヌが忍び寄っていて、膝裏に抱きついた。
そこからはスローモーションだった。
足元を確認したアレクはディアーヌを潰さないように避けながらバランスを崩して………………転んだ。
ゴン!!と大きな音を立ててタライが頭に落ちる。
「キャーーーっっ!! アレクっ!!?」
彼の元に駆け寄り洗濯用のタライを頭からどかす。今回も、運の悪いことにタライの中には大きくてゴツい洗濯板と、大瓶にたっぷり入った洗濯用洗剤が入っていた。どちらも中々の重量だ。
アレクは大きなタンコブを頭に作って、そして……意識を失っていた。
さて、ここに自分のせいだとなんとなくわかったのか激しくなくディアーヌと、あんまり心配しきれない私がいる。
アレクが目覚めたら、さぁなんと声をかけようか?
「はじめまして」なんて言ってみたら、案外面白い物語が始まるかもしれない……が、やめておこう。
せっかく軟禁生活が解けたのに、監禁生活in地下牢とかレベルの高い物語は望んでいないから。
な、なんとか今月中に終わることができました!
お読み下さった全ての方に感謝です。